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1 廊下に転がる男の人を見つけました

八月某日。

唐突だが、彼女が一人暮らしを始めて約5ヵ月が過ぎた。

彼女こと、結崎琴音ゆいざきことねは、この春上京して近くの大学に通う現役の女子大生だ。

そんな、私の住むアパートは、静かな住宅地に建っている。駅へのアクセスもよく、大学にも近い。おまけに家賃もさほど高くない。琴音の母が、好条件なこのアパートを、即決で選んだのもまだ記憶に新しい。そして、琴音もこの部屋をとても気に入っている。




さて、何故こんな話をしたかを説明する前に彼女の部屋の壁から聞こえる声に耳を傾けていただきたい。


『あっ……やっ……んんっ』


ーーおわかりいただけただろうか


そう何を隠そう、嬌声である。

ここ数日、夜になると、毎夜毎夜この艶かしい女性の声が、壁をすり抜け聞こえてくるのである。

安眠妨害もいいところで、本当に寝れていない。

今だって、ベッドに入ったはいいが、頭で布団をかぶっているのにずっと声が漏れて聞こえている。

正直、文句の一つでもつけてやりたいが、件の部屋のお隣さんは、金髪ピアスでチャラ目のイケイケなお兄さんなのである。

1度すれ違った時も、見下すように睨まれている。

はっきり言おう、怖いのだ。


「まぁ、長期休暇じゃなきゃ確実に言いに行ってるなぁ、大家さんに。」


ポツリと自分に言い聞かせるように、小さくため息を付きながら、琴音は被っていた布団を捲り上げた。未だ聞こえる声を、ひたすら意識の外に追いやりながら、机に放り出してあった小銭入れと部屋の鍵を引っ掴んで足早に部屋を飛び出した。


そろそろ日付も変わった頃だろうが、琴音には関係ない。あのまま、悶々としながら部屋にいるよりも外を歩いてきた方が幾分かましだと思う。

しっかりと鍵を閉めて、いざ散歩だと足を踏み出した瞬間彼女の足は動きを止めた。


ーーなんか、居る!!!


今にも驚きで叫びだしそうな口を必死に押さえつけながら、彼女ははそれをじっと見つめた。

その視線の先には通路を封鎖するようにゴロンと転がる男性が1人。

まるで彼女が散歩に行くのを邪魔しているかのようである。

サラサラの髪に、眼鏡、恐らくは男性。スーツを着ている所を見るとこの人は社会人なのだろうか。

嫌に冷静な琴音の脳は、そんな状況分析を始めているが、取り敢えず放ってはおけないと、その横にしゃがみこんだ。そして、扉を閉めてから握ったままだった鍵と、転がる男性を交互に見つめた後、彼女はその男性を鍵でつついてみる。


――反応は無い


「あ、あのー?だ、大丈夫ですかー?うっ!酒臭い!

酔っ払いか!」


顔を近づけた瞬間香る鼻を突く様な刺激に、琴音は顔を顰める。アルコールの匂いであることは間違いない。

大方、飲みすぎたか、もともと酒の弱い人間か……

どちらにせよ、迷惑極まりない。

どうにか自力で動いてもらおうと、軽く鼻をつまみながら肩を揺さぶってみる。ちょっと嫌そうに身じろぎするから生きてはいるようだ。


「大丈夫ですかー?おーい。」

「うっ、もう無理です……部長…飲めませんってぇ……」

「いや、私あなたの上司じゃないですから!お願いだから、起きてください!」


横向きになっていた体をゴロンと仰向けにして、また少し揺する。

廊下のライトに照らされたからか、少し眩しそうにしながらも、ゆっくりとその瞼は持ち上がった。

半分まで持ち上がったところで、それ以上の力は無いようで、そのまま瞳だけが動いて琴音を向いた。

あ、綺麗な目だな、なんて琴音は思いながら見つめている。

今は半目だが、優しげな目だ。

そんな彼は、琴音と目が合うとむくりと起き上がった。

酔いのせいだろうか、顔が少しだけ火照っているように見える。

そして、その双眸は、琴音に向けられ、もう穴でも開くのではと思うほどに、見つめてくる。

誰かと顔を合わせて会話することはあっても、ここまでじっと顔を見つめられることなんて今まで一度だってない。

琴音の鼓動は、少しだけ早まって、彼女はゴクリとつばを飲む。

しかし、そんなことお構い無しといった様子で、また彼はこてんっと首をかしげながら、顔を近づけ、眉を寄せて口を開いた。


「えーっと……だれ、です?」

「………それこっちのセリフですー!!」


その顰められた顔と、台詞に、琴音は思わず叫んだ。

処女作です。お見苦しい文章もあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。

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