101話 動き出したヘキサグラムの状況⑧交渉
新年、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。
物語の方は・・・ザイオンでワイツ家の面々と、拓斗達が交渉の席に着いた所から話しは再開致します。
交渉団の名目上の代表は拓斗だが、ワイツ家からも名目上の代表はラーハルトだ。
当然の如く長机の中央上座に陣取り、左右にランデルとバインド、その他が座っている・・・数人のお歴々は何やら難しい顔をした者、或いは好意的に拓斗達を見ているが、一様に話しを切り出す事を躊躇している模様だ。
方やステラ側は代表している拓斗は誰が見ても子供、控え目に見ても成人前後の者達が数人反対側の席に着き、唯一の大人がロボスとギンガだった。その内の一人は口をへの字に曲げて、俺は一切話さないと硬く結んでいた。
互いの挨拶が終了して名前や役職などを紹介し合った後、やや飄々とした物言いで「それでは早速始めましょう」宣言する様にロボスは口火を切り、次のように話し始める「同盟をするにあたって詳細な項目を話し・・・」途中で遮る様に「あいや待たれよ!」ランデルが失礼を承知で交渉相手の言葉を遮った。
ランデルが大声で「未だ同盟を組むとは決まっておらぬ、先走って貰っては困る」ロボスは正面のラーハルトとバインドの様子を見て「それは異な事を仰いますね、此方は同盟を前提とした締結にあたっての細かい条件などの擦り合わせ協議、その様な考えで此処へ臨んで居りますが、どうやらワイツ家の方は異論が有るご様子、此は如何したものでしょうか?」
だがしかし、誰も率先して答えない、いや、其許りかランデルは「我らがステラのディオン家と結んで、一体何の益があるのじゃ、とくと聞かせて貰いたいものじゃな」この質問に他の者達は、同意する者と中立を保とうとする者、好意的にロボス達へと視線を送る者達に別れて、四分五裂状態だと伺われた。
ロボスは前夜の会議内容を拓斗達から聞いていたお陰で、動揺を見為ずに済んだ。
そんな状況を楽しむかの様に涼しげな雰囲気を醸し出し「それでは皆さんは、如何お考えなのでしょうか?同盟を結ぶ前提で此方に伺いましたが、先ず其処からなら今回の事変、いや此はもう運命を賭けた戦争と言っても過言では無いですが、その勝敗の帰趨は何方に転ぶとお考えなのですかな?その上で何方に付くのか、或いは中立を保つのか、その辺りを是非お答え下さい」
苦虫を十個ほど噛み潰した様な感じで忌々しげにランデルが「それは王国軍じゃ、数の上でも、名目の上でもな・・・」声には出さないが頷きながら肯定する数人の家臣達が、ロボスへどうだと言わぬ許りの顔を向ける・・・
しかし、何食わぬ顔をして「名目とは又、如何な物なのでしょうか・・・彼の王は僭称している筈ではありませんか?王都アバロンの王宮内で、毒殺されたウーゼル陛下の事もあります。喪が明けぬ内に事を起こした事も関心しませんし、一応数の方は兎も角、名目は順当なる皇太子を擁する当方にありと存じますが如何?」
フン!と鼻を鳴らして「宰相以下、数多の有力貴族が支持しておるのじゃ、それに犯人も未だ判然と為ぬ、先王毒殺を然もアバロン方がしでかした事の様に印象操作をしおって、それがそもそも怪しからんわ!確かに喪が明けぬうちに事を起こした事は感心せぬが、パトス王に逆らう愚か者はアルビオンに籠もる、あの二人の息子達とディオン家だけじゃ」
中々鋭い切り返しにロボスは話題を誘導する「ディオン家と申しましても、此方は分家、既に本家とは袂を分かち別家とお考え下さい」ワイツ家とディオン家は昔の確執がある、その為にロボスは一応分けた話しをと望みながら、話しの方向を態と言葉尻を捉えて変えたのだが・・・
