表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/125

らくがき

 こんにちは! フィリアス・ミスリルです。

城塞都市国家ローラに住む12歳です。

「くくく」私は父がかつて倒したという妖魔王もかくやの邪悪な笑みを浮かべて父に迫ります。

その父ですが見た目は私より幼く、幼児と変わることはなく。

その愛らしいつやつやのほっぺたに私は墨をたっぷり含んだ筆を這わせるのです。

「お嬢様。お手柔らかに」「ラフィエル。止めないのね」

うちの執事は忠実でよくできたひとです。彼は墨の素となる焦げた木片を軽く砕いて膠で固めています。

すっと整った細い眉にガジガシとゲジゲジ眉を描き、頬に〇や×を。唇の周りには特大の口紅の形に。

「う。うふふふ。ははっ」口元から笑いがこぼれてしまいます。

最近、父と話す機会が大幅に減ってきました。

父は変わらず話しかけてこようとするのですが私がね。

本当はもっと話してあげたいのだけど、どうしてなのかなぁ。

自分でいうのはちょっと変ですが、もっと素直でかわいい子だったと思うのですけど。


「化粧化粧」


 私は父の仕事用具の一つである『化粧箱』という不思議な品を使って遊びます。

これを使うと醜女も美女になるというすごい魔法の品なんです。使い方は父の一族の秘密ですけど。

「お嬢様。化粧が上達しましたね」「伯父さんの指導の賜物ね」

もっとも、墨の上ですのでお察しのひどい状況に父の顔面は晒されているのですが。

その幼児のかわいい顔は鼻毛を描かれており、とてもとても。

「あはは。あはは。おっかし~~~!」父はすうすうと実に愛らしい寝顔をしておりましたが、その面影はなく。調子に乗った私はその小さな身体に今度は鳥や猫の絵を。



 ひとしきり笑っていた私ですが、学校に行く時間になりました。

「お父さん。またね」久しぶりに彼のまだ墨のついていない額に唇を落とします。

子供のころは素直になれたのに、なぜでしょうね。照れくさいというか苛めてしまうというか。

近づくだけで嫌悪感のようなものを感じて居心地が悪いと申しますか。

でもそれってすごく大事なこと。らしいのです。よくわからないけど。


 学校についた私を見て学友たちは大笑い。

「ふぃりあすちゃん。その額なに?」

父のアレは狸寝入りだったらしく、私の額には『未熟』の2文字がいつの間にか記されておりました。


 私の名前はフィリアス・ミスリル。

お父さんの名前はファルコ・ミスリル。

私たちの親子関係は。結構いいと思います。

血はつながっていませんから結婚できるそうですけど。

あの幼児の姿の父と結婚? あり得ませんよね!

でも、ああいう勇敢でやさしい人と結婚したいなとは思っていますよ。

むしろそうでない人はお断り!

え。なら父を苛めるなって? ……どうしてなのかなぁ。

帰ったら父に素直に謝ってみようと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