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ギリギリ義理の妹  作者: 35
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その4 甘える妹

「母さん、俺も家事手伝うよ」


俺は母さんに提案した。


「あら、別に気にしなくていいのに」


「俺はここに来るまでは、普通にご飯作ったりしてたし、自分のことくらいは自分でやってた。慣れるまでは、かえって迷惑かと思ったから様子を見てたけど、教えてもらえば俺も手伝う」


俺の母も、母さんと同じく働いていたので、自分のことを自分でやるのは普通だった。


だがここに来てからは、母さんがほとんど家事をして、母さんが忙しければ水鳥に任せていて、かなり時間にゆとりがあった。


このままだと、家事をしない習慣が身につきそうで、かえって危ないと思ったのである。


「なるほど、お母さんが大変だから、兄さんが手伝おうということか」


あごに手をあてて、水鳥が納得顔で顔を振る。


「水鳥も賛成してくれるのか?」


「意見は悪くない。私も、頼まれない限りはほとんど自分からやろうとはしなかったから。さすがだ兄さん。8年ぶりに兄さんがいいことを言ったな」


「俺そんなにくだらないことしか言ってなかったかな? まぁいいや、協力し合おう」


そう言って、手を出して握手を求めた。俺を嫌っている水鳥が、俺の意見に対して賛成してくれるのは珍しい。少しでも距離が縮まったのかと安心する。


プイッ。


だが、握手には目をくれず、顔を背けられてしまった。


「アイディアだけはもらう。だが、お母さんを手伝うのは私だけでいい。兄さんは何もするな」


「あら~? どうして水鳥ちゃん。手伝ってくれたほうがいいでしょ?」


「嫌だ。兄さんに料理を作らせたら大変なことになるに決まっている」


「料理の内容が心配なのか? 俺はちゃんとお母さんに教わってるから、男料理じゃないぞ」


「私たちの食べる料理に、睡眠薬や媚薬を入れて、何かする気だ。ああ、気持ち悪い」


「その発想が気持ち悪いだろう。どこから、睡眠薬と媚薬をもってくるんだよ」


「そして、残り物を食べるつもりだろう」


「俺はどれだけ飢えてんだよ」


「それに、洗濯だって心配だ」


「ああ、それは確かに俺がやるのはまずいか」


年頃の女の子が、同世代の男子に下着を触られるのは嫌だろう。


「私たちの下着を……」


「何だ? 別に持っていったり、売りさばいたりはしないぞ」


「食べるつもりだろう?」


「だからどれだけ飢えてんだよ。レベルが高すぎるだろう」


「女性には飢えてるはずだろう」


「うまいことを言ったつもりか?」



「それに、掃除だって心配だ」


「掃除こそ何もないだろう。掃除するだけなんだから」


「合法的に私たちの部屋に入り、匂いを堪能しつつ、自分の香りを残していくつもりだ」


「俺はいったい水鳥の何なんだよ。もう少し普通の考えをしてくれ。世の中は複雑だけど、水鳥が思っているよりは単純にできてるよ」


世間を色眼鏡で見すぎである。


「水鳥ちゃん。あまり健吾くんを悪く言っちゃ駄目よ。そんなことをしない人は分かってるでしょ」


母さんが、水鳥をなだめる。もう少し早く止めて欲しかったが、そこまで文句も言えまい。


「せっかく兄さんがいるんだから、もう少し甘えればいいじゃない」


「兄さんに甘えろと? その代価に何を求めてくるか分かったものじゃない」


「そんなことないわ。兄さんが妹を甘やかすのは当然だもの。そこに対価は発生しないわ」


「なるほど、つまり、ただで兄さんを好きに使えるということだな」


「そういうこと♪」


「いやいや、俺の知ってる甘えると違う」


「え? でも私のお兄さんは、私の言うことなんでも聞いてくれたわよ」


「顔も知らない母さんの兄さんの馬鹿!」


「母さんがお手本を見せてあげるわ」


すると母さんが俺の横に来て、下から上目遣いで見てくる。


「ねぇ、兄さん……人参が食べれないの……、食べて……」


うわ可愛い。この人甘えなれてる。というかいい大人が人参食べれないのか。


「デレデレしてる……、やっぱりお母さんを……」


「ほら、水鳥ちゃんもやってみて。健吾くんをどきどきさせちゃって」


「仕方ない。やってみる。兄さん……」


母さんと同じく上目遣いになり、声も普段の水鳥とは思えないほど、甘い声でおねだりされそうになり、くらっとくる。


「台所に出たキクイムシが食べれないの……、食べて」


「うん、確かにこの前出たな。だが、何度もいうが、俺はそこまで飢えてない。多分人類において、キクイムシを食べる人はいない」


「兄さん……、最近この辺に不審者が出るらしいの……、食べて」


「俺が不審者になるわ! そう言うレベルでもない。俺はゾンビじゃないんだぞ」


「え、でもちょっと腐敗臭はするんだけど……」


「真顔で言うのはやめろ。毎日ここで生活して、お風呂に入って、同じように洗濯してるんだから、そんなことはありえないだろう!」


「うん、水鳥ちゃんもきちんと兄さんに甘えられたわね」


「母さんは何を見てたんだ!?」


結局は、俺と水鳥で家事を手伝うことになった。何でこれを決めるだけで、ここまで話が横道に逸れていくのか。



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