ランデルは若造の言い分に腹立ちも膨れ上がり「この儂にとっては何方もディオン家じゃ、当家とは相容れぬわ!」「ですがディオン本家は王方に与する模様です。ランデル殿の仰り様では何方にも与せずと、私共は考えて宜しいのでしょうか?」
「何もそんな事は言っておりは為ぬ、言葉の端々を捕らえて曲解を為ぬように願いたい!」ドン!などとランデルは、音を立てて机を響かせた・・・
双方加熱しそうな感じを回避する為にラーハルトは「当家の本音を言えば何方にも与せず中立を貫きたいのだが、どうも情勢は許さず思い通りには行かぬ・・・もし一方に与するなら情報を沢山集めて汚い様だが、主義主張は差し置いても勝つ方を我らは選ぶ」「まさしく仰る通りですなラーハルト様、そしてご一同様」
周りを一度見渡してロボスは再び口を開く「ならば最初の質問に戻りましょうか」ラーハルトがそれを受けて「何度も言うが当家が勝つと思う方じゃ」「然様で御座いますか、心情はお察し致します」「未だ当家では纏まって居らぬ話しなのだが、個人的にはステラのディオン家が味方する方が勝つ!と考えて居るがな」
「ラーハルト様!」ランデルが大声を張り上げて、それ以上は、と制止する・・・
世間知らずのボンボンがと、苦々しく考えながらもランデルは「その様な腹の内を軽々に曝すのは、控え目に言っても感心できませぬぞ」阿呆のする事じゃ、と出掛かった言葉を呑み込んだ。だがラーハルトは「昨日も其方に申した通り、個人的な話しだよランデル、当家の方針には逆らわぬ、以後は口を慎もう・・・」
其処へ重臣の一人が「昨日見せて貰った無線機成る物、あれは大量にあるのか?」ロボスがタクトの代わりに受け答えをする「後数台程度なら御家に譲渡する用意が御座います」「成る程の・・・それが大量にあれば機能的に部隊を動かし、戦況を変える事で数の劣勢は補えるのやもの・・・」
別の家臣が「あれは経済的、いや、戦略的にも有用だ。斯様な時ほど情報の早さは物を言う」幾人かは賛同するのだが、煮え切らないのは圧倒的にアバロン王国軍の方が多いと目算されているからなのだ。
ランデルは「有用性は認めるが、手の内を明かせば裏もかかれる・・・一度人目に曝せば漏洩するのは必定、情報を上手く制御されれば、或いは織り込み済みで敵に動かれれば、もう手の打ちようもあるまい、相手の数は圧倒的じゃ」
既にワイツ家の代表と、アビスとの間では決着が付いている話しなのだが、此処に居る面々には正確に知らされていない・・・そしてその動機とステラ側の手の内を曝す事が出来無いので、家臣達の説得からロボスは始めたのだが、思いのほか反対意見が根強いと感じていた。
だがこの段階で風のバインドが口を開く「昨日もお館様のお心は伝えた筈、今は同盟の細やかな条項を取り決めて、奏上するのが此の事前会議の役割と存じるが如何に?」真一文字に繋がった眉毛を逆ハの字にしたランデルは「儂は未だ賛同をしておらぬ、お館様のお心を変えて見せるわ」などと意気込んだ。
だがしかし、ラーハルトやバインドの発言は、一昨日からの同盟合意からトップと一部の上層部は、ブレていないとの、ロボスに向けたアピールだった。
それを受けてロボスは・・・内部の反対勢力を何とか説得して見せろ!或いは手の内を更に見せて、力でねじ伏せて見ろ!と言う腹が見えて遣る気を無くす。しかし良くも悪くもランデルは頑固そうで、もう仕方無いかとも考え初めていた。
もう一つの手は同盟締結後に話す項目だったから、上層部がブレていないのなら、何れはアルビオンで開示する手札、なら此処で話しても問題は少ないか・・・
などと胸算用を済ませたロボスだが、この程度で内部分裂をする様子なら、此方も安心してワイツ家との同盟などは結べないのだがな・・・
