竜という名の魔物
お父さんと伯父さん。アルダスさんにその他大勢の父の同族の皆さんと氷の魔神『サワタリ』相手の作戦会議が始まりました。
とはいえ、父の同族が真面目に会議を続けるとは思えないのですがそこはそれで。
「ぎゅーんとやってびしっとやってぼこっとやって倒す」「ぴぴんと言ってばばんと注意してどどんと元の世界に」「じゃじゃじゃんと言ってドドンと奥義を放ってドンドンドドンと運命転換」何を言っているのか少々不明ですがちゃんと意思疎通ができている模様。
え。今元の世界にって言いましたよね。
「うん」父はそうつぶやきました。可能なら帰してあげたいそうです。
とはいえ、先ほど父は『サワタリ』を倒したと申していたと思いますが。
焼けたり燃えたり凍結したおうちの代償にキッチリ滅ぼしたと。
「アイツは死んでこっちの世界に来たから、死ななければ戻れないと思う」伯父の言葉はなぜか説得力があります。
とはいえ死んだのに生きているほうがおかしいと思うのですが。
「死んでいるってことはある意味人間を超えているからね。普通死んだらそこまでだろ。普通はそうやって輪廻の輪に加わるんだけどたまーに外れて飛び出す奴がいる」
それがサワタリだと?
「ホトケとかキューセーシュとか言うこともあるけど概ねそんな感じ」
もっとも、本物のホトケには遠く及ばないらしいのですが。
アルダスさん曰く、数億年に一人いたら凄いそうです。
そうやって別の輪にたどり着いた者を『魔神』と呼ぶことがあるそうです。
「普通はちょっと変な人間なんだけど、たまに変な能力を持っていたり、妙に強かったりすることがあるんだね。それがサクラ……まぁいいや」
今は関係ないと続ける彼。
ただ、『輪』は複数あって、思ったよりたくさんの魔神が生まれることがあるそうです。
そして、本物の魔物へ変容するものも。
「それだけではなくて、この世界の縁を断ち切る必要があると思う」
前に帰還に成功した『魔神』がいたそうですが、いまだこちらに戻ってきたことはないそうです。
「サワタリは積極的に『竜』を食ったからな」ため息をつくフェイロンさん。
竜肉って猛毒だと思っていましたけど、魔物の類も『竜』だそうです。
「ほら、巨大な昆虫の化け物とかあのサイズで機敏に動いたりできるはずないでしょ。魔物ゆえにできる」
魔力も『気』の一種だそうです。
それのみならず台風とか地震とかも『気』であり『竜』らしいのです。
サワタリさんが元の人間に戻るには。
1.一度死ぬ
2.この世界との縁を切る
3.竜の気を捨て去る
これらの条件が必要になるそうですが。
「無理だな」「だね」首を振る父の同族たち。
「竜の気をあいつはもう手放す気はないし、もう竜化が進みすぎている」
「縁にしてもそうだね。あいつを恨む人間はいくらでもいるし、愛している人間もまた多い」
不死身なのも彼女の能力だけではなく、彼女に復讐を望む、あるいは生きていてほしいという人間が多いということにも一因があるそうです。
つまり、彼女は元の世界に戻れないということでしょうか。
「最後にはアイツ狂っていたからな。もう力を捨てることはできないと思う」
伯父の証言に父の同族たちは重く頷き合うと今後の指針を話し出すのでした。
サワタリは近く復活する。そのとき如何に被害を抑え、彼女を倒し、二度と復活できないようにできる手法を。




