かわらないものなんてないんだよ
「お嬢様。どこですか」「おーい。フィリアス。もどってこい~」「ふぃりあす~」「あっさり認めるとは相変わらずの考えなしだな。ファル」「まぁファルコだしなぁ。あいつがバカなのは今更だろ~」
伯父や父の仲間の声がします。
「誰がバカですか」悪態を思わずつくと背後でがさり。
びくっとなって振り返ると何もなく。
そのまま前に向きかえると鼻先に逆立ちの伯父の顔がありました。
「やぁ。久しぶりだな。存在感のない伯父が再登場だ」「きゃぁ?!」
思わずぶってしまった私に悪態をつき、頬を押さえて伯父はニコニコ。
私は伯父に謝罪をしたいのですが口から出てくる言葉は罵声の数々。
私ってどうしてこんなに嫌な子になっちゃったのだろう。
彼の頬の感触がいまだ残る拳に怖気を感じて座り込む私。
ぱたぱたと人の足音。物陰に隠れる私。
「ピート。見つかったか?」ロー・アースさんの声。
「いない」と答える伯父。ふるふると首を振るのが見えました。
さて。
彼は笑いながら私のそばに座りました。
「あいつを莫迦にするとお前はすぐくってかかるからな~。見つけるのは簡単だからな~」そういって笑う彼。なぜか頬が熱くなります。
だって、大事な家族だもの。ほかにいない。
「なら、姿をみせてやればいいのに」「……」
なぜだろう。すごく怖いのです。
「おじさん……ぴーとさん」「なんだたにんぎょう劇だな~」他人行儀です。
「そうそれ」しゃあしゃあと笑う彼に呆れる私。
この目つきの悪い幼児は父の兄にあたります。血のつながりはまるで感じませんが。
「いつの間に『万華鏡』を習得していたんだろうね。見つからないわけだよ」風の精霊さんの力を借りて周囲の光を屈折させる能力。だそうですが自覚などなく。
「……どうして」「ん?」下からいたずらっぽく意地悪な笑みを見せる彼は私の記憶に残る昔からの伯父で。
「変わらないものなんてないんだよ。ふぃりあす」
伯父はそうつぶやきました。
「だから、ぼくらはその変化をおそれちゃダメなんだよ。わかるかな~わからないだろうなぁ。ガキだからなあ」
おじさんのほうが子供です。少なくとも見た目だけは。
私の名前はフィリアス。
12歳になりました。だけど。
「さぁ。ぼくの胸の中で泣いていいぞ」
傲慢に胸を張るけど威厳のかけらもない伯父に悪態をつく。
そんな昔ながらの部分もあります。