『くらくきらめくいどのそこ』(ミック・ウェル)
腕が痒い。足も。掻くとぽろぽろ崩れる。
はじめはそれが薄くて柔らかすぎて『鱗』であると気づかなかった。
空気が乾燥しているが故の肌荒れだと思っていた。
『この青くて平たい缶。よくできているなぁ』安いのが良いのよ。女子高生でも買えるしね。
中身はもっと凄かったと語るチーア。ワセリンはこの世界にはないのかな。
でもあれは石油製品由来だからない。かもしれない。
私に言わせればチーアが作ったという海草の粘りを活かした肌荒れの薬はあっちに持って帰りたいくらいなんだけど。
『サワタリさん。もう辞めませんか』
あちらの世界でいえば内科医が専門となるのだろうか。
チーアは優秀なお医者さんだけど経験だけならミックさんのほうが上。
そして彼はチーアより毒などに詳しい。
『竜化現象です。属性耐性がいまいち不明ですがおそらく"病原竜"ではないかと推測します』
疫病の流行も『竜』の一種。変わり種では夢を司る『夢幻竜』などもいるらしい。
「具体的対策は」「一刻も早く元の世界に戻ることですね。食事をするなとは言えませんから」
『永遠の眠り』という術をかければ歳を取らず、傷つかず、悪意を持った人間には触れることすらできぬ存在になることができるそうだ。断ったけど。
「ですが、今後魔物の肉を喰うようなことはやってはいけません。竜化現象を促進させることとなってしまいます」「やだ」
今更引くなんてできないよ。
それに、私の助けが無ければ戦えないでしょう?
「私はロー・アースに同意見です。この世界の人間がすべきことです。
貴女には本来関係がありませんし、仮に我々が敗れても仕方ない部分があります」もちろん負けませんがと続ける彼に「でも、確実はこの世にはありません」と続ける私。
「あります。貴女が人間であり続けるための瀬戸際なのです。私は無理やりでも術をあなたにかけようと思っているのです」断るわ。あと、私最近だんだん『眠れなく』なってきているの。最近は『眠っているつもり』みたいよ。
でもね。ミックさん。感謝しているの。
今日までチーアに内緒にしてくれたし。
でも、一生チーアには恨まれるかな。仕方ないよね。
お母さん。私ノ血ヲドウゾ。オイシヨ。元気ニナルヨ。




