第14話 ヒーローの復活(中編-2)
ファイザードとブリザデス、彼らの息が合った連携攻撃に追いつめられる青木ゆりか……。だがその瞳は決して闘志を失ってはいない。
「先に言っておくわ。アナタ達を倒すのなんて……私一人で十分よっ!」
全身傷だらけになりながらも不敵な笑みを浮かべる。この期に及んで、何か考えがあるとでも言うのか……。
劣勢に立たされながらも挑発的な言葉を吐く彼女の態度は、完全に勝者の余裕に浸りきっていた敵の怒りに火を点けるには十分だった。
『貴様ぁぁあああっっ!! そのザマで、よくもそんなハッタリが噛ませるなぁっ! んんんんんーーーーっ! 許さぁぁあああーーーーーんっ!! 本当に出来るものなら、やって見せろぉっ! 後で涙目になって命乞いしても、その時は手遅れだぞぉぉぉおおおおおおーーーーーーっっ!!』
ファイザードが激昂して大声で叫び、その勢いのまま二体がゆりかに向かって突進していく。恨み骨髄に徹するとでも言うべきか、完全に頭に血が上ったファイザードは、目の前の少女を徹底的に痛め付けて、屈辱的な死を与える事しか考えられなくなっていた。
ゆりかは彼らが襲いかかってくるのを待っていたかのようにニヤリと笑うと、野山を駆ける豹の如く軽快に飛び跳ねて、コンテナの迷路に素早く身を隠す。
『また同じ手を使うつもりかっ!? つくづく学習能力の無い女だっ!』
『バカの一つ覚えなど、俺たちには通用せんっ!』
二人はそう言って、コンテナの迷路に身を隠した彼女を追いかける。不意打ちされても、先程と同じように防げるという確信があった。
彼らがバーニアを噴射させて通路を高速移動し、やがて袋小路に行き当たると、そこにゆりかはいた。膝をついたまま疲れ果てたようにグッタリとうなだれている。
そんな満身創痍の彼女に、ファイザードが飛びかかっていった。
『死ねぇぇえええっ!! エア・ナイトっ!』
そう叫んで全力を込めた拳を振り下ろした瞬間、彼女の姿が霧のように散って、影も形も残らずに消えてしまう。
『……なっ!?』
少女の姿が突然消えた事に、声を上げて動揺するファイザード……予想外の出来事に困惑するあまり、冷静に対処する事が出来なかった。
半ばパニックに陥りながら慌てて周囲を見回していると、彼のすぐそばに積まれているコンテナの頂上から、ゆりかが颯爽と飛び降りてきた。
「貫けぇっ! メテオ・ファングッ!」
ゆりかが槍を真下に向けたまま大声で叫ぶと、槍の先端がドリルのように高速で回転する。落下時に彼女の全体重を乗せて威力を増した竜槍ドラグニールは、真下にいたファイザードをそのまま縦一文字に貫いた。
『ブッ……ブリザッ……グァァアアアアーーーーーッッ!!』
その一撃が致命傷となり、相方の名を言い終わらない内にファイザードの体は爆発する。今日ここで命を落とす事は、彼にとっては完全に想定外だったのだろう……その声は何処か無念の思いを漂わせていた。
バラバラに砕け散って物言わぬ鉄クズと化した相方を見て、ブリザデスはぼう然とその場に立ち尽くす。
『オッ……オオオオォォッッ!! ファ……ファイザードオオオォォッッ!!』
長年連れ添った相方の死によほど深い悲しみを抱いたのか、その名を叫びながら全身をわなわなと震わせて慟哭する。その声には、まるで涙を流して泣いているかのような強い感情が篭っていた。
