紙は高いのです
私が普段使っている革張りの日記帳も結構な冊数になりました。
こんにちは。フィリアス・ミスリルです。城塞都市国家ローラに住まう11歳です。
私の書いたこの日記がひょっとしたら勇者の人となりを描いた資料になったりするのでしょうか。
そうしたら勇者様がいもむしごっこやみんみんぜみごっこをする人だと後の世にわかってしまいます。
「格好をつけたり気取ったりして書いたってダメ~。
ふぃりあすがみたそのままをふぃりあすの言葉で書くことに意味があるのの」
でも、この日記帳ってものすごく高価なものだと思うのですが。
大判の無地。素材不明の皮でできたその本はなぜかうちには大量にあり。
なんでも高価な紙を安く大量に手に入れる方法を持っているそうです。
勇者ってちょっとずるいですよね。はじめてそう思いました。
砂糖や石鹸などもそうやって手に入れているそうですけど秘密だそうです。
ロー・アースさんがたまにやってくると私の日記帳を読んでいる理由は彼は詩人であり私の文章指導も時々やってくれるからですが。
「そもそも、この家は蔵書が多い。日記といえどもちゃんとした言葉と経験で描かれた書籍は貴重な資料だ」一般的な魔導士でも一〇冊持っていれば凄いとは彼の意見ですが、彼の書く物語は貸本や写本、それを見た詩人さんの弾き語りを経て一般の人も良く存じているものが多く。
「はなはだ不本意だな。学術書より多いのは」「うれしい癖に」
そして彼やお父さんが紙の作成技術に関与したのは間違いないようです。
私は昔ながらの弾き語りも大好き。
どちらがいいのかって言われても選べませんよね。
この日記帳ももうすぐ紙面が尽きますが、まだまだ書きたいことがいっぱいあるのです。
私の名前はフィリアス・ミスリル。
お父さんの名前はファルコ・ミスリル。
私たちの親子仲は。結構いいと思います。
お父さんと違って歌は苦手です。