さて一体何処までが本気で、手の内を暴く為の芝居なのやら微妙だな?「もう一つ手の内を見せても宜しいですが、完全に機密扱いが出来ますか?」最悪は漏れても良いのだが、この際どの様に此処から漏れていくものか?此方としてはその過程を検証したい所だが、それを教える事でそれも此方からの手土産になるか・・・
ワイツ家内部の勢力図と、昨今の情勢にどう動くのか?交渉相手の対応能力を見る良い機会と考えようか、それも此方の判断材料と成る・・・拓斗君達には頑張って貰おう、などとロボスは瞬時に考えて居た。
閑話休題・・・
この言い分に怒ったランデルは「その物言いは我らを全く信用して居らぬと、面と向かって言って居るのと同義じゃぞ?それでも友好の使者と言えるのか!」「成る程確かに口が滑りました。謝罪致しましょう、言い様が悪かったです」「謝罪を受けよう」他が何かを言うよりも逸早くラーハルトがこれ以上の揉め事を回避した。
幾人かの顔色を見ながらロボスは謝罪発言をした(ランデル殿以外は微妙?挑発が足りなかった模様だが、此手のタイプは味方にすれば頼もしい)「それでは同盟の手土産として申します。現在私共に転移魔法が扱える者が居ります。転移魔法陣を操作して一地域、或いは複数地域の経済封鎖や分断を容易く行えます」
「おぉ――――!それは誠か?」先程少し話していた重臣が真っ先に声をだした。
他の者も同様に驚いて居たのだが、反応が特別だったのをロボスは見逃さなかった「はい、然様です。現在当家の転移陣はプティマとの接続を切り、アルビオンとの接続を目指して居ります」「ならばあの噂は本当の事だったのだな?」「一体何の事やら話しやら・・・」ロボスは惚けて見せた。
口が滑ったとはこの事で、この重臣が知り得た事は、現在ステラ側は仕掛けた側で確信しているのだが、プティマ側は疑っている?程度の話しで、噂に成っているとすれば商人が話す『互いに行き来が出来無い』と言う程度のものだ。
数日前の使者がアビスに惚けられて【実は此方も困った話しに成っている】としか語っていない、今回から上納金を渡す必要は無いと、忖度して伝えてあったのだが【折角油断をしてくれるんだぜ?何故バラす必要があるんだ】などと我意を抑えて考えを改めて貰えたのが、何よりもロボスは嬉しかった。
話しを戻して「どんな噂でしょう?」ロボスが問い掛けると「いや何そのぉ・・・聞いた話し、何じゃぞ」などと念押ししてから「実はステラ側から接続を切った。そんな事を安価で行える技術者が存在してるとな、飽くまで噂として流れてきた」
それは取りも直さずプティマが転移陣を使い、ステラ村奇襲を態と見逃した事実を知っている事を指す。
その話し自体は情報封鎖をする事無く、敢えてプティマの評判を落とす為、此方が積極的に広めている話しだが、接続を切る理由がステラ側に在る事迄は知ってはいても、切った事実をプィテマが確信を持っている事とは、また微妙な話しなのだ。
プィテマが転移陣の不通を意図的にステラ側が行ったと、確信しているのなら他に情報を漏らす必要すら無い、何かの機会にでもステラ側に文句を付ける事も可能な事案なのだ。例え最初にプィテマが行った裏切り行為が先だったとしても、それを惚ける事は可能なのだから・・・
実際、転移陣は何かの問題で頻度的には低いが、不通に成る事も有り得るのだが、切断するだけなら安価で技術者を雇い入れる事も可能だ。しかし、その場合は相手の不興買う事は勿論、復旧させる場合は可成り複雑な工程を熟さねば成らない為、数十倍の費用が必要と成る・・・