……メタルノイドが身内の死に声を上げて悲しむ姿など、これまで一度も見せた事が無かった。彼らが連中の中でも特別な存在だとしても、その光景は見たゆりかに違和感を抱かせるほど珍しい物だった。
むろん人間味がある事を知ったとしても、それを理由に彼らを許す考えはゆりかには毛頭無かったのだが……。
「実戦でやるのは初めてだったけど……うまく行ったみたいね」
ゆりかがホッと一息ついて、安堵の表情を浮かべる。
ファイザードがゆりかだと思って攻撃したのは、彼女がバイド粒子で作った幻影であった。彼はまんまと相手の策に嵌っていたのだ。
彼女にとっては咄嗟に思い付いた一か八かの賭けであったが、頭に血が上った相手には効果抜群だったようだ。
『……クッ』
作戦が成功して安心しているゆりかとは真逆に、相方を失った悲しみのあまり全身を震わせていたブリザデスは、その怒りの矛先を向けるかのように、彼女の方へとゆっくりと振り返った。これから相方の弔い合戦をしようとするであろう事は想像に難くなかった。
『貴様ぁ……勘違いするなよぉ? 我々は確かに、二人での連携攻撃を得意とする。だがだからといって、一人になれば弱くなるという訳ではない……むしろ逆だ。我々は……一人で戦った時の方が……数倍強いッ!!』
怒気を含んだ口調で言い放つと、直後ブリザデスは後退してゆりかから距離を取る。
「一体何を……っ!?」
すぐに敵が襲いかかってくると踏んでいたゆりかは、予想外の行動に一瞬面食らった。感情に振り回されず理性的に行動出来る性格となれば、彼女にとっては何ともやりにくい相手だった。
敵がどんな手を仕掛けてくるか読み切れず、ゆりかは露骨に警戒して身構える。ファイザードのように上手くは行かないだろうという焦りが心の内に広がっていく。
『真の地獄という物を思い知らせてやろう……装甲展開ッ!!』
掛け声と共にブリザデスの体の至る所にある装甲がハッチのように開かれ、中から排気口のような物が姿を現す。直後そこから白いガスが大量に噴出され、周囲のあらゆる物体が凍り付いてゆく。それは触れた物を瞬時に凍結させる、液体窒素のような冷凍ガスだった。
「くうぅぅっっ!!」
周囲の気温が急激に低下し、あまりの寒さにゆりかはたまらずコンテナに飛び乗る。
いくら常人より肉体が強化された装甲少女と言えども、冷気に対して無敵という訳では無かった。
彼女が寒さに震えている間に、一分と経たずにコンテナ置き場は幻想的な白い氷の迷宮へと姿を変えてしまった。
氷点下は五十度、バナナで釘が打てる気温に達していた。
その氷の大地を、ブリザデスが得意げにふんぞり返るようにのしのしと歩く。まるでここは俺様の庭だ、とでも言いたげだった。
『見たか……これが俺の最終奥義、氷結地獄の世界ッ!! この氷の迷宮で俺に勝てる者は……誰もいないッ!!』
言い終えるとほぼ同時に、ブリザデスは目にも止まらぬ速さでゆりかに襲いかかった。
「うぁぁああああっっ!!」
腕に仕込まれていた折り畳み式のブレードが、すれ違いざまに彼女の体を鋭く切り裂いた。真っ赤な血飛沫が悲痛な叫び声と共に宙を舞い、氷の大地を赤く染める。
切り裂かれた痛みでコンテナから落下したゆりかに、ブリザデスはなおも執拗に襲いかかる。このままじわじわと彼女をなぶり物にし、相方が味わったのと同じ苦痛を味あわせて死に至らしめるつもりでいた。
(動きが……読み切れないっ!!)
