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ツイン・タクト (外部世界の不思議な物語)  作者: スラ君
第一章 始まりは突然に・・・
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001話 プロローグ

転移、転生物にはもう飽きたよ、と言う読者には大変申し訳無い作品ですが、切り口を工夫して徐々に盛り上げる予定です。成るべく色々な要素を取り入れて、娯楽作品に出来たら良い(願望)と願っています。それでは、どうぞお楽しみ下さい。作者拝

俺達は今『ソダン』の街を出発して、街道を西にへと向かって進んでいる・・・


既に海近くまで来ている俺達は、それ程高くもない山々の間を抜ける街道を進み、最後の低い峠を越えれば、もう直ぐ目的地へと到着する・・・


俺達が現在向かっている目的地は、港町の『モラン』其処へと続く一本道だ。


その峠に古びた旧関所があり、その向こうからは、山裾を拡げる様に街道を含めてゆったりとして行く、海まで続く畑が扇状に拡がっているらしい・・・


初めて行く町だが、目的を果たすため、そして次の段階を踏む為に未だ少年少女と言っても良い三人と三匹が、その古びて壊れた街道の旧関所へと近付く。


その一人が「ねえタクト」「おう?」「モランに着いたら、早速さっそく上級ラビリンスに挑むのよね?」白いウサ耳が可愛い、幼馴染みの『ミウ』が聞いて来た。


歩きながら「当然だぜ!と威勢良く言いたい所だが、準備も必要だろ?先ずは当然情報集めからだよ、その為にお調子者二人が、率先して先行したんだからな」


右手を突き出し「タクト様」「何だ?」(その様ツケは止めろ!)と何度言っても止めない、丸い耳が可愛い、ラクーンの『ポコ』が進行方向を指差す。


勿論もちろん拓斗タクトも既に気が付いていた前方からの騎馬が、此方こちらに向かって来るので道を素直にゆずると、一瞥いちべつした冒険者風の男が通りすがりに「此の先は、危ないぞ!早く引き返せ」と言い放して駆け抜けて行った。


徐々に近付いて様子が判明すると、隊商迄もが街道を引き返そうと大慌てだ。


「何が有ったんだ?只事ただごとでは無い様子だがな」他の者達は首を傾げる・・・


上り勾配こうばいもやや緩み、後少しで街道の中では一番高い場所に在る、旧関所へと辿たどり着くのだが、壊れた関所のお陰で、其処から先の見通しは悪い。


しかし、やがて関所のその背後から、遥か前方に黒雲がたち、不穏な空気が辺りに立ち込めると「大量の魔物が此方こっちに向かって来るぞ!モランの港町が燃えている」関所の見張り台で前方を注視していた男が、大声を張り上げた。


「スタンピードと言うやつか」


「その様ね、聞いた事がある、獣魔達の突発的な行動、或いはパニック状態ね」


「先行した彼奴あいつらは、大丈夫なのか?」「そんなの私に分かる訳が無い」とミウがぶっきら棒に答える・・・少し、ツンデレさんで緊張した時には、特にその傾向が強いのが玉にきずなのだが、心根の優しい良い子だ。


緩い坂道だが息を切らし、大勢の人々が着の身着の儘で、関所へと逃げて来るその様子が、崩れた門を通過している人々の態度で察しが付く・・・


その状態を見ながら拓斗は「俺達は、間の悪い時に来たのか?それとも関所で籠もれるだけ、未だましだと考えるべきなのか?」独り言の様に呟くと「そんなの分かんないわよ」「それもそうだな、色々と考えても始まらん、状況の確認が先だな」拓斗が早足で動き出すと他の者達も黙って付いて行く・・・


そして見張り台の男が「少し前に此処を通過した少年少女達が逃げて来るぞ!誰か援護をしてやれ」聞いて俺達は顔を見合わせた後、大急ぎで関所の壁を上った。


大勢の人々を獣魔から逃がす為に少年と少女が、追いかけて来る獣魔達に遠距離の攻撃を仕掛け、殿を務めながら逃げて来る様子が見て取れた。


彼奴あいつらだ!」「アラ、本当だわね」三人三様で現状を確認した後に俺は、様子を見ながら何時でも放てる様に遠距離魔法の詠唱を始めた。


未だ魔物達との距離はあるが、徐々に追い付かれ始める二人の様子を見たミウは「ヤバイわね」「不味いデス」ミウとポコ迄も同意して此方こっちの様子をうかがう・・・


「未だ遠いが、届くかな?」拓斗は、詠唱をほぼ完了して、トリガーの決め台詞を唱えるタイミングを計っている・・・実際、詠唱の必要は無いのだが、気分次第で時折り気持ちを込める。


