オトナっていつなれるのかな。(15歳になりました)
こんにちは。フィリアス・ミスリルと申します。
城塞都市国家ローラ市国に住む15歳です。
オトナですね。もう。といっても。
「ごら。ふぃりあす。ぶっとばすぞ」ぶっとばしてみろ。うりうり。
幼児の姿の伯父のこめかみをグリグリして遊ぶ私をオトナとか、淑女と思う人間はいないと断言できるのです。
「何しているんだ」「摂関中」「それを言うなら折檻だろう」「そうともいうわ」
お前はファルコか。
言外にそう告げて肩をすくめてあきれる美女は私の知る高司祭様。
「ユースティティア様。御機嫌よう」「なんか他人行儀だな」
神官服を投げ捨ててくつろぐチーアさんに伯父を離さずに愛想笑いの私。
もちろん、両の手は伯父のこめかみをグリグリしていますよ?
「なにした。ピート」「なにもしていない」
なにもしていなかったから怒っているのでしょう~~~~?!
いい加減私も怒りますよ?! 本当だよ?!
「もう怒っているわね」気取ってみせるチーアさん。いつの間にかお茶を淹れています。
「具体的に言うと、怪しい酒場に行こうとする娘をとめる弟をそのままに」
一応、言っておきますが怪しい宿じゃないですから?!
ちょっと、ちょっとくらいお酒に興味を持っても良いじゃないですかっ?!
「用事があるって出かける前に『親子のことは手を出さないで』といったのに」「手を出さなかったぞ」足も出さなかったし口も出していないと続ける伯父。
「完全な。『逆切れ』ですね。精進しなさい。フィリアス・ミスリル」
気取ったしゃべり方の高司祭様は威厳たっぷり。
おもわず『はい』と声をそろえてしまう私たち伯父と姪。
「いいですか。正当な指摘や親心が嫌なことは多々ありますが、本当はありがたいものなのですよ」
「そっか。だからチーアさん、ロー・アースさんにだけは安心して逆切れしているのね」
合点した私は思わず伯父を手放し、伯父は血相をかけてそそくさ。
うん? 伯父さんどうしたの?
直後。私の額に激痛が走りました。
高司祭様。お戯れはやめてくださいませ。
私の名前はフィリアス・ミスリルです。
父の名前はファルコ・ミスリルです。
父の友人の逆切れは、かなり大人気ありませんでした。




