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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

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伯父さんは護衛さん

 こんにちは。フィリアス・ミスリルです。

ローラ伯国に住む11歳です。今日はお父さんたちと一緒に『車輪の王国』まではるばるお祭りを見にやってきました。

『車輪の王国』は道路建設のための騎士団があるほど道路の整備に力を入れている国ですので、お祭りのときはその交通網が逆に仇になって各国からやってくるお客さんの対応に大慌てになるってお父さんが言っていました。

伯父さんが操る妖精さんの船に乗って『車輪の王国』についた私は人の多さにくらくら。

ローラだって都会だと思っていましたけどそうじゃないのですね。


 彼方此方から舞い降りる花びら。

鼻から喉を刺激する食べ物の匂い。笑い合いふざけ合う幸せそうな男女。

どこからか音楽が流れ、皆が輪舞を踊っています。

『舞えよ舞え トロル橋のテラス

足そろえ 腕を振り上げ


花讃えよ 皇女の祈り

廻れ劔 三十二の無血剣』


 楽しい音楽! 私も踊っていいのかな?

「もちろんさッ? あれ? 君どこかで会ったことない?」存じませんよ。カッコいいおじさんだとは思いますが。

「まだ28なんだけど」弓を短剣で爪弾いて歌に参加していた赤い瞳を黒水晶の眼鏡で隠したオジサンはちょっと残念そうに告げます。

「おじさん。大丈夫。若いからまだまだ彼女できますから」「きついな?! って思い出したッ?! お前ファルコの娘かっ?! かわいい顔して黒いのは親子そろってだなッ?! あいつは元気かよッ?!」

黒いってどういうことでしょうか?! 


 思わぬところで父の知り合いに出会い、果実の搾り汁を驕っていただきました。

『車輪の王国』といえばクッキーで財を成したミリアさんだけど、彼女は今日はとても忙しくてお祭りに参加できないそうで。たくさんたくさんクッキーを送ってくださいましたけど残念だなぁ。

お父さんは『ファルちゃんが帰ってきた』といろいろな人にもみくちゃにされてどこかに連れ去られてしまいました。

積もる話もいっぱいあるだろうからと私はこの不審人物Rさん(仮名)と町の見物です。

というか、アキさんの役立たず。ふーんだ。

振り返ると壺に入った伯父さんと目があいました。何をしているのでしょうか。

「ふぃりあすのごえい」「ゴミ箱に入らないで」本当に伯父は何をしているのでしょう。

「お前、奥さんが探していたぞ」「だから逃げてもいる」それは帰ったほうがいいと思いますよ。伯父さん。

「だいたい護衛なら近くにいないとダメでしょう」「ふぃりあすのせいちょうをいのって涙を呑んで自由意思を尊重してやってるのだ。えらいだろう。すごいだろう。たたえろ」

それはサボっていると言われても仕方ないのではないでしょうか。伯父さん。

「いや、そうでもないぞ。お前から掏摸すりをやった奴の財布は取り返してお前のポケットに戻しているし、お前をさらおうとする奴は皆倒している」え?

「気づかなかったのかい」おどけて笑う不審人物Rさん(仮名)に首を振る私。

とても安全で楽しいお祭りだと思ったのですがそうでもないらしく。

「たまには、ファルコにも休みをあげてくれ」「すぐあいつは戻ってくるからな~。なんせ子煩悩で娘離れできないダメな奴だからな~」

伯父の言い分には異論が多々ありますが、お祭りに参加しつつ各所を回りながら若いころの父を知る方から父の昔の活躍を説明してもらうのはとても楽しかったです。

「おじさん。怪我しすぎ」「転んじゃった」もう。本当にドロドロでいつも汚いんだから。

「でも。ありがとうね。他に怪我してない?」

そういって伯父の影の助けに感謝する私。

伯父と不審人物Rさん(仮名)はとても私の自主性を大事にしてくれました。

とてもとても楽しかったのは間違いなく。そのために二人が払った気遣いはいかがばかりだったか子供の私にはわからず。

「うわ。知らない間にふぃりあすが頭うっておかしくなっていた。どうしよう。ふぁるこに殺される」失礼な伯父ですよね。まったく。ふふ。


 お父さんの名前はファルコ・ミスリル。

私の名前はフィリアス・ミスリル。勇者の娘。

私たちの親子仲はけっこうよかったりします。

あ。伯父さんや不審人物Rさん(仮名)も嫌いじゃないですよ。……たぶん。

私のために怪我さえしなければ、好きかもしれません。

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