これまでとは次元が違う敵の速さに、彼女の中に焦りが募る。
エア・ナイトは本来スピード重視の性能だ。これまで彼女より早く動ける敵は一人もいなかった。せいぜい破壊者モードとなったオーガーが、彼女と互角の速さで動き回れただけだ。
だが今、この氷の迷宮で自在に動き回れるブリザデスの速さは、エア・ナイトのそれを遥かに上回っていた。それは彼女の専売特許を奪う行為にも等しかった。
一人で戦った時の方が数倍強いという彼の発言は虚構でも何でもなく、身を以て証明される事となった。
もはや目で追う事も出来ずに、ゆりかはその身を何度も敵の刃に切り裂かれた。
「ハァ……ハァ……」
全身の至る所に深い傷を負い、苦しそうに息を切らしている。今の彼女は、槍を支えにして立っている事すら危うい状態だった。先程二人に追い詰められた時以上にボロボロに傷付き、その命は今にも尽きようとしている。
「ゆりか君……っ!!」
そんな彼女の姿を目にして、ゼル博士が苦悶の表情を浮かべる。
若き乙女の白き柔肌が、鋭利な刃物で傷付けられる姿を見せ付けられて、いたたまれない気持ちになっていた。
だが、彼女を連れてここから逃げようと心に決めた博士が前に一歩踏み出しかけた時、その行為を制止するかのようにゆりかが博士の方に目をやった。
彼女の瞳には、声には出さずともまだやれる、手を出さないでくれ、と言いたげな強い意思が感じられた。
青木ゆりかは、無策のまま危険に身を投じるような性格ではない。恐らく彼女には何か考えがあったのだろう。
まだ勝利を諦めていない彼女の意思を尊重し、博士は大人しく引き下がる事しか出来なかった。
……それでも彼女が深く傷付き、満身創痍になっている事実に変わりはない。
風前の灯となった彼女の姿を目にして、ブリザデスが勝ち誇ったように語りだす。
『俺たちと、ここまで渡り合えた事は褒めてやる……賞賛に値しよう。俺に奥の手まで使わせたのだからな……エア・ナイト……青木ゆりかと言ったか? お前は大した女だよ。ファイザードを殺した事は許せんが、それでもここまで戦い抜いたお前の健闘ぶりは、一人の戦士として記憶に留めておいてやる。だがお前たちの力では、我々メタルノイドには絶対に勝てん……勝てん理由があるのだ』
一旦攻撃の手を休めると、まるで講釈でも垂れるかのように長々と語りだす。
戦況的に優位に立った事で落ち着きを取り戻したのか、相方を殺された直後のような感情的な口調ではなく、敵の戦いぶりを褒め称える余裕すら見せていた。
よほど自分の奥義が破られる事など無いという、絶対の自信があったのだろう。
『我々と、お前たち装甲少女との決定的な違いを教えてやる。それは……兵士としての覚悟だっ! 我々バロウズは、軍隊の出身……かつて母星を守るための過酷な大戦を経験し、幾多の修羅場をくぐり抜けて、ここまで戦い抜いてきた精鋭中の精鋭なのだよっ! ヒーローだか何だか知らないが、何の苦労もせずにいきなり力を手に入れただけのお前たち小娘とは……戦いに臨む覚悟が天と地ほど違うっ!!』
……ブリザデスが得意げにそこまで語った時、彼の言葉に聞き入っていたゆりかの口元が微かにフッと笑った。
「覚悟……ですって? 笑わせてくれるじゃない」
強気の笑みを浮かべながら言うと、体をよろめかせながらも力を振り絞って立ち上がろうとする。本来彼女の方が不利な状況に追い込まれている筈だが、その事を感じさせないほど自信に満ちた口調だった。
それは何か策があっての事なのか、それとも決して敵には屈しないという覚悟の表れなのか……。
「アナタ達が過去にどんな戦いをしたかなんて知らないし、興味もない。でも私たちだって、決して遊んできた訳じゃない。私たちだって、これまで何度も熾烈な戦いを味わってきたし、そのたびに死に掛けてきた……それなのに戦いに臨む覚悟が無いなんて、絶対に言わせないっっ!!」
気迫に満ちた言葉と共に、その目がグワッと見開かれる。
