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信長の猫  作者: ギリギリ伯爵
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絆と陰謀

 黒猫のぶながに妖術の指南を申し入れた隠神刑部いぬがみぎょうぶであったが、ただ親切でそんなことを言い出したわけでは無い。

 四百年ぶりに封印から解放してもらった恩義などでも無い。

 その理由・目的は、黒猫のぶながと蘭丸の間に存在する“繋がりの力”を手に入れるため。

 “個”の力を何倍にも引き上げる神秘の力。

 その力の名は“絆”。

 隠神刑部は、それを欲したのだ。





 隠神刑部は封印されていた四百年間、八十八匹の配下を従えた自分が、たった二人の人間風情に負けた理由をずっと考え続けていた。

 牛若と鬼若に有って、自分達には無かったモノ。

 人間が持っていて、妖怪もののけ達が持たなかったモノ。

 その答えを今、黒猫のぶながと蘭丸が見せてくれた。



 基本的に、妖怪もののけだろうが動物けものだろうが、戦いを勝ち残った強い“個”が、負かした弱い“他”を支配する。それが自然の摂理であり、絶対の真理であり、法則である。

 強者が弱者を支配するのだ。それは、人間も変わらない。

 だが“絆”は、その法則をねじ曲げる。

 ねじ曲げられた法則は、神秘の力で“個”の能力を飛躍的に引き上げるのだ。


(きっと、そうに違いない。この仮説で間違いない。

 ――黒猫のぶながと蘭丸を見よ!

 大した法力も無さそうな青二才が、鬼を封印するほどの陰陽術を使う。“絆”の力で能力が引き上げられているに違いないのだ。

 そして、その青二才が主と認め付き従っているのは、非力な仔猫。

 黒猫のぶながの前世は人間で、強い武力を持つ権力者だったようだが、それが何だというのだ? いくら記憶が有るからと言っても、今は猫ではないか。

 普通は、人間が猫に従うなど有り得ない。これは、自然の摂理・法則からすれば歪な関係だ。

 だが、この歪な関係こそが“絆”の本質であり、自然の摂理・法則をねじ曲げ、本来“個”が持ち得ないはずの力をもたらすのだろう。


 それに、黒猫のぶながに感じる“異質な妖気”も、育て方次第では強力な妖怪もののけに化けるかも? そんな期待を感じさせる。

 

 黒猫のぶながと蘭丸の“絆”の力を我が物とし、あの二人を利用して四百年間で失った儂の力を再び取り戻すのだ!)


 隠神刑部は、秘かにほくそ笑んでいた。





(――だがしかし、気になる事も有る。

 事は慎重を期さねばなるまい。

 あの、とてつもなく強く感じた牛若と鬼若の二人も、身内である兄とやらにほろぼされたという。

 この世には、上には上が存在するものなのだ。

 それに、黒猫のぶながに転生の呪いを施した“何者”かの存在。

 警戒するに越した事は無いだろう。

 

 妖怪もののけの中には人間嫌いのモノも多い。

 黒猫のぶながを狙ってるといるという怨霊や悪霊の事も有る。

 ……誰か協力者が必要だな。

 少くとも、儂が嘗ての力を取り戻すまでは)


 さて、どうしたものか? 

 ――そこで隠神刑部は、協力者としてうってつけの存在を思い出した。


(そうだ! ひとつ“あの方”に話しだけでも通しておくか?

 “あの方”は、妖怪もののけの中では、珍しく人間と関わりの多いお方。

 上手くすると、興味を持ってくれるやもしれぬ。

 ダメ元で頼んでみよう)


 そうと決めた隠神刑部は黒猫のぶながに告げる。


黒猫のぶなが殿、妖術の修行を始める前に、儂はふるい知り合いに封印から解かれた事を報せに行きたく存じます。

 暫く留守にするが、何も無ければ数日で戻って来るゆえ、かまいませんかな?」


 そして、翌朝には旅立って行った。

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