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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』

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120/125

『お父さん。助けて』

 神の剣よ。神が与えたその刃よ。

もしあなたに慈悲があるのなら。私の願いを叶えてください。

『翼よ。自由の翼よ。すべての因果を打ち砕け』

エアリスお父さんの声は幻聴だったのでしょうか。


 私は目を覚ましました。

眼下に広がる青い青い光を受けて白く白く輝く雲の海を。

私の腕の中、『神の刃』を握る父。ファルコ・ミスリルを。


『とべとべとんじゃえ~』


 斥力結界と重力結界を展開して高速移動しつつ、きりもみ飛行で彼と戯れる母の記憶に一瞬触れました。

少しだけ、こわばっていた腕の力が抜けたようです。いい意味で。


「お父さん! いくよ!」


 広い広い雲の海の真ん中、大きく大きく広がり、呪いと疫病をまき散らそうとする竜の翼。

私は狙いすまして父の小さな身体を結界の力で吹き飛ばして。


『ふぁるこ・みすりるぅ?』


 怨嗟の声とともに放たれる疫病のブレスを切り裂き、『神剣』は光り輝く巨大な柱となって雲を切り裂き、大地を引き裂いていきます。

雲海を覆い尽くさんとする巨大な竜の、縦に割れた瞳孔が見開かれ、その口から悲鳴が漏れます。

竜の声ではなく、少女の声で。


「怖いよ。お父さん怖いよ」

「お母さんを助けられるの。すぐに戻るから」

「お父さん! 助けて! 怖いよ! 怖いよ。 お父さん。助けて」



 大きく息を吸いました。

そして吐きだします。思いのたけを込めて。

雲を引き裂き、大地を切り裂き、運命をも変える私の勇者。


『勇者はな。ふぃりあす。うちのお父さんだ。兵士さまなんだ』

『父とは疎遠ですが、向き合ってみます。声なき声を貴女に頂きました』

『ラフィエルはお待ちしております。お嬢様と旦那様の帰還を。この家にて』


「ファルコ・ミスリル!!!!!!!!」


 掲げられたその掌。

光りかがやく大きな大きな光の柱と化した『神剣』。

遠くから見ればまるでちょうどいい大きさの剣のよう。

私はその刃を握るように手を伸ばします。

父とともに、こころの内でその剣を握ります。


躊躇ためらっちゃダメぇっっ! お父さんっ!」


 未来を救って。沢渡さんを救って。

私を。みんなを救って。世界だって。


「「うなれ! 『神剣オリハブレード』。運命を切り開け!」」


 私の、私と父。ロー・アースさんたち。

街のみんな。世界の人々の声。それが重なり、大きな光の柱と化した『神剣』は雲を切り裂き、大地を砕き、海を沸騰させて、沢渡さんの身体を包んでいきます。


 冬の風は穏やかな光とともになりを潜め。

呪いの声は優しい歌声となり、白く輝く積雪は花咲く野に。



 もうすぐ春がきます。

ローラは、いまどうなっていますか。


私の名前は。

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