緩い坂道を此方へとひたすら逃げて来る・・・メンバーの二人を追い掛ける比較的足の速い魔物達の先頭を目掛けて巨大な火の玉を打ち放した。


此から戦闘に成るなら一応は詠唱しとこうか『モーション!マジックバルブ・フルスロットル!行っけぇ~!ファイヤー・ボール!ボーリング、バージョン!』ズッバァーーーン!ドドガーーーン!!!


魔力をコントロールしながら、地面へと抑え付ける様に着弾後に転がすと弱い個体達は、瞬時に蒸発して行った・・・当然、山なりにボールを放ると、レーンが凹み係員さんに叱られるパターンだが、拓斗は気にした様子も無い。


火は上に上る・・・坂道を転がす様に火を操作するのは高等技術テクニックの一つなのだが、拓斗は意図も簡単にしてのける。


結局後ろからの風圧に押された二人にも影響を及ぼして体勢を崩し掛けたが、持ち前の身体能力を生かして何とか転ばずに体勢を持ち直した。


「オイ、オイ、オーイ!(涙目で)こりゃ殺生やで、ホンマ、堪忍カンニンして~や大将」「タクトさん、何気なにげひどいスよ」とボヤキながらそれでも必死に関所へと逃げ込む二人を見て拓斗がニヤリと笑い「はい、お疲れさん」と労った。


「それじゃ、もう一発だ!動け魔方の弁、全開だ!再び行っけぇ~!ファイヤー・ボール!ボーリング、バージョン!」ズッバァーーーン!ドドガーーーン!!!


ミウが「相変わらず詠唱もムチャクチャだわね」「タクト様、凄いデス」


一端は押し返された獣魔達だが、体制を整えて改めて登って来る、その様子をうかがい〔ご主人様〕「何だ」〔此処はアタシ達の出番では無いかと〕「その様だな、頼めるか?」〔良いわよ〕〔お姉さんも頑張るわ〕〔お任せを〕


三匹は、壁の向こうに降り立つと、此方をうかがい拓斗の言葉を待つ「緩いとは言え登って来る相手なら此方が遥かに有利、逆落としに攻めれば、此方の勝ちだ!攻め掛かれ~!」鼓舞すると雄叫びを上げて一斉に駆け出し、あふれた獣魔達に向かって行った・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


遡ること四年と少し前、拓斗は「灰色?イヤ、白かな?」ひたすら重い足を上げて霧の中を歩いていた。


遠くで時折り、少し晴れる霧の向こうで、広大な山々が微かに見える、モノクロな景色を見ながら、麓の河原を大勢で歩いている・・・


辺りを見渡すと、この世では見た事の無い、怪異な動植物を含めて、大怪我をした人や顔色の悪い老人達が、何も考えずにひたすら川上へ、川上にと向かって全てが同一方向に向かって歩いている・・・


中には、記憶や痛みが有るのか、うめき声やなげく声、ささやき声なども時折り聞こえるのだが、徐々にその声は小さくなり、やがて静かに成る・・・


しかし、動植物を含めて幼くして亡くなった幼子や赤子は、最初の河原から一歩も動けない様子だ。


そう・・・拓斗は、前にも数度、此処に来た事が有る「又、此処か・・・」周りを見ると、既に原形を留めぬ、あたたかい光を放つ人魂ひとだま?精神エネルギー体?が強い光を放つ個体を含めて徐々に丸くなり、上下に消えたり、突然消えたりしている・・・


