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装甲少女エア・グレイブ  作者: 大月秋野
第四部 「Q」
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第114話 悪魔の招待状

 敵を倒した余韻にひたるように、刀を握ったまま立ち尽くしていたミサキだったが……。


「いけないッ! みんな、死にたくなかったら今すぐその場に伏せるんだぁっ!」


 いきなり大きな声で、重大な危険が迫っている事を仲間に知らせる。彼女の言葉を信じて他の三人が地面に伏せると、ミサキ自身もすぐに身を伏せる。


 直後はるか空の彼方から、トマホークと呼ばれる巡航ミサイルのような物体が高速で飛来して、一直線に工場に激突する。工場はダイナマイトが点火したように一瞬にして巨大な炎に呑まれた。

 強烈な爆風と共に大量の破片が周囲に飛び散ったものの、全員地面に伏せていたために、怪我をした者はいなかった。


 やがて爆風が止んだ後に四人が立ち上がると、工場は跡形も無く消滅して、ただ瓦礫がれきの山だけが残った。


「バロウズ……敵の手に渡るのを阻止するために、工場ごと爆破するとは……」


 ミサキは技術流出を防ぐために手段を選ばない相手の徹底ぶりに、戦慄を通り越して感心すら覚えた。


  ◇    ◇    ◇


 戦いを終えて変身を解いたさやか達が村に帰ると、救出された村人達は、ゼル博士と共に一足先に戻っていた。


「アコっ! 父さん、無事に帰って来れたぞっ!」

「パパ、お帰りーーーーーーっ!!」


 アコが、父親と思しき一人の男と抱き合う。他の村人も、ある者は家族と、ある者は友人と、再会を喜ぶように強く抱き合った。


 生きて帰る事を願いながらも、それが本気で叶うとは思っていなかった。自分達はこのままサイ男に拷問されて死ぬのだろうと心の何処かで受け入れて、諦めていた。はかない望みが叶えられた嬉しさのあまり、感動の涙が止まらなくなる。

 彼らはだいの大人である事も忘れて泣き続けた後、最後は心の底から感謝するようにさやか達に何度も頭を下げた。


「お姉ちゃんっ! 約束守ってくれて、ありがとう……本当にありがとう!」


 アコはかけがえの無い家族を救ってくれた少女に、お礼の言葉を述べる。元気にはしゃぐあまり、脱げそうなほど強くスカートのすそを引っ張った。

 さやかはスカートを必死に手で押さえながら、うまく言葉を返せず、ただ照れ臭そうに赤面しながら苦笑いする。


 歓喜一色に包まれた村であったが、そんな幸せムードに水を差そうとするように、ブォォーーッという異音が鳴り響く。その場にいた者全員が一斉に振り向くと、音が聞こえた方角から、巨大な何かが高速で迫ってくる。


「……メタルノイドッ!!」


 向かってくるそれを目にして、さやかの顔が険しくなる。敵を倒したばかりだというのに、また戦わなければならないのかと内心嫌気が差す。

 聞こえたのはバーニアの噴射音に他ならなかった。


 四人の少女は戦いに備えるようにサッと身構え、村人の表情は再び恐怖と絶望に染まる。もう勘弁してくれとか、俺たちが何をしたんだとか、そんな言葉が飛び出す。


 その者は背丈6mほどの角ばった人型ロボットで、体型は痩せており、全身は迷彩のような緑色に塗られている。両腰には彼のサイズに合わせたサバイバルナイフがしてあり、グリーンベレーと呼ばれる兵隊のような印象を見る者に与える。


 男はさやか達から数メートル離れた地点まで来ると、バーニアの噴射を止めて、その場に立ち止まった。


『ライノスを倒した事はめてやろう……だが喜ぶのはまだ早いぞッ! 何故なら、今日からこの地は俺の管轄となるからだッ!』


 村人達に、訪れたのは束の間の平穏に過ぎないのだと冷酷な現実を突き付ける。


『赤城さやか、その仲間たちよ……貴様らに挑戦状を叩き付けるッ! 明日の昼、○○山にある洞窟に来いッ! そこで俺と勝負してもらうッ! 俺はNo.016 コードネーム:アンブッシュ・バトラー……俺を倒さぬ限り、この地に真の平和が戻ってくる事など無いと思えッ!!』


 ……男の口から発せられたそれは、まさに悪魔の招待状だった。

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