因みに現在は王宮技術院の極一部に残る技術で、転移魔法は仕えなくても研究成果を駆使して接続や切断、位置情報が記載されている古書を参考に変更する事などは一応可能なのだが、技術自体は王家の独占状態、国の管轄で故障の場合にのみ派遣される性質の秘匿技術なのだ。しかし、此れ迄は双方の利害関係やその他で、接続箇所の変更などを施した事は無い・・・
不慮の場合は高い技術を要する専門家に依頼して、相応の報酬を支払い修繕を頼む物だが、後ろ暗い事を承知しているものか?今回の使者は互いに善処しようとは、或いはステラ側を一方的に責めて、改善を要求するなどの話しは、全く持ち掛けて来なかったそうだ。
様子見が主で粗探しは序でだったのだが、素直にアビスが上納金や迷惑料と称して握らせた金子が上手く働き、相手も引き下がるほか無かった。と言うのが筋だと、会見したアビス自身が語っていた。
この人は余程の事情通か可成り深い所迄プティマとの繋がりがある、そうロボスは値踏みして睨んだが、普通に惚けた顔をして「そんな噂がもう出ているのですか、実際早い物ですね・・・しかし事実ですよ、現在彼処と繫ぐ事は自殺行為、危なっかしい話しですから自衛した迄です。貴重な情報を有り難う御座いました」
次々と情報が飛び交い、ワイツ家側の一同が何とも言えぬ顔をして唸る・・・
此は潮時かと考えて「一旦休憩を挟みましょうか?」などとロボスが提案すると、向こうも相談したい事案が増えた為に「それは宜しいですな、一息入れましょう」早速バインドが賛成すると、一同が頷き同意した。
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朝一番と言えども始まったのは十時過ぎ、挨拶を終えて対話を進めだしてからでも凡そ小一時間ほど経った程度なのだが、飛び交う情報はどれも重要な話しがステラ側から出て、丁度良い頃合いかとロボスは休憩を申し出た。
ワイツ側も同様の状態でバインドが「それでは少し早いが昼食後の一時から再開で宜しいか?」「はい、此方は結構ですよ」「ならば一時頃に迎えを寄越そう、それ迄は準備をして居る休憩室で食事などをして貰いたい」「了承致しました」などと言いながら立ち上がると女官が先頭に立ち、用意された部屋へと案内された。
其処では既に軽い食べ物と飲み物などが用意されていて、拓斗達は食事を済ませた後のお茶を楽しんで居た「さて用意は良いかなタクト君」「はい女官は暫く此方が何を話しても、判断力が鈍って居る状態ですから、雑談程度にしか聞こえない様にしています」「外は?」「魔道具で防音壁を既に・・・」
頷くとロボスは「流石に此方側だけにはしてくれないね」「スラさん」呼び出すと光学迷彩を解いたスラが「何かご用かな?」「昨日の陪臣、どうやらランデルさんの家臣何だそうだよ」「了解だわさ、アレから高性能な分体を付けて居るからね、大丈夫だわさ」「そうか、なら安心だ。そしてロボスさん」「何だいタクト君」
既に障壁が在るにも拘わらず態と声を低めて「先程話していた髭の重臣、確かザンデルとか名乗って居ましたが怪しいですね」「君も感じたかい、恐らく正解だよ」「スラさんも隠れて同席していたんだから見たよね?」「あの人ね、今から分体を張り付けるわ」「頼んだよ、何か動きがあったら報告してよ」「ラジャーだわさ」光学迷彩を再び発動して、扉の隙間からスラは出て行った・・・
高速で動けば目の良い者には多少の違和感を与えるが、ゆっくりと動くのならば、可成りの確率で誤魔化せる、静止しているのなら尚更バレる事は無く、分体達なら性能にもよるのだが、スラ達なら可成りの物で、隠密行動スキルは上達している、そしてそれが又分体に反映されて向上してもいる・・・
ミウねえとゲボにも、ロボスが感じた怪しい重臣と、官僚の中にも目を配っていた者を選別して張り込ませた「便利な仲間だね」「助かって居ますよ」「前に言った事を守っている?」「スラさん達の擬態は本物らしく化けない事でしたよね?」