ゆりかは一転して真剣な顔付きになると、迷う事無く右腕の装置に手を伸ばした。
「私の覚悟……見せてあげるわっ! スタンバイッ!! 粒子全放出モード……発動ッ!!」
まるで全てを捨て去る覚悟を決めたかのような力強い叫びと共に装置のボタンに指を触れると、彼女の姿に変化が訪れた。
背中のバーニアからは青白い光が蒸気のように噴出し、天使の翼のようなオーラを形作ってゆく。更にそこから大気に散ったキラキラ光る粒子が彼女の皮膚に吸い込まれるように付着していき、体全体が青白い光に包まれる。
……その姿は、あたかも脱皮した蝶のように幻想的で美しかった。
「エア・ナイト……ブースト・モードッ!!」
明らかに新たな力を手に入れたらしき姿になると、直後ゆりかは凄まじい速さで走り出した。
それはこれまでの彼女とは比べ物にならない、まさに影すらも置き去りにする程の……音速の域に達した、あまりにも圧倒的過ぎる速さだった。
『ば……馬鹿なぁっ! 何だぁっ! 何なんだ……この速さはぁぁあああっっ!!』
もはや目で追う事すらままならない彼女の速さに翻弄され、狼狽するブリザデス……彼にとっては完全に予想だにしない事態となった。
この氷の迷宮においてはエア・ナイトより素早く動き回れるブリザデスであったが、今の彼女は更にそれを上回る速度で走り回っていた。
それはスピード重視の性能という彼女の十八番を、名実共に敵から奪い返す形となったのだ。
『ググッ……!!』
エア・ナイトに全く太刀打ち出来ない状況に、ブリザデスが悔しげに地団駄を踏む。
奥の手を引っ張り出してもなお相手にスピードで上回られては、もはや打つ手など無いに等しかった。
ひとしきり周囲を走り回りながら敵に対抗手段が無い事を悟ると、ゆりかは戦法を切り替えるかのようにすぐさま立ち止まって、ブリザデスに槍を向けて構えた。
「貫けぇっ! ブースト・ファングッ!!」
大声で技名を叫ぶと、槍の先端をドリルのように回転させたまま前方に向かって高速で突進する。
青白い光の流星と化したその一撃を、ブリザデスは避ける暇すら与えられずに貫かれて、どてっ腹に致命傷となる大穴を空けられた。
『グアァァッ!! エッ……エア・ナイトッ!! 見セテモラッタゾ、オ前ノ覚悟……見事……ダッ……ガァァァアアアーーーーーッッ!!』
腹を貫かれた姿のままその場に立ち尽くしていたブリザデスは、やがて何か言いかけようとして、言い終わらぬ内に爆発して跡形もなく消し飛んだ。
……これまで激戦を繰り広げた相手として彼なりに思う所があったのか、吐きかけた最期の言葉は、彼女の戦士としての誇りや覚悟を認めたようにも見えた。
そして爆発の直後、エア・ナイトの右腕の装置から機械音声が流れ出す。
『3……2……1……タイム・アウト。粒子全放出モード、強制終了』
モード終了を知らせる音声とほぼ同時に、彼女の全身を包んでいた青い光のオーラは消え失せて、通常のエア・ナイトの姿へと戻っていった。
ブーストモード……。
エア・ナイトのバイド粒子を全放出する事によって発動する彼女の新しい力。
全身をバイド粒子のオーラで包まれる事により物体の運動エネルギーに干渉し、速度が十倍に跳ね上がる究極の形態。最大持続時間は20秒。
だが全てのバイド粒子を一度に使い切るため、もしこの力を使って敵を倒せなければ、逆にこっちがやられてしまう。
それはまさに諸刃の剣……最後の切り札と呼ぶに等しかった。
ルミナを失った悲しみでさやかが倒れた後、二度と彼女が目覚めない事を覚悟したゆりかは、一人で戦い抜く決意の表れとして、このリスクのある捨て身の技を習得したのだ。
「ハァ……ハァ……」
敵を倒して安心した事により緊張の糸がフッと切れたのか、ゆりかは息を荒くさせたままガックリと地に膝をついた。変身は解除されていないものの、もう戦う力は微塵も残ってはいない。
ただでさえ戦いで受けた傷で消耗しきっていたにも関わらず、その上さらにバイド粒子を放出し尽くした事で、彼女はもはや自力で立ち上がる事すらままならなくなっていた。
