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第十一話  ターゲット戦

   第十一話  ターゲット戦


 アロンたちは広場の一角にまとまって座り、蛇の居たフィールドについて話していた。

「やっぱり、さっきのフィールド。何か変だな。フィールド間の洞窟も見えなかった。」

 アロンは寝転がり空を見る。空といっても作られた空であり、決まった形の雲が移動していくように見える。

「そうだな。それに二レベル差のプレイヤーが同じフィールドの空間に居るなんてどう考えてもおかしい。」

 アロンの右隣に居るトマがアロンを見下ろす。しかし、すぐに目の前の地面に視線を戻した。

「公式に問い合わせておいた。ついでに公式のお知らせやその他情報も確認したけど関係するものは無かったよ。」

アロンの左隣に居るルイがアロンを見て、次にトマを見た。

「なんだっていいじゃんか。面白いものが見れたんだから。あんなでかいのなかなかお目にかかれないぜ。」

リッツはルイから反時計回りに順に仲間を見ていく。しかし、リッツを見たのはルイとアロンだけ。トマは相変わらず地面の一点を見ている。

「もし蛇を倒せなかったら、あそこで死んでいたらどうなっていたんだろうな。」

トマは地面を見たまま独り言のように言った。そこで、アロンは起き上がる。

「あれがもしこのゲームのバグだとしたら、何気ない動作で予想外の反応をするかもしれない。」

「例えばどんなの。」

アロンの言葉にルイが反応する。アロンはルイの言葉に空を見上げ、そしてルイを見た。

「ゲームのデータが消えるか破壊されるとか。」

ルイはアロンの言葉に驚き、一呼吸の後トマと同様に地面を見た。

「それじゃまるでホワイトブラスターだよ。恐ろしい。」

 ルイの言葉に他の三人は力なく相槌を打つ。

ホワイトブラスター。それはレベル九以上のプレイヤーが居るフィールドに低確率で出現する凶悪なモンスター。プレイヤーが倒すか、モンスターが居るフィールドの持ち主がゲームを終了しない限り存在し続ける。このモンスターが凶悪と呼ばれる所以。それは、このモンスターに倒されるとフィールドに転送されてから今までのポイントすべてが吸い取られるという点である。一見おかしな設定にも取れるが、上位レベルのフィールドのみ低確率で出現するため上位レベルプレイヤーへのハンディキャップとも取れる。各レベルに合わせて強さは決められているためレベル九の強さが最低になる。

ちなみに現在プレイヤーの最高レベルは十二らしい。モンスターの追加と共に少しずつではあるが上位レベルが出現してきている。

「もうすぐターゲット戦だな。みんな必要なものは揃えてあるのか。」

アロンの言葉にそれぞれ答える。結果、全員回復薬等の品物は揃えているようだ。

「僕はちょっとトイレいってくる。長引く可能性もあるから。」

ルイは他の三人に言うと、しばらく何も言わなくなった。アロンとリッツはその場に寝転がり、トマは黙ったまま地面の一点を見つめている。

「ただいま。」

しばらくしてルイが戻ってくる。他の三人が反応するとアロンは時計を見た。そして三人を見る。

「そろそろ始まるな。三人とも準備は良いか。」

アロンの言葉に他の三人は頷く。それからすぐにゲーム内にアナウンスが流れる。内容は今からターゲット戦をはじめるということだ。そして、すぐに転送までのカウントダウンが始まる。転送までにカウントダウンを採用するのはゲーム内でもこのターゲット戦の時か脱出アイテムを使用した時だけだろう。長めに二十秒のカウントの後画面が真っ白になる。そして、次の瞬間にはターゲット戦用のフィールドに転送されていた。

専用フィールドは草木がほとんど無く、まるで砂漠の一角のように見えた。風が吹くたびに砂埃が舞い上がり、視界も悪い。

すぐに回りを確認し、トマ、リッツやルイが居ることを確認する。そして、戦闘前アナウンスが流れる。それとともに音楽が流れ始めた。その音楽は余裕の無い緊迫した音楽であるように思えた。

「巨大モンスター、ゲルファウストが私たちの町に向かって侵攻を開始しました。町を守るため、早急に退治してください。」

アナウンスの後すぐに画面が代わり、アロンたちを上空から映す映像になる。前後には道がありどちらにも続いているように見えた。しかし、背後の道の先は映されていない。背後に続く道が町への道だろうと思う。視点が彼らの先にある道を映し進んでいくと、ある位置で巨大なモンスターの一部が見えた。そこで視点は巨大なモンスターを正面から映す。黒いボールのような丸い体で所々青白い光を出している。丸い体の両側には長い腕がる。また、目は横長で顔は決してかわいいものでは無い。そのモンスターの回りには小さなモンスターがたくさん見える。視点は巨大なモンスターを中心に一周する。その間に巨大モンスターは咆哮し、進み始めた。すると視点が各プレイヤーに戻される。その直後再びアナウンスが流れた。

「ゲルファウストが現在みなさんの居る位置を越えて町に侵攻すると私たちの負けとなります。十分注意してください。」

 アナウンスが始まると同時に行動可能となったため各プレイヤーは早速動き出す。

「よし、倒しに行きますか。」

アロンの言葉で四人はゲルファウストに向かって走り出した。周りに居た他のプレイヤーもそれぞれ走り始める。アロンは他三人と一緒に走り出したものの武器であるハンマーが重いのか速度が出ない。