「そうだよ、本物ソックリとなると権力者はおちおちと部下を信用出来なく成るからね、魔核や獣核を使った疑似兵なら本物に近く成るのは仕方無いけれども、彼女達やタクト君の様にソックリ化けられるのを知られると、警戒感が増すからね」
「はい、指摘された後からは早瀬モードに成る場合でも、元はスライムだと敢えて理解出来る様に化けて居ますよ、緑ぽかったり青っぽかったり工夫してね、最近はお互い個性を付け出して、三者三様に化ける物ですから、同じ顔でも青のショートヘアーはゲボ、ロングの緑はミウねえ、などと分かり易くて良い感じです」
因みに赤毛のワンピース姿はスラ、ロングドレスはミウねえ、ボーイッシュな姿を好むゲボ、と言った具合に個性が強調されて、益々別人化が進んでいる模様だ。
余談だがアイ子はゴージャスな物を好んでいて、金髪縦ロールでパーティードレスなどを着ている姿を良く見る、本当の性格は案外派手何じゃ無いのかと拓斗は最近疑っているが、各人髪色以外の服装や髪型は気分次第だ。可成りの頻度で変わっているので、結構元の早瀬さんはお洒落だった様な気がしている・・・
少しロボスは笑いながら「成る程ね、それなら早瀬さんモードAとかBに成らずに済む訳何だ」「まぁそう言う事ですね、それとソロソロ薬の方が切れる頃なので」ロボスは周りを見ながら「了解だよ、みんなも用意は良いね?」全員が承知したと頷く・・・
態とらしく、パァーン!と手を打つ「女官さん、お代わりを頼みますよ」「はい、畏まりました」などと返事をしながら、それぞれのお代わりを用意し始める、その様子を伺い不自然さなどを観察したが、大丈夫な模様でロボス達は安心した。
迷宮産の薬草の中にあやかし草と言う物が存在していて、スラとアイ子が開発した常習性を抜いた幻覚剤を霧状にして彼女達に散布していたのだが、効き目は短くて戦闘中ならば然程役に立たない、だがこんな場合では重宝する模様で、潜入する前後に少し散布したりすれば、可成り大胆な動きをしても気付かれない・・・
そんな中でロボスは一般的な指摘を始めた「君達、本来はね、本格的な首脳会談と言うのは、ある程度の時間をかけて、事務レベルの緻密な実務折衝を行い、双方の主張を煮詰めながらほぼ合意した段階で、トップ会談を行うんだよ、最後の詰めはどうぞお好きにとね」「成る程参考に成ります」
「まぁお互いに話しを詰めた後だから、どの様に最後が決まっても範囲内、と言う話し何だよ、だから両首脳が会う時には和やかに歓談した後、握手をするだけなんだな、その後は双方の家臣領民達への発表と周知に努める、と言う所が妥当でね、首脳会談は言わば最後のセレモニーに過ぎない」
ロボスの説明口調に苦笑しながら「成る程、双方の責任者が会う時には、お互いのトップが恥を掻かない様、周りが段取りを付ける、と言う事ですね」「普通はそう成るね、それをしないで仮に会っても全く無意味、双方の話しが纏まっていないのだから当然決裂するしか無い、だけど今度は少し違う」
「そうですね、その様です」「こう言う場合はそうだな、トップダウン方式とでも言う事に成るね、だけどこの方式ではね、絶対的にトップの権力が強くなければ、駄目な方法なんだ」「父さんが決めた事には誰も逆らえませんよ?」
「いや、言い方が悪かったかな?双方のトップに権力が無ければ駄目、と言う話し何だよ、自領で完結する事ならば問題無く上から通達すれば済む事だけど、今回は相手がある事だからね、相手の権力が不足気味なら反対意見も出るから今みたいに話しが進まない、けれどワイツ家は問題無いと思っていたんだがな・・・」
