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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

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竜王降臨

 昔お父さんとチーアさんたちが大きな戦いに巻き込まれたとき、何もできない私はお父さんと一緒におびえていたのを覚えています。

きっかけは童話を読むアキさんでした。

「と、言うわけで竜の王様は大地の底で今でも卵としていつか復活する日を夢見ているのです。その夢こそがこの世界なのかもしれませんね。では」


 続きをせがむ私と父に呆れる彼女。当時の私は三歳だか四歳だったか。

その時の思い出が残っているってよっぽどですよね。

そうそう。ちょっと考えたら私とエフィーちゃんって五歳以上違うんだ。

あの人言動が幼いからもっと若く見えるんですよね。

エフィーちゃんも続きをせがむのですがアキさんは『私、知らないもの。ロー・アースに聞いてよ』との一点張り。

「アレは俺が書いたんだが」と言う彼に『竜王の卵の場所を教えて』とせがむ父と私たち子供。

「あそこ、今度エイドさんが畑作るって言ってたっけ。あそこを徹底的に掘ったら見つかるんじゃないか」

悪戯気にほほ笑む彼に気付かなかった当時の私たちは子供だったのでしょうね。

その日から宿の主人のエイドさんの息子さん含めた子供たちでの徹底した捜索、もといロー・アースさんに嵌められての耕作が始まったのです。


 慣れない鍬やスコップを使ってうんしょうんしょ。

お父さんや伯父さんがすごい勢いで彼方此方掘り返して、たまにロンさんが大きな岩を取り除いてくれます。結局宿の冒険者のみなさんやロー・アースさんたちも。

やがてこつんと言う音と共にお父さんは何かを掘り出し。

「あった!」カセキといって古いものは土の精霊の力で岩になるそうですが、その卵の化石を見つけた私たちは諸手を上げて大喜び。

呆れるロー・アースさんを尻目に交代でそれを温める私たち。

「まぁ、すぐに飽きるだろう」しかしその卵は一晩抱いて温めるごとに岩のような見た目からバラ色に明滅する不思議な卵に変わっていきます。

七日が過ぎました。私がうつらうつらしている間にお父さんが温めていた模様。

宿屋の親父さんの息子さん……そうだ。イーグルさんだ。

素敵なお兄さんになっているのかな? ちょっと楽しみですね。

それはともかく、彼はその場に立ち会えなくて文句を言われたのですが。

意外と覚えているものですね。いろいろ細かいことを思い出してきました。


 薔薇色の卵は明滅を繰り返し、暖かな鼓動とともに私たちの眠気を誘います。

ほのかに甘い香り。子供はなんでも口に入れます。舌ざわりは悪くはなかったと思います。

ぱき。ぱきと言う音と共に中の生き物が殻を割る音。

お父さんは「うまれた!」と言って大喜び。

やがて私たちの目の前に、小さな竜が顔を出しました。

つぶらな瞳は大きくてとってもかわいらしく。

ぴきゅうといって抱き着くその姿は愛らしく。

でも、お父さんを取られた私は大泣き。

その間で戸惑うお父さんの顔をべろべろと舐める竜。

あっという間にお父さんは唾まみれ。

『捨ててこい』

叱り飛ばすロー・アースさんに頑として譲らぬ私たち子供たち。


 噂を聞きつけた魔族や暗殺者たちと父たちは激しく戦ったそうですが。

『ある程度育つまでに一千年かかると思うわ』

リンスさんのお言葉にみなさん沈黙。

『まてん』『我々もそこまでは待てない。いくら魔族が長命と言えども一千年も養育できない』

がっくりと肩を落とすみなさんに呆れかえるチーアさんたち。

結局争いはなかったことに。

その竜の所在ですか? うーん。それは秘密なんです。

ただ、後日竜を思わせる容姿の小さな男の子からラブレターをもらったことだけはお伝えしておきますね。ふふ。

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