拓斗の考えでは、黄泉よみへの道やさいの河原?次の準備をするための関門?などと考えているのだが、前世の記憶が此処を進むに連れてそぎ落とされ行く様に感じていた。


拓斗と同じ様に川上へと辿り着ける個体が稀なのか?その数は多くない・・・


一日か?数日か?はたまた数ヶ月が経ったのか?時間の感覚が無くなった頃には、周りに残る個体数は、随分と減少して数える程度に成っていた。


不思議と会話は成立しない様子で仮に話し掛けても、聞こえていない様子から既に諦めている「毎度のことだな、物音が聞こえているのは俺だけかよ」などと一人で考え続ける事しか出来無い・・・


随分と昔の記憶は薄れて最近の数世代しか思い出せないのだが、此処数代は特定の場所で時代を変えつつ転生を繰り返していた模様だ。


その記憶も流石に此処まで辿たどり着くと薄れて来る・・・強烈な出来事や記憶、繰り返して覚えた技術は、多少残るがと考えながら思い浮かべて見る「そうだ」とつぶやきながら前世を振り返ると、途中で思い出した前世が影響を与えた事を思い出す。


生まれてから最初の数年間は、思い出す事も無く普通に暮らして居るのだが、ある時分を越えて突然思い出した時や強烈な出来事を境に前世が蘇る事が有り、それまでの自分と同化した状態でのちの人生を送る・・・


「勿論、物心が付く事のはじめから自分を意識している時や死んでから思い出す事も多いのだがな」自虐的に呟くと「今回は、途中で思い出した展開だな」その前世は、政情不安と戦争が近づく頃に生まれて戦後に育った。


良い時代を青春して結婚、家族を養うために働いて死んだ後、仮想世界を楽しめる時代に生まれ変わり、発展した世界で働いていた時に思い出した。


「オット・ト?」手元が狂い掛けてヒア汗を流す事に成ったが、同化はアッサリと終わって「何年後なんだ?」呟く・・・


今回の拓斗は、随分と時代が進み、人型、汎用型とも呼ばれる作業機械、アバターを自宅から乗り込み、遠隔操作をしながら建設に携わったり、荷運びをしたりするオペレーターをこなしていた様子だった。


前世でも死ぬ少し前から電算機コンピューターが発達してあらゆる分野が発展していった時代でバーチャル・ゲームやその周辺機器の開発が進んで此から楽しみな時代に成るな、そんな予感をいだきながら死んだのだが、此処まで発達をしていたとは、考えもしなかった。


人類は自宅で仕事をして稼ぎ・・・そして余暇を楽しんで暮らして居たのだ。


同化したした記憶では、幸せな子供時代を送り、勉学に勤しんだ記憶が有るのだが前世で見た映画を思い出して拓斗は、戦慄した「全てはカプセルの中に閉じ込められて、仮想世界の住人に成って居るのでは?」などと考えると、時折り外の空気を無性に吸いに行きたく成った物だった。


実際は未だに人の手が必要な作業も有り、安心したのだが家内ヨメさんには話せ無い内緒の話しだったりする・・・


余談として語ると仮想世界で学業をするので苛めっ子などが極端に少ない世界だ。そんな暇人が少ない事が影響していると思われるが、何事にも例外があるようで、そんな場合は適度に転校を繰り返すか、子供ながらも働く道を探す方が建設的だ。


行楽地や繁華街に出掛けては、人生を謳歌しているが愛しの家内ヨメさんとは、学生結婚で仮想大学在学中に知り合い、猛アタック!何とか射止めて卒業前から一緒に住んで居る・・・


此の時代は、子供でも働ける事から汎用機械を操作する免許を取得して、早くから簡単な仕事を初めていた拓斗は、アバター(汎用型の作業機械)も自力で何とか購入した。


未だ支払ローンいは、有るが子供も、もう直ぐ生まれる予定で自分的には楽しみなのだが「此も何もかもが仮想世界だったら」と考える時がある・・・


我ながら自分の情緒が随分と不安定な事に笑いが込み上げて来る・・・


卒業後には、大手の建設会社に就職も決まり、郊外に新居を構えて引っ越し祝いと自分の誕生日を兼ねて新妻に祝って貰った。


現在は、新しい生活を始めたばかりの楽しい時期を過ごして居たはずだったのが、何で此処に又来て居るのかが、全く思い出せ無い拓斗だった。


俺の名前は、板垣拓斗いたがきたくとだった「此は間違い無い」独り言で納得してうなずいていると、自分の未練を思い出した「此からだったんだぞ?何でだ」理不尽な今の境遇が信じられない思いで無性に腹が立つ・・・


