お酒のおいしさがわからない話
伯父さんが言うにはお酒は危ないから絶対に手を出すな。とのことです。
一応うちの父もお酒を呑むことができなくもないのですが、伯父ともどもあの容姿ですからね。
こんにちは。フィリアス・ミスリルです。
私のお父さんは救国の勇者。ファルコ・ミスリルです。
とはいえ、うちの父と伯父の容姿は幼児のそれなのですが。
当然ながら二人が酒場に行くと叩き出されてしまいます。
ローラでは14歳になるとお酒を呑んでもいいということになっています。
もっとも儀式やお祭りのときだけで日常的に呑んでいいかというと否なのですが。
ローラは魔法だけではなく武術も盛んで、あちこちの大通りで武術大会が日常的に行われております。
お祭りではトーナメント制。
毎週あちこちの大通りのどこかで行われるそれは10回勝ち抜きで優勝になります。
父に内緒で一度だけと大通りの大会に出た私はエフィーちゃ……さんに負けてしまいました。
自信はあったのですが……悔しいなぁ。
それはそうとお酒なのです。
私はそのとき、この大きな樽の処遇を決めかねていました。
『準優勝』……この樽を父に見せたら最後、おそらく自宅監禁は間違いありません。
『呑もう』こんないけない発想に駆られる程度には私は追いつめられていました。
翌日。私はおうちの食堂で目を覚ましましたが。
ええ。それはそれはひどい二日酔いになっていましたとも。
そもそも樽一つをどうして呑めると思い込んだのか自分でも定かではなく。
伯父曰く。『うちの女房と僕が結婚した理由を教えてやろう。ぼくがドワーフ火酒を呑んで、好きな子と間違えてうちの女房を口説いてしまったのが運のつきだ』
父曰く。『ちいやみたいに酒乱でなくて本当によかった』
ラフィエル曰く。『これに懲りたらお酒はお控えください。そもそも未成年です』
うううう。地獄です。
どうしてチーアさんはこんなものを呑もうとするのでしょうか。
「そうそう。武術大会準優勝おめでとう」
父の瞳は祝福しているそれではなく、明らかに目が座っていました。
ふぁらし(わたし)の名前はフィリアス・ミスりるぅ。
おどうざんの名前はファルコ・ミスリル……。
父の本気のお説教は。結構長い。
あたまがー。あたまがー。お父さん許してください~~~~~!




