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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

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お父さん。ありがとう

 おとうさんは寝たかな。

ランタンを掲げてウインクを私に向けるのはうちの執事のラフィエルです。

ニコリと笑うのがその瞬間の合図。


 そろりそろりと抜き足差し足。忍び足。

ちなみに差し足は感知されやすいと思うのですがその辺は如何でしょうか。

フィリアス・ミスリルです。泥棒さんの真似にはわけがあります。


 本来は十二月の聖なる日に行われる風習ですがその日はお父さんがその役を毎年行っているので本日で代用なのです。

今日はお父さんのお誕生日。充分『聖なる日』ですよね。

『聖なる日』は世界一良い子にした子供に妖精さんの使者である赤い服を着たおじいさんが最高の贈り物をくれるという伝説があるのです。

お父さん曰く、『見たことあるし会ったことも話したこともある』そうですけど与太ですよね。そのひとを見た人は皆眠ってしまうそうですし。


 さすがに『聖なる日』にプレゼントをくれるのは伝説の妖精王ではなく、親や兄弟だということくらい私の歳にもなるとわかるのです。

十三歳って充分オトナですから。え? コドモだって? そうかもしれませんね。

暗闇に浮かび上がるお父さんの寝顔は愛らしいです。

変な意味に解釈しないでください。うちの父は幼児の姿のまま成長しない種族なのです。


 冷たい月夜の月明かり。後ろからは暖かいランタンの揺れる光。

その合間で優しい寝息を立てる幼児はうちの父なのです。これでも勇者様なのですよ。

ぜーんぜん! そうは見えませんよね。私もそう思います。

勇者様どころか近所の悪ガキに苛められてピーピー泣いているし、意味不明の遊びを伯父さんとしていたりするし、将来の夢が『おにぎり』だったりするけど。


 素直になれない私には。とっても嬉しいのです。

こういう感情ってどういえばいいのでしょうね。お父さん。

私は彼のブーツにこの日のために内緒で始めたアルバイトで買ったプレゼントを詰めて、彼の額に唇を落としました。

お父さん。またあしたね。


 翌日。私が目覚めると彼はもう家にいませんでした。

ラフィエルが言うには重要な戦いがあるので何も言えなかったそうです。

慌てて馬に乗ってお父さんたちを追いましたが追いつけず、とぼとぼと向かった神殿では持祭様がカンカンで怒っていましたし、ミック先生もローズさんも、リンスさんもすでにいらっしゃいませんでした。


 私が彼の能力、『額を合わせると心が読める』の詳細、『唇や性器などを用いれば更に効果が上がる』ということを知るのは後の話です。

知っていたらやらなかったのに?! もういいですけど。


 そう。彼は帰ってきたのです。

結局、私のプレゼントって何だったのでしょうね。

 ふにゃりと気の抜けた笑みを浮かべて帰ってきた彼を抱きしめる私。

どちらかというと私にとってのプレゼントになった気がします。

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