とーてむぽーる
ごきげんよう。フィリアス・ミスリルと申します。
ローラ市国に住まう一五歳。淑女見習いでした。
淑女を名乗る以上はそれなりの家柄である必要があります。
我が父はかの街においての英雄、ファルコ・ミスリルでございます。
もっとも、その見た目は幼児そのものなのですが。
「君に手を汚させるつもりはない」「また今更そんなことをいって」
にらみ合う私たち親子。
「子供はおとなしく待っていない祭」「まっていなさい?」「そうともいう」
子供って言いますけど、お父さんなんか幼児じゃない。ちびのくせに。
そう反論しようとして気づきました。父の目線が私と同じ高さにあることを。
「おい。ファルコ。ぼくをふみだいにしたな~」「さんばいのはやさでつよくなるの」
よく見ると伯父が肩車をしています。伯父もまた幼児の見た目なのですが。
「とにかく。絶対だめ!」「うるさいっ!」言い争う私たち親子をじっと見ている瞳たちがありました。
「ぼくも」手を伸ばしてせがむのは私の祖父母に当たる方々なのですがやっぱり見た目は幼児です。
祖母であるアップルさんに至ってはよちよちと背中側から勝手に登っています。
それをみた眠そうな顔のアルダスさん。なにくわぬ顔で正面から伯父のマントを掴みます。
「ずるい。ぼくも」フェイロンさんが我先に昇るともう止まりません。
「ちょ。お前ら降りろ。弟はさておきお前らはだめ」「やだ」「ぼくも」
律儀に列を作って次々と伯父と父の上に登っておんぶを要求する見た目だけ幼児の群れ。
「あ、あの。父と伯父が非常に苦しそうにしているので、やめていただけたらと」
二人とも鉄の人形並みに頑丈ではありますけど、念のためです。
しばらくしない間に彼らは次々と上に登り合い押し合い圧し合いしていました。
私の名前はフィリアス・ミスリルと申します。
お父さんの名前はファルコ・ミスリルと言います。
父の一族は、きっと役に立ちません。




