痛まないはずの背中の傷が痛むのは心が泣いているから(777文字)
「お父さん。今日はお話があるの」「みゅ」
魔物討伐から帰還した父は体中傷だらけ。
彼のつややかな瞳が私を見上げます。
思わず頬が熱くなり、少し視線をそらしてしまいます。
何故でしょう。少しだけ肯定してほしい自分がいます。否定してほしい自分もいます。
「私は。お父さんの子供じゃないよね」「??」
意味が通じたのか通じていないのか小首を傾げる彼に告げます。
「フィリアさんって人はどなた? 私の本当の父さんは誰?!」
父はしばしそのかわいい瞳を動かしていましたがしばらくして。
「あ。そか」父はあっさり話してくれました。
フィリアさんという方が私の母。彼女に私を託されたということを。
私の背中の傷の意味も合わせて。
「どうして話してくれなかったのよ」くってかかってしまった後悔に胸を痛めながら私は背中の傷痕にそっと指先を回してつぶやきました。
「すっかり忘れていた。ごめん」
要するに。普通に実の娘と思って育てていて話す機会を逸したという以前にその事実すら忘れていたとは父とその周辺の人物の統一意見でした。
「聞かなかったから忘れていた」とはロー・アースさん。
いい加減にもほどがあります。私の人生を何だと思って。
チーアさんことユースティテイア様は頭を下げて謝ってくれました。
「あいつがお前を育てると言い出した時俺たちは絶対無理だと反対したんだ」
でも、小さい体をおしてすごく必死に育てる彼に皆が引きずられる形で皆で育てて、家を手に入れて。
「一つだけ言うなら、血はつながっていないかもしれないけど心はつなげることができる……勝手だな。それはお前が決めることだしな」
そうですね。大人は勝手です。
私は背中の傷に服の布越しながら触れました。
実の母と実の父の最後の残滓となったその傷に。
私の名前はフィリアス。Fly-ASと綴るそうです。
勇者様との関係は。少し考えてから結論を出したいと思います。




