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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

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家族の時間(1111文字)

 私の名前はフィリアス・ミスリルと申します。

ローラ王国こと城塞都市国家ローラ伯国に住む13歳。淑女見習いです。

父は前の戦役で妖魔王を討った『三人の勇者』の一人ファルコ・ミスリル。


 といっても。

「むにゅむにゅ」「うふふ」「やめ~」

私の腕の中で嫌々をする幼児がその『勇者』であるということを存じている人はご近所様やその他関係者に限られますが。

父と同名の勇者様が『西方都市国家群』にいらっしゃるので同一視されているのです。

「お帰りお父さん」そういって彼を抱きしめます。「ただいま。ふぃりあ……むぎゅ」

じたばた。じたばた。

「お嬢様。手加減してあげてください」苦言を放つのは我が家の執事、ラフィエル。

妖精の執事で魔性『プーカ』なのですが、とっても優しくてステキなのですよ。

彼はそう言いつつも私たちの親子の時間に邪魔をすることなく、はたきを手に屋敷の維持に心を砕いています。


 この襤褸屋敷が私たちのおうちで、ここに住むようになって私の年齢の半分以上になります。

「ねね。お父さんお父さん。昨日学校でね」「あのねあのね。それでろうがね」

「お二人とも、お互いの話は相互にしてください。積もる話があるのでしょうが」

わけがわからないとはラフィエルの弁ですが、私たちはわかっているからいいのですよ~だ。

「お茶が良いですか。加加阿コカア茶が良いですか。それとも珈琲?」「おちゃ」「加加阿」コカア茶はとても苦い強精剤なのですが、蜜とミルクを加えるとおいしいのですよ。


「子供がコカア茶なんて」「いいじゃない。甘いもん」

 苦言を放つお父さんの両のほっぺをもってぶーたれる私。

あいまいに笑いながら二人分の飲み物とお菓子を用意するラフィエル。

「ラフィエルも食べようよ!」「いえ、私は執事ですので」

久方ぶりの主の帰還と家族の時間に水を差すべきではないと言い出す彼に。

「らいとも家族!」「そうよそうよ! こっちにきなさいよ!」

彼にとっては無茶ぶりを放つ私たち。

「もったいないお言葉ですがその」

しどろもどろの彼。私の両腕からするりと逃げだした父が駆け出します。

「お菓子作る~」そういって台所にぱたぱた。

「あ。私も~。ラフィエル『毒見よろしく!」私も父を追って走ります。

「ちょ。ちょっと待ってくださいお二人とも! 廊下を走らないでください!」


 結局。三人で焼いたケーキはとても美味しかったです。

チーアさんのところにもっていくと『不味くはない』とぶーたれていました。

チーアさんって。自分より美味しいものをひとが作るとこういうことおっしゃるのですね。


 私の名前はフィリアス・ミスリル。

お父さんの名前はファルコ・ミスリル。

執事の名前はラフィエル(ライト)。


私たち家族の絆は。結構強い。


※ 加加阿

現実世界のココア。

この世界ではコカアと称されることもある。

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