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信長の猫  作者: ギリギリ伯爵
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天狗と悪魔

「今の話、聞き捨てならん!

 四界を乱し、人界を侵すなど、あってはならん狼藉。天魔降臨など、このわれが許さん!」


 大見得を切って登場した法眼だが、かなりの深傷ふかでを負っているのは誰の目にも明らかである。

 全身の皮膚は裂け、左の腕と翼はあらぬ方向へひしゃげている。“奥義・豪雷撃覇”と“地獄の業火”との反応爆発を浴びて全身は焼け焦げ、ブスブスと煙を上げていた。

 引き連れていた側近のからす天狗たちは一人も見当たらない。被爆して全滅したのだろうか?


「アラ。アナタが許さなケレば何だと言ウノ? 今のアナタに、アタシ達をドウコウ出来るとは思えナイのだケれど?」

「まっタクダ。妖怪ゴトキが、身ノ程ヲ知レ!」

「マアマア、お二人とも。“暴竜アバド”相手に生き残ったダケで大したモノでショウ?

 ワレワレの妖怪に対スる認識を改メた方が良イと思いマスよ?」


 満身創痍の法眼に、飽くまで見下した態度のタルテとバエル。それに対し、法眼の実力を認め警戒を強めるフェレス。


 この三悪魔の実力は、いまだ底が見えない。

 もし仮に、悪魔自体に戦闘力が無い、もしくは“契約”に縛られ人界では力を奮う事が出来ないのだとしても、今また“暴竜アバド”クラスの魔物を召喚されでもしたら法眼の敗北は確定するだろう。だが、法眼は口元に笑みさえ浮かべている。


「確かに、我(ひと)りならばこの場を収めるに、ちと骨が折れよう……」

「法眼様!」

「お言いつけ通りに!」

「うむ。皆、ご苦労だった」 


 側近の小天狗・烏天狗が法眼の元に戻って来る。

 彼らは法眼の命令を受けて日本各地に伝令に飛んでいたのだ。


「父上~。何ごと~?」


 先ず最初に現れたのは法眼の娘“女天狗・天逆あまさか”。

 法眼に似ず、小柄であどけない顔立ち。

 その容貌は、母親である狐の妖怪“天狐・たまもえ”に似て白い肌。茶髪の曲髪(癖っ毛)に狐耳。背中の翼は、黒が当たり前の天狗族には珍しい白。

 身に纏う薄衣は短く、健康的な脚線美を惜し気もなく晒した小ぶりの尻に、フサフサの狐尻尾がフリフリと揺れている。

 眠た気な目をした美少女。 

 可愛らしい見た目に反して、法眼譲りの実力派。次世代の天狗界を担う若手筆頭。


「法眼よ、何だそのざまは?

 おぬしがワシに助けを求めるなど、千五百年ぶり位かの?」


 次に現れたるは“愛宕山 太郎坊”またの名を“愛宕権現”“えんの行者ぎょうじゃ小角おづぬ”。

 時代により様々な名で呼ばれる老天狗。

 その正体は大天狗の始祖“さるたひこのみこと”。

 古事記にも登場する天狗界の伝説レジェンド


「法眼殿、竜が現れたとはまことか? ぜひ一度喰ろうてみたいと思っておったのだ。酒はあるで、今宵は竜肉でうたげを催そうぞ!」


 酒樽を抱えた大勢の烏天狗を従えて現れたるは“比良山 次郎坊”。

 大きな腹に太い手足。がっしりとした体格の巨漢。彼の悪食あくじき趣味は妖怪もののけ界隈では結構知れ渡っている。


 その他、続々と大天狗が集結した。


 ・愛宕山 太郎坊(猿田彦尊)

 ・比良山 次郎坊(悪食巨漢)

 ・飯綱 三朗(飯綱の法・筒狐つつぎつね使い)

 ・相模大山 伯耆ほうき

 ・英彦山 豊前ぶぜん

 ・秋葉山 三沢坊

 ・大山 伯書坊

 ・葛城山 高間坊


 これら八大天狗に“鞍馬山 僧正坊”こと鬼一法眼と、その娘“若手筆頭・女狐天狗 天逆あまさか”の二名を加えた、キラ星のごとく輝く大天狗十傑。

 人呼んで“天狗十大星(じゅうおおせい)”!


「クっ! 妖怪風情がナメオッテ!」

「代皇様、ここは一旦退いた方がよろしいカト?」

「ソ、ソウネ。新たな“契約者”ヲ探し、出直した方が良さソウね。光秀とノ契約は、アバドの召喚デ完了してシマったわ。バエル様、戦力ヲ建て直しまショウ!」

「下等な妖怪ドモガ! 覚エテオレ!!」

 

 る気満々のバエルをタルテとフェレスが説得なだめすかし、悪魔はその場から煙となって消えた。

 

 ――明智光秀の謀反は、織田信長を第六天魔王降臨の牲贄にせんがための悪魔によるはかりごとであった。

 哀れな光秀は、悪魔にそそのかされ“契約者”になってしまっていたのだ。

 光秀が得たモノは、信長暗殺の成就と三日天下。その代償は謀反人の汚名と、地獄での永遠の苦しみ。

 悪魔に誘惑たぶらかされ“契約者”となってしまった者の末路は悲惨しかない。


 悪魔が消えた跡には硫黄の臭いが立ち込めていた……。




 ――――




「ワシら何もせなんだが、ヤツら勝手に消えおったな?」

「……皆の衆、我の急な召集に応じてくれて礼を言う。かたじけない」


 法眼が天狗十大星のメンバーに頭を下げるとグラッと落下しそうになり、側近の烏天狗達が慌てて法眼に寄り添い支える。


「なんのなんの、どうせ暇だったでな。気にするでないぞ。それより、だいぶやられたようだの? 大丈夫か?」

「父上、ボロボロ~。超ウケる~」

「その言葉(づか)い、何とかならぬのか……いや、中々に手強き竜にござった。少々手こずりましたわい」

「それはそうと法眼殿、その竜の肉は残っておるのか?」 

「我と同様に、だいぶ焼け焦げましたがな。次郎坊殿が欲しがるだろうから、ちゃんと残しておきましたぞ」

「おお! すでに焼けておるのか? それは好都合。法眼殿、恩に着ますぞ」


 暴竜アバドの死骸はすでに烏天狗達によって松山の隠神屋敷に運ばれている。


「隠神殿、この者達のない頼めるかな?」


 隠神に松山への道案内を頼みつつ

『あの古酒は、隠しておいて下されよ?』

 と、こっそり古酒のキープを念押しする法眼。


 取り合えず、天狗十大星と配下の烏天狗達は松山の隠神屋敷に向かう。しかし、法眼、天逆、上天狗・下天狗、蘭丸はその場に残っていた。

女天狗の鼻は長くないそうです。

本作の女天狗・天逆の鼻も長くありません。

むしろ、鼻は低いかも?

外見年齢は15~16歳をイメージしてます。

実年齢は200歳位でしょうか?


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