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第二話  インストール

   第二話  インストール


授業終了のチャイムが聞こえる。黒板に文字を書いていた先生はチャイムに気づく。

彼は生徒達に一言二言告げると教室を出ていった。

関谷は先生が出た事を確認すると、速やかに教科書類を鞄に放り込む。

「おつかれ。」

関谷は良く遊ぶ仲間たちに告げながら教室を出る。

昇降口を出ると、冷たい風が体に当たる。空を見ても太陽は見えず、暗い。こういうときはさっさと帰るべきだと思った。

関谷は早足で自宅までの道を歩いた。

「ただいま。」

関谷は家に着くと、そのまま自分の部屋に入った。

机に座り、鞄から教科書をひっぱり出すと勉強を始めた。これから起こる事への対処だ。

しばらくすると、部屋のドアをノックする音が聞こえる。誰かは分かっている。だから、振り向かない。背後からドアが開く音が聞こえた。

「健一。私ちょっとお買い物行ってくるからお留守番お願いね。」

健一の母親はそれだけ言うと、ドアを閉めて部屋から離れていく。

健一は母親が十分離れた事を確認すると、椅子の背もたれによりかかる。そして、ゆっくりと息を吐いた。

健一の母親は、彼が帰宅すると何時も勉強をしているか確認に来る。

一度帰宅早々遊んでいた所を発見されて以来、遊んでいないか確認しにくるのだ。遊んで居れば怒る。しかも、説教が長い。だから、帰宅後すぐは形だけでも勉強をする必要があった。

今ではこの状況に慣れてしまって、集中できる時間として重宝している。

健一は明日出す宿題がもう少しで終わる事を確認すると、パソコンの電源を入れた。パソコンが起動している間に、残りの宿題を終わらせた。筆記用具や教科書類を鞄にしまう。

健一は起動したパソコンの前に座ると、デスクトップ上に配置されたアイコンをクリックした。アイコンには「ネットワークレジスタンス」と書かれている。

「今日こそやるぞ。」

健一は、昨日のうちにネットワークレジスタンスをインストールした。このゲームをインストールしようと思った理由は、インターネット上の掲示板やウェブログでこのゲームが話題になっていたからである。

ネットワークレジスタンスは完全無料のオンラインゲームである。しかし、ただの無料オンラインゲームでは無い。課金アイテムなど皆無のゲームだ。課金アイテムが無いオンラインゲームなど、月額課金のオンラインゲームでも少ない。しかも、無料と呼ばれるものの多くは海外産のゲームだ。日本人が作ったオンラインゲームなどほとんど無い。いや、実際はあるかも知れ無いが、あったとしても見つける事ができないほどの所にあるのだろう。その中で、完全な国産無料オンラインゲームなんて夢のようだ。健一はこれまで無料のオンラインゲームを幾つかしてきたが、課金アイテムにお金をつぎ込む人達の言動や無駄に作業的な戦闘に嫌気がさした。だから、このゲームを選んだ。

とあるサイトの情報では、無料でこの質は素晴らしいとか、レベル上げのための戦闘が嫌ならこれをやってみるといいよとか。そんな事がたくさん書かれていた。

そんな言葉につられて、昨日は公式ホームページにてユーザー登録とインストーラのダウンロードをした。

しかし、健一は色々と甘くみていた。インストーラを起動すると、ゲーム本体のファイルをダウンロードし始めたが、これがすごく時間がかかった。インストール中で他の作業が出来ないこともあって、ディスプレイの前で眠ってしまったほどである。ディスプレイの電源を落として、終了するまで放置しておいた。そして、再び画面を見たときにはインストールは既に終了していて、ゲームの起動画面が映っていた。その時には、夜遅かったために明日することにした。

それから、パソコンを終了しようと思ったが、その前に念のためインストールデータの容量を確認することにした。公式ホームページに記載された動作環境一覧のHDDの容量について良く見ていなかったためである。途中で容量不足にならずにインストール出来たので、空き容量は足りているのだろう。

健一はインストールデータの容量を見て驚いた。これまで遊んだことのあるどのゲームよりも一番記憶容量を使用していた。しかも、過去一番記憶容量が多かったゲームの二倍近い。

この容量の大きさのせいでゲーム本体のダウンロードやインストールの時間がかかってしまったと言える。しかし、こんな大容量のデータを一体何に使っているのだろうか。それは昨日の時点では分からなかった。だけど、これからこのゲームを遊んでみればわかるだろう。

健一がヘッドマウントディスプレイを装着すると、そこにはログイン画面がある。そして、その背後には何処までも続く森が見える。こんな世界の中で戦うのだろうか。

そんなことを考えた健一は嬉しくなってきた。折角時間をかけてインストールしたのだ。楽しまなければ損である。

健一はマウスとキーボードを操作して登録したIDとパスワードを入力し、ログインボタンを押した。

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