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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

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ぷろていん

「ぷろていん おゆでといたら だまになる」


 こんにちは。フィリアス・ミスリルと申します。

ローラ市国に住まう15歳淑女。今は縁あって下賤とされる冒険者を。

と、いっても私の父もその仲間たちも冒険者なのですが。

父の名はファルコ・ミスリル。ローラ一番の勇者です。

といっても。


「おみずでとけば おいしくないね」

「おとうさん ハイクの才は ないみたい」


 こういう『でんぱ』を時々伯父ともども受け取る困った幼児。

それが父の見た目です。ひょっとしたら中身も準じる気もしないでは。

なお、妙に工夫を凝らすとろくなことにならないことを戒めた短文歌らしいのですが。

意味不明でございます。


 ヘンクと言って母音子音を考慮しない独自の7音7音を返すのが粋なのだそうですがもう理解不能の領域です。

「異世界の栄養剤だね。身体を鍛える人が身体を大きくするのに食べる。

水に溶かすとちょっと甘い。でも牛乳に入れたほうがおいしい。

でもって冷静に考えたらもっと美味しいものはいっぱいある」

父も伯父も二人ともご覧の通りの幼児の見た目であり、これ以上大きくなることはなさそうです。

栄養剤ってチーアさんが時々甘いものを処方してくれますけど、アレですか。

「でも、向こうはもっと美味しいものがいっぱいあるのの」「サワタリが文句ばかり言ってたな~。でもチーアの作る料理だけは黙って喰うんだ。顔を赤くしながらな~。もうミエミエだったな~」

チーアさんって男女どちらからみても魅力的ですからね。

当時ならば殿方の召し物を使っていたでしょうし。

最近は男性の服装をしていても女性にしか見られないので諦めた模様ですが。

「そうそう。サワタリは人の作る料理には文句ばっかりで全然料理できなかったけど、むにえるって料理は美味しかったな」そうなのですか。

ムニエルってチーアさんが一度だけ作ってくれたけどすごく美味しかったな。

そういえばあの後、詮索するようなことを彼女に言ってしまった気がします。

それまで上機嫌だった彼女が一言だけ『黙って食え』と告げたのが印象的だったのも。

「おちゃ飲んだ時は泣いていたね」「『最初の剣士』の二代目を思い出すなぁ。みんなそろいもそろって生卵を食って腹壊すんだけどなんかの儀式なのかな」

父の言葉にそれまで居眠りをしていたアルダスさんが生返事。

『最初の剣士』ってあの伝説の? でもアルダスさんなら面識あるかも。

「歌ってあげようか? 僕は得意だぞ」お願いします。フェイロンさん。


 状況を説明しますと、私は彼らにお茶を淹れている最中です。

幼児の見た目の彼らですが、全員お茶にはとても煩く、私の一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくに注意しているのがわかるのです。

ううう。緊張します。私はフェイスちゃんじゃないのです!?


 正客といって一番偉いと言っては語弊はありますが似たような位置に座るアルダスさんは私が失敗したら即座にフォローしてくれるし、皆の気を逸らしてくれますが。

どうももてなしの気持ちを動作にも求めるとか言うのがあるそうですが、父や伯父はその辺はいい加減ですからね。

『もてなしの心は優美な動きより重要』『無様な失敗はもてなそうとして成したものなら優美よりいいと思うぞ~』

宿の一室で珍妙な茶会を楽しむ父の同族たちを目端の隅に収めつつ、私はひしゃくを落とさないように気を付けて動くのです。


 フィリアス・ミスリルと申します。

ローラ市国に住む淑女でした。

どうも、私は淑女には向いていない気がします。ええ。

危うくお湯の入った窯を落としかけて父に心配され、伯父に叱られ、父の同族には慰められるそんな一日でした。


 父の名前はファルコ・ミスリル。

この国一番の勇者。なのですが。

ええ。見ての通りお茶を呑んでセイザしてぽーっとしているのが好きな幼児の姿をしています。

ひょっとしたら中身もそうではないか。そう疑うこともあるのです。

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