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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

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『転生したけど受精卵に負けてしまいました』エピローグ的ななにか

完全に本作のイメージを覆すので、続きを読まないほうが身のためです。

前作にして後日談、『転生したけど受精卵に負けてしまいました』のエピローグ的なお話です。


 前回の更新にてフィリアスとファルコの物語は終わりです。

あなたの『勇者』さま。

お父さん、お母さんのお話。

 最低だった。今でも恨んでいる。

普通だった。でもこんな印象に残っている話がある。

最高だった。でもこんなお茶目な失敗もしていたなどなどお気軽に感想欄にどうぞ。

 あ。いくいぐっ……ってまてまて。朝かよ。

風呂に入るのも面倒だし、我慢我慢っと。


 あ。ちょっと出かけてら。ナニとは言うなって。

失礼。俺の名前は草加正人って言うんだが、まぁ知らなくても問題ない。

取りあえず今は髭を剃って髪を整えているところなので失礼を。

あ。手を洗ってなかった。


 ちなみに25歳のイケメンな。俺だぞ。俺のことだぞ。探すな?!

そこ。ニートいうな。一応働いとるわ。明日から。たぶん。

親父のスーツを勝手に借りて、苦労してつけたネクタイはちょっと曲がっていた。

動画サイトで確認して、結びなおしてっと。


 おっし。

どうみてもイケメンサラリーマンだな。

これからちょっとデスマ系の会社受けてくるわ。

今日から本気出す。うん。良い言葉だ。


 なんか不気味なものをみたような両親に笑いかけ、俺はスキップ気味に外に出る。

良い日取りだ。もうゲームなんてやってられんな。なんせ明日から仕事仕事だからな! まぁ今までちょっと鬱になってたからその反動かもな!!

俺は昨日までプレイしていた至宝たからのやまを燃えるゴミに出して歩く。

ところで今日は普通ごみの日である。

すまん。ごみ回収の人たち。許せ。



 おれが何者かって?

うーん。うーん。うーん。確かに解らんだろうな。

『村勇者』? 違うな。まぁワープアニートでいいや。よろしく。


 ところで、質問だ。

目の前にて車に引かれそうになっている女の子がいる。

俺は助けるべきだろうか。選択時間一秒。


「気を付けろ。ばっきゃろー」べー!


 悪態をつくおれ。学生服姿の可愛い女の子はしばし震えていたが、元の気丈さを取り戻したようだ。


 すっと細まる瞳。不愛想だけどかなりの美人さん。

とはいえ、その本性を知っている俺にはちょっとアレだが『時間に間に合った』みたいだな。



「はじめまして。と、言うべきかしら。草加マサト」

「はじめまして。というべきかなあ。沢渡夕菜ちゃん」


 ファーストコンタクトは挨拶から。俺超紳士。


 名前を聞く。挨拶する。好きなことを聞く。

コミュニケーションの基本だよな!

略して『なあす』な! おれも看護婦物は大好きだ!



「いつまで触っているのよ。この変態」「ちぇ。もっと触っていたかった」「あんたねぇ?!」



 この辺は交通量が多いから、そろそろ撤退な。

なにかリア充爆発しろな視線を周囲からビシバシ感じるが気のせいだよね?!


「もう。服が汚れたじゃない。うちにきなさいよ。お礼もしたいしお茶も入れてあげるわ。……お母さんが」


 オマエは茶ひとつ満足に淹れられないのか。


「ちょ。今から面接?!」

「サボりなさい。私もサボる」


 悪びれず言い切る女子高生に呆れる俺。


「この不良学生」「なによクソニート」


 俺たちはお互い、視線を交わしあう。


「べー!」「べー!」


 かっっわいくねえええええええええええぇぇぇっ?! クソ高校生め!


「ところで、職は必要かね。マサト君。お父さんがちょうど生きのいい若いのを探しているのだが」「是非、今すぐお供させていただきます。お嬢様の命の恩人として存分に媚を売って恩も売っておきます」「良い返事だ。しかし私としてはそれ以上の結果を切望する」


 連れだって歩きながら、俺たちは空を仰ぐ。


「輪、無いね」「飛行機雲があるじゃないか」


 銀色の翼を広げ、ここからは小さく見える飛行機が空を斬って飛んでいく。

それはまるで大きな剣のよう。


 ぎゅ。

不意に手を握られて振り返ると真っ赤な顔の彼女。


「ご、ご、誤解しないでよ。まだ震えているんだから!?」「はいはい」


 真っ赤な顔では説得力無いですよ? 夕菜さん。

とはいえ、俺様はロリコンと書いての紳士ですからこれくらい。

彼女の手は驚くほど小さくて柔らかい。女の子っていいな。

なんか香水もつけていないのにいい香りがするし、髪の毛つやつやだし。

連れだって歩く俺たちに降り注がれる視線。超恥ずかしいのですけどなんですかこの拷問。

顔が真っ赤でヤバいですお母さん。このまま昇天してまた転生しちゃったらどうしてくれましょうかお父様。


「お母さん、誤診だって言われると思う」「良かったな」「へへ~ん」


 得意げな女子高生に呆れる俺。

この年頃のガキなら仕方ないかもしれないし、我慢我慢っと。


「マサトのおかげ?」「なんもしていないな」


 というか、俺たち、『一応』初対面だからな。

その辺わきまえていてくれるとうれしいのだけど。無駄だろうし。


「というか、終わったらデートね。遊園地。あんたのおごり」「金があったら就職活動なんてするかぁあ?!」「あら、じゃ、一〇〇〇〇円貸してあげるわ。トイチで。借用書には二〇〇〇〇円って書いておくね」「ちょ」


 俺たちは歩く。

背中の翼は失くしたけれど大地を踏みしめる脚は残っている。

そのふたつの足を導く明日へと続く地図。それは胸の内に今も残っている。


「ところで」「あん?」


 自らの手のひらを嗅ぐ彼女は眉をしかめて言った。


「あんた、手がイカ臭いけど」「キノセイデス」


いろいろ最低な終わりだけど、勘弁なっ?!


~ 『転生したけど受精卵に負けてしまいました』エピローグ的ななにか おしまい ~

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