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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

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もふもふ

 ああ。ちょっと幸せかもしれませんね。

御機嫌よう。フィリアス・ミスリルと申します。

城塞都市国家ローラに住まう淑女改め冒険者見習いでございます。

父は認めていませんが。

 その父ですが私の隣に律儀に並ぶ幼児たちの半ばにいます。

というか、父の姿は幼児そのものなのですが。

「ぼくも抱っこ」「私も」「ならんで」

眠そうな顔をしているアルダスさんは私の腕の中でうつらうつら。

これで軍神の化身と呼ばれるなんて信じられませんよね。


 ローラでは六柱の偉大な神々を奉じる各宗派は皆チーアさんを神の化身とみなしているのでその関係は良好だったりします。

邪神にして自由神を奉じる一派は彼女を冒険者の守護神と呼びますし、ローラの主神であった戦神の一派は彼女を戦神の使徒の化身としています。急進的な正義神の使徒や温和な知識神の神官、豪奢を好む商売神の使徒もそうです。

チーアさんって美人で毅然としていらっしゃいますから、象徴としては良かったらしく、国家危機の状況で『天使は男か女か』とか変な議論は出来なかった背景があったと姫様から直接伺ったことがあります。

もっとも、勝手に宗教統一の象徴にされたチーアさんには大迷惑だった模様ですが。


 さて、一部では軍神そのものとされるその子は私の腕の中ですーすーと寝息を。

あらあら。その袖を伯父の伯父が引きます。「ぼくも。交代」

フェイロンさんって手癖が悪いからなぁ。胸触っちゃだめですよ。

「姉さん知らない? 伯父さん」目つきの悪い伯父ですが、幼児の見た目なのは伯父の伯父と変わらず。

「知らない。この間会ったときは元気だったよ。いきなり斬りかかられたし」「伯父さんが悪い」

私に伯母がいたなんて初耳ですが、全滅した魔族ダークエルフの村からフェイロンさんが拾った赤子がそうなのだそうです。

父の一族には一族とは違う種族が少なからず混じるそうですが、その理由の大半がフェイロンさんだそうで。

「カント商会の主ってフェイロンが拾ってきた子だから」あの大店がですか。

「商売のイロハがどうとか超煩い」伯父が頭を抱えています。

なんでも、フェイロンさんは最後まで子供を育てる前に同族に預けてしまうそうで。かの商会の主は序列としてはフェイロンさんと同じく伯父の伯父にあたるそうです。

他にも私からみて曾祖父、曾祖母に当たる方は小さな船で新大陸を求めて旅立った男の中の男だとかそういった自慢話を。

フェイロンさんってすごくお話がお上手なんですよね。モテるだろうなぁ。

見た目は幼児ですけどね! ええ。


 さて、子供に対して無責任きわまる伯父の伯父の自慢話を聞きつつ。私は隅っこで拗ねている父に思わず視線をやってしまいました。

彼は『の』と指を動かしていました。

「お父さん。こっち」迷いなく飛び込んできた父を抱きしめ、私はちょっとだけ彼に拾われたことに感謝するのです。

うん。相変わらず抱き心地が良いです。


 私の名前はフィリアス・ミスリルと申します。

父の名前はファルコ・ミスリルです。

私たちの親子仲って、ちょっといいと思います。

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