「成る程ですね、けれど午前の雰囲気は微妙でしたか」「全く何処までが誰の腹芸なのか?或いは本当に内部統制が取れていないのか?ウチとは違ってワイツ家は、大所帯だからねぇ・・・」ロボスは述懐する様に最後は呟いた。
ロボスは続けて「ワイツ家のトップが下した結論を蒸し返している家臣達が、話の進行を阻害しているけれども、僕達は本来こんな話しには、全く付き合う必要すら無いんだよ」「確かに」
「けれどもそれで押し通して妥協させても、足を引っ張られて面倒臭い話しだろ?だから後から四の五の言わせない為に事務レベルの話しに付き合っているんだが、真逆事の初めからの話しに成るとは、流石の僕も考えていなかったよ」
其処へ呼び出しが現れて「ソロソロお時間に成ります。会議室へどうぞ」「そう、有り難う」「それでは昼からの部が開始ですね」「今日一日で終わる事は無いよ」「此は何日も掛かりますか?」「そんな場合はする事を済ませて、タクト君は旅を再開して貰って良いよ、後は引き受けるから」
ロボスは小声で話すと「それは有り難い」タクトはお礼を述べる「君は兎も角も、他の子達は微妙だよ」少しロボスは笑いながらチラリと振り返ると、ミウとセラは欠伸を押し殺して付いて来ている・・・
それを見てタクトは「もう直ぐ此方の事務方が来る段取りなんですよね?」本当は転移で招き寄せるのだが、敢えてその様に表現をすると「ホント、僕が書記も務めなければ成らない何て、今回は段取りをしくじったよ」
ロボスも心得ている事で「夕方早目には切り上げようか、今日は初日だし向こうも反対は出ないだろう」それから迎えに行けと言う事か・・・表門から入る段取りも付けないと転移がバレる事に成るし、正式な使節団と言う格好も付けないとだな、おや、案外大変だぞ?などとタクトは他人事の様に考えていた。
しかし、ロボスは奇想天外な手を考えて居たが、タクトには伝えて居なかった。
そもそもが急に決まった話で、極秘会談と言う体裁にしたいワイツ家と、出来れば内外に示したいディオン家とは、この点で考えがそもそも違う・・・向こうは今日明日などで、正式な使節団が堂々と来る、などとは考えてもいないのだが、意表を突く為に夕方には、馬車を設えた派手な登場を計画しているのだ。
ステラのディオン家と内密で会談するのと、内外に知られる正式な会談では、注目度が上がりワイツ家の去就は断っても噂は拡がる・・・同盟を締結したのなら抜き差しならぬ関係と示す事に成る・・・何方に転んでもステラ側は派手にする事で、得るところはあるのだが、ワイツ家の方は内密の方が望ましいと言う訳だ。
その為の準備が遅れた・・・当然である、一昨日に話しが大凡纏まるとは、流石のロボスも可成り意表を突かれたのだ。彼の胸算用では、早くても今日辺りに親書が届けられると考えていたから、その後に段取りを始めても余裕だと、拓斗の強運を完全に舐めていた。例えラーハルトとの出会いが偶然だったとしても・・・
控え室から出て行った後、女官に対して事務方の者が「どんな話しをしていた?」「大した話しはしていませんでしたが、やや午前中の会議に対して不平を漏らしていました」「そうだろうな、ご苦労だった。夕方以降も話しを聞いて置いてくれ」「畏まりました」女官も心得ている者達を選別している・・・
初日はこうして終了した。
ワイツ家の面々は、ステラが派手な登場をして城下で騒がれた事を後で知る・・・
拙作ですが楽しんで頂ければ幸いです。次回の更新予定は01月09日です。
細かな部分の言い回しやその他で気が付いた間違い等を随時訂正しています。
何時も応援を感謝致します。少しでもポイントが上がるのは励みに成ります。
此れからも頑張りますので、感想などを聞かせて頂ければ幸いです。作者拝