「お前は一撃目の登場じゃないから後から来いよ。」

軽い武器を持つリッツとルイが遠ざかっていく。トマは速度を落としアロンに並んだ。

「お前も行けよ。俺は大丈夫だ。」

アロンの言葉にトマは笑う。手に持った槍を担ぎ、アロンを見た。

「お前だけでこの戦いを単独で切り抜けられると思っているのか。」

 アロンの武器はハンマーである。ハンマーという武器は一対一の場合は良いものの一対複数の場合は不利になりやすい。トマはその点について心配しているのだ。

 トマは前を向き、そして続ける。

「仲間が居るだろ。使わなきゃ損だ。」

トマはそれだけ言うと最初の敵が現れるまで何も言わなくなった。周りには同様に重い武器を持ったプレイヤーが戦場へ向かって走っている。アランと同じハンマーを持ったプレイヤーや大きな大砲を持ったプレイヤーも居る。



その頃、双剣使いのリッツと弓使いのルイは敵の第一陣と戦闘を開始していた。現れたモンスターはどれも現在のレベルに出現するものばかりで一度戦っていればどうにかなる。しかし、そんなモンスターが複数同時に向かってきたのでは戦い方を知っていても簡単には倒せない。

リッツは器用に敵味方の間をすり抜けながら敵だけに攻撃を加え、押されている味方の手助けをする。見知らぬプレイヤーでも助けなければ結果リッツを含むこのフィールドに居る他のプレイヤーが損をする。

プレイヤーが行動不能になった場合はこのフィールドに転送された時の位置に戻される。戻されれば戦線への復帰まで時間がかかってしまう。前線に居るプレイヤーが少なくなればなるほど各プレイヤーの負担は増大する。名前も知らないプレイヤーでもときには助け合わなければならない。このフィールドに居る時点でこの戦いに勝つという共通の目的を持つ仲間なのだから。

軽い近距離武器を持つプレイヤーが敵に直接攻撃を加え、軽い遠距離武器を持つプレイヤーが彼らを援護する。矢に当たり隙を見せたモンスターへと剣や双剣を持つプレイヤーが攻撃する。

リッツも同様にモンスターへの攻撃をしていたがその真横から別のモンスターが突進してきた。モンスターにぶつかった彼は別の位置へと飛ばされる。

リッツは飛ばされた先でゆっくりと立ち上がる。近くには同様に飛ばされたプレイヤーが何人か居た。すぐに周りを見ると彼らを狙う複数の人型モンスターが囲むように近づいてきていた。このままでは袋のねずみとなってしまう。リッツはすぐに走り出す。そして、二体のモンスターの間へ向かっていく。モンスターを切りつけて通れる隙間を作り出そうとした。一緒に居るほかのプレイヤーも意図を理解して一緒に攻撃して出ようと試みるがうまく隙間が出来ず出られない。その間にもモンスターたちはリッツたちを囲み狭めていく。外から矢が飛んできていることはわかったがその程度の攻撃では何も変わらない。焼け石に水である。

さらに狭まる中、遠くで爆発音が鳴った。さらに続けて爆発音。三度目の爆発音の後、目の前のモンスターの頭に何かが命中し爆発を起こした。爆発を受けたモンスターはその場に倒れる。一体が倒れたことにより囲いの一角が空く。リッツたちはそこから囲いの外へ出た。正面には大砲を持ったプレイヤーたちがモンスターに向けて標準を合わせ撃っていた。

「やっと大砲、大砲が来たのか。」

大砲は正式にはヘビーガンと呼ばれる重い武器に分類される。つまり、後続のプレイヤーたちが到着したことを表す。

リッツたちが大砲を持つプレイヤーたちに向かって走ると彼らの間からハンマーや大剣を持ったプレイヤーが出てくる。その中にはアロンやトマも居た。

「後は任せろ。」

彼らは口々にそう告げると重い武器を持ったプレイヤーたちはモンスターへと向かっていく。リッツたちはそのまま大砲を持つプレイヤーの間を通って前線を離脱した。

リッツは大砲の壁を見ながら回復薬を使って体勢を立て直す。その傍にレイが来た。

「リッツ。大丈夫。」

ルイは袋から液体のビンを取り出して腰に付いた空のビンと交換している。

リッツは現実世界の彼自身もお疲れのようで体力を回復したもののなかなか動き出さない。

「じゃあ、僕は戻るから。」

ルイが走り出そうとしたとき、リッツが引き止める。リッツは立ち上がるとルイを見た。

「お前、手投げ爆弾とか持ってるか。あったら俺に全部渡せ。」

 ルイは現状のためか黙って手持ちの爆弾をすべて渡す。

「いいか、お前は前に出るな。お前は、援護だ。」

リッツはそれだけ言うと再びモンスターに向かって走り出した。その後姿を見たルイは、矢筒から矢を取り出すと腰に付けた液体に矢の先端を漬け、弓を引きモンスターに狙いを定めた。先端から滴る液体、その先に居るモンスター。狙いが定まったとき、彼は矢を放った。

大砲の玉と矢がモンスターと近距離で戦うプレイヤー達の援護をする。

ルイは空になった矢筒に矢を装填している。その間も敵のほうを何度も見る。矢を装填し終わると、一本取り出して番えた。そして、狙いを定めるために敵のほうを見たとき彼の目は見開かれた。砂埃の舞う中、黒い物体がゆっくりと姿を現し始めたのだ。

「ゲルファウストだ。」

直後、ゲルファウストの咆哮が戦場を駆け抜けた。

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