表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/125

12歳になりました

 フィリアス・ミスリルです。12歳になりました。

といっても父は相変わらずで成長の兆しも見せません。

端正な顔立ちも透き通るような琥珀色の髪もほっそりとした長い指先。

体格からすれば長くて細い手足。

このまま成長しないと思うと少々どころかすごく勿体ない気がします。

 間違いなく、ファルコさん……西方都市国家群の勇者さんより美男子になると思うんだけどなぁ。

ファルコさんと一緒に歩いているとちょっと面白いのですよ。女の人の目線が凄いのですが彼は女性が苦手でして。

ロンさんに言わせれば腹が立つらしいのですが彼はあの性格だからこそ女性にモテる部分もあるのでしょう。たぶん。


 私ですか? ええと。その……『女の子にちょっとなった』かなぁ。とだけ。

オトコノコよりちょっと背が高いのは歳相応として、胸が少し。

ほんの少しですよ?! その。膨らみだしてきました。

オトコノコたちは子供にしか見えないと女の子の学友の皆が言いますが私の場合父からしてアレですから。

あ。私自分の父をアレっていっちゃった。まぁいいや。アレだし。

そういうと父は本気で泣き出すのですがちょっといい気味です。

そうして父を苛めているとラフィエルに叱られました。ふん。なにさ。ふたりして。


 このまま私は歳をとって。もっと美人さんになってしまって。

男の人に抱かれてほほ笑んで、そして歳をとって子供を抱いて。

それでも父は歳をとらないのでしょうか。あの笑顔のまま私のそばにいてくれるのでしょうか。

それは。とても考えたくないことです。正直言って怖いのです。

私、人間ですよね。妖精さんかもしれませんけど間違いなく父とは種族が違いますよね。

私の本当のお父さんやお母さんはどんな人なんでしょうか。

ひょっとしたら人間ですらないのでしょうか。


 指先をそっと空に向けて動かすと小さな風が吹きました。

魔法の力はミック先生やリンスさんやチーアさん。ロー・アースさんに学びはしましたがこれはそれとは少々趣が異なるようです。

私はいったい、何者なのでしょうか。考えてみれば私は5歳以前の記憶がまったくないのです。

私が父やその家族、その友人と思っている人たちは本当はどんな人でどのような理由で縁もゆかりもない私を育てているのでしょうか。


 私の名前はフィリアス・ミスリル。

彼の名前はファルコ・ミスリル。

ひょっとしたら私はミスリルの一族じゃないのかもしれません。

ただのフィリアスになったとき、私は誰と歩めばよいのでしょうか。


 父が必死で探しているのが市場のはずれに佇みながらもわかってしまいます。

私は彼に笑顔を見せるべきなのでしょうか。謝るべきなのでしょうか。

それともだましていると彼を責めるべきなのでしょうか。

解らないのです。それでも彼が好きな自分が悔しいのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