完全に精も根も尽き果てた、出涸らしの状態だ。
それでも今の彼女に後悔の念は無い。持ち得る力を全て出し尽くして目の前の敵を打ち倒したという、ある種の清々しい満足感が心の内に広がっていた。
ブリザデスが死んだ影響か、冷凍ガスによって氷の迷宮と化していた一帯は、氷が解けてすぐに元通りのコンテナ置き場になる。
「ゆりか君っ!」
安全な場所に隠れて戦いを見守っていたゼル博士が、すぐさま彼女に駆け寄る。
その表情には、彼女が敵を倒せた事に対する驚きと歓喜が入り混じったような、何とも奇妙な笑顔を浮かべていた。
「まさか本当に、言葉通りに二体とも倒してしまうとは……全く、君は大した娘だよ」
彼女の健闘ぶりを称え、労いの言葉を掛けながら肩を貸す。
不利な状況に追い込まれるのを見て、博士は内心ゆりかが敵に殺されてしまうのではないかと懸念を抱いていた。だからこそ見事に有言実行を果たした彼女の戦いぶりに感激し、称賛を述べずにはいられなかったのだ。
博士にとって今の彼女は、まさに勇者と呼べる存在だった。
博士に肩を借りてゆっくりと立ち上がりながら、ゆりかも賛辞の言葉に答えるかのようにニッコリと微笑んだ。
「私、決めたから……さやかがこの先ずっと起きなくても、さやかの分まで私一人で戦うって。さやかが守りたかった物、守ろうとした物、全部私が守るんだって……」
……そんな決意の言葉を口にした彼女の笑顔は、今にも消え入りそうな儚さを漂わせていた。顔では笑っていても、まるで心の中では泣いているかのようだった。
「ゆりか君……」
これから先起こる全ての苦労を、自分一人で引き受けるという何処までも自己犠牲的な……悲壮な覚悟を決めた彼女に対し、博士は掛ける言葉が見つからなかった。
年端も行かぬ少女を戦いに巻き込んでおいて、今更どんな気の利いた言葉を掛けられるというのか。どんな感動的で美しい言葉を並べたとしても、それは中身を伴わない、空虚な響きにしかならないだろう。
それでも……それでも少女を戦いに巻き込んだ責任ある身として、博士はせめて出来うる限りの協力をして、彼女を全力で支えていこうと……そう無言で決意せずにはいられなかった。
ゆりかが博士に肩を借りながら、二人がよろよろとコンテナ置き場から出ていこうとした時、突如彼らの前にある空間が、まるで熱で凹んだ鉄板のようにグニャァッとおかしな方向に歪みだした。
『……まさか、ファイザードとブリザデスを一人で倒すとはな。エア・ナイト、青木ゆりか……実に見事な戦いぶりであった。褒めて遣わそう』
その声が発せられた空間が虹色に眩く光ると、エアコンの室外機のようなブゥーーッという奇妙な低い音と共に空間の色が変わり、やがて一体のメタルノイドが姿を現した。
それは『光学迷彩』と呼ばれる、光を捻じ曲げて姿を透明にする兵器が解除されたかのようであった。
……これまでのように小型のブラックホールでワープしてきた訳ではない。そのメタルノイドはゆりか達が戦っている間、ずっと姿を隠したままそこに立っていたのだ。
外見は先に倒された二体とよく似ており、黄色のカラーリングをしている。見るからに彼らと同型機であると容易に判断できる姿形をしていた。
「馬鹿なっ!? メタルノイドがもう一体だと……? 貴様、何者だっ!」
予想外の事態に困惑しつつも、それを気取られないように博士は精一杯気迫に満ちた声で問いかけた。
『フフフッ……我々は三体で一体のメタルノイド……我々が合体してワープしてきた時、私だけは光学迷彩で姿を隠していたのだ。貴様ら人間に、敵は二体だけだと思わせて、全ての力を使わせる為にな……お前たちはまんまと私の策に乗せられたという訳だ』
博士の気迫を嘲笑うかのように、メタルノイドが余裕たっぷりに答える。
『私は No.005C コードネーム:エルダー・トライヴンッ! ……三兄弟の長男よっ!』