辺りを見渡すと既に拓斗以外は見当たらず、一人孤独に進んでいる自分に気が付くと「馬鹿らしい」呟いて一瞬、歩くのを止めようと思ったのだが、妙な悪寒が走り彼は足を止める事無く歩き続けた。


幾日、幾千の時間を歩いたのか?又は、一瞬の出来事を長く体感しているのかも?などと既に判断も出来ない頃合いに成ると、目の前に灰色のローブ?はたまた薄汚れた布か?それをまとった人影を発見した「誰だ?」などと考えながら目を凝らす。


そうすると相手が立ち上がり「やあ・・・君を待って居たよ」と声を掛けて来た。


一瞬、驚いた・・・何故なら此処迄に巡り会った個体とは、全く意思の疎通が出来無かった事でも有り、目の前の相手と話せるとは、拓斗も思っていなかったのだ。


しかしながら、不思議と立ち止まる選択をする事も無く歩き続けた。


「アンタ誰だ?」横を通り過ぎる時に聞いてみた。


「僕かい?僕は何でも無いんだが一応、案内ガイド人かな」と曖昧な答えを返して来る。


立ち上がり、拓斗の横を歩き出したその人物?人型の何かは話し出す・・・


「此処まで来る個体は少なくてね、僕の仕事も暇なんだ」ととぼけた事をのたまう。


胡散臭うさんくさい物を見る様に拓斗は、見極め様と考えを巡らす・・・此れ迄、此処へと辿たどり着いた覚えが無いので、拓斗自身は良く分からないが、未だ先が在りそうなので歩きながら「俺は、久し振りの仕事対象と言う事か?」「そうなんだよ、良く辿り着いたね」嬉しそうに身体全体で表現した。


ぶかぶかの布を頭から被っているので少年?少女?良く分からない・・・


確かめたい欲求に駆られて「俺は拓斗、アンタは?」「名前も性別も、年齢さえ、無いんだよ、僕は」成る程と考えながら「さっき仕事と言ったな?」「言ったよ」「何をしているんだ?」「案内」


「それは聞いた。何の案内なのだ?」「魂の導き手なのさ」「俺を導く為に待って居たと言うのか?」「正解!そうだよ、回転が速いね」馬鹿にされたように思った拓斗は「此処まで言われたら、大概たいがいの者は理解出来ると思うぞ」「だよね」と楽しそうに笑った。


「もう少し頑張ると到着するよ、だから決して歩みを止めないでね」「何処にだ」「輪廻りんねの外へと到達する」「輪廻転生の事か?確か涅槃ねはんとか言ったような・・・」


物わかりが良い相手で話し易そうに「此処まで来たのなら屹度色々な経験を積んでいる事だろうからね、理解出来ると思うけど足の重みが軽く成っていないかな?」「そう言われれば、軽く成った様な気がするな」「でしょう」と今度も答えに満足したのか嬉しそうだ。


「後、少し何だけど僕の頼みを聞いてくれないかな?」「どんな事だ?」「とある世界の救済、イヤ、解放かな?」「それを受けずに進む事は出来るのか」「勿論、その答えもありかな」「後、少しなのだろ?損得勘定を言いたく無いが、受ければ俺に何の得がある?」


少し困った様子で「確実な得は無いけど更なる進化は出来るかも?」「それは又、曖昧な答えだな・・・此処へ今回来た事も未だ曖昧何だがな」「今回は色々と不測事態の連続だったんだよ」「分からん答えの連続だな?」「ご免ね、全てを教える事が出来無い規則でね、僕も心苦しいんだけど、答えられる範囲なら教えるから、自分の意思で決めてよ」


問われたので思わず立ち止まり、考え込むと「ア!駄目だよ」手を伸ばす案内人の前から拓斗は、忽然こつぜんと消えていた。

拙作ですがご辛抱の程をお願い申します。


当面の間、ストックの続く限り毎日更新致しますので楽しんで頂ければ幸いです。


細かな部分の言い回しやその他で気が付いた間違い等を随時訂正しています。

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