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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』
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へんなもの ~天才魔導士の遺産~

 うちにはへんなものがいっぱい。

「もけけ~」と叫ぶと『ぴろぴろぴろー♪』と叫びかえす謎の玩具とか。

勇者の家なのですから別に冒険や戦役の戦利品が多少あっても驚かないというか、学友のみんなはそれを期待してうちに遊びに来るのですが、たいていひどい目に遭って泣いて帰っていきます。

 学友が期待するのは『救国の三勇者の幼少時の頭蓋骨』みたいな聖遺物に似たものとか、『妖魔王の魔杖』とか言った戦利品とか、珍しい古代魔道帝国時代の遺物なのですが、うちの父の趣味は少々子供じみているというか子供もびっくりと申しますか。ええ。見た目子供どころか幼児なので妙な石ころも少なからずです。

これに加えて伯父もわけのわからないがらくたを持ち込む傾向があり。

「ふぃりあす。この毛皮はかの『盗賊都市』地下に蔓延るじゃきょうだんのボスの毛皮を剥いでもってきたものなんだ。これで皮鎧を作れば炎も魔法の吹雪もへっちゃらだし、どわーふ鋼の刃だって通さないんだよ。しかも軽い」「これはどうみてもどこにでもいそうな動物の毛皮です。邪教団って人間じゃない」

「これは吸血鬼の牙なんだよ」「うそつき。吸血鬼は滅んだら灰になるってお父さんが言ってたし、学校でも教わりました」「あえて牙だけ残して狩ったから復活できないんだ。絶対動かさないでね。『桔梗』っていうすっごく強い吸血鬼の王者だったから」

「これ? 魔竜の喉骨。この真上にあったのがこの逆鱗」「……」

よくわからないホラをふくのも相変わらずです。


 冷静に考えたら勇者や女神様や聖者の子供のころの頭蓋骨っておかしなお話。

大人になった時のお骨はどうするのですか。

聞くとチーアさんは大笑いしていました。

高司祭さまでもわからないことがあるのですね。


 そうしてうちにあるがらくたを整理していると、幼少時に私が使っていた銀色のおまるがいまだ残っているのに私はあきれました。

どこまでうちの父は物持ちが良いのでしょうか。

こういうのは人様に差し上げるか捨てるか売ってください。

そう思ってそのおまるを人目につかないところに動かそうとしたところ。


 おまるはすごい勢いで空に舞い、私を載せて天に。

ちょ?! ちょっと?! お父さん?! このおまるにそんな機能があったなんて知らないからッ?!

これは幼少時に父が持ち帰ったものですが、使っていた当人ですら知らないのですから父が存じなくてもおかしくはないのですが。

 びゅうびゅうと空を駆け、雲を切り裂き、鼻先にふわりと海の香り。

あっというまに『車輪の王国』の港を超えてはるか沖に。

「すごい。飛んでいる」人が空を飛ぶのはどきどきする経験と父は申しますが私にはちょっと実感がわきません。おまるが飛ぶほうが凄いと思います。

なお、このおまるは水中に結界を展開して水中散歩も可能にするらしく、私は海の珍しい生き物をたくさん見ておうちに帰ることができたことを追記しておきます。



 お父さん曰く、あのおまるは古代魔道帝国の偉大なる魔導士が一生使い続けた代物だったそうです。

それはわかりますが、百年は生きる古代魔道帝国の魔導士がおまるを死ぬまで愛用していたってちょっと可笑しいですよね。

「おとうさん」「みゅ?」

「そんな危険な代物を娘のおまるに使わないでください」「ごめんなさい」

面白いと喜んでくれるかなと思って与えたけど使ってなかったねと弁明する彼ですが幼少時に空なんて飛んだら私はおうちにかえってこれ……る気がします。

なぜか私は幼いころより『家はこっち』とわかるのです。

『磁石の周りにある、ものをひっぱる力は私以外の人には見えない』

不思議なのですがほかのみんなにはない力らしいのです。

お父さんだけはちょっと特殊ですけど。


 私の名前はフィリアス・ミスリル。

お父さんの名前はファルコ・ミスリル。

私たちの親子仲は。結構いいと思います。

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