嵐の女
今日は久しぶりに『車輪の王国』からはるばるロー・アースさんとアキ・スカラーさんが遊びに来てくださいました。
お二人ともお父さんの古いお友達なんです。
特にロー・アースさんはとっても素敵なんですよ。
チーアさんと結婚してくれたらいいのになぁ。そうしたらここにずっといてくれるかも。
「どうしてお前の護衛をタダでやらなければ」「親友でしょ。これで万金の価値の報酬。ハイ。チャラ」
そういってちゅっという音がロー・アースさんの頬からしました。
なんか腹が立ちますけど。確かにアキさんは美人の部類に入りますからそのキスは価値があるのかもですけど。
「うわあああっ?! フィリアスちゃん、すっごく大きくなってる?!」正直私が彼女の世話になっていた時期はとても短く、ほとんど記憶にないのですがお父さんお父さんと泣いていた私をずっと抱きしめていてくれたのは覚えています。
「ふぁるちゃんは? ねぇねぇファルちゃんは?!」
そういっておうちの壺の裏まで調べようとする彼女にはいささか辟易。
へきえきってこういう意味であっていますよね。ちょっとわかりません。
ドタバタ。どっすん。掃除を手伝いに来てくれるそうですけどこれだと散らかります。
「旦那様は本日は『急用ができた』と魔物退治の用に」
さすがに執事のラフィエルに止められました。アキさん。残念。
「ええっ?! ファルちゃんを一人で行かせたの?! あなたそれでも執事なの?! ライトッ!? この間人参あげたじゃない?!」「いつの話ですか」「この薄情驢馬めっ!? 着替えも覗いたし最悪ッ!」「不可抗力です」
あ。ラフィエルを古くから知っている人は皆『ライト』と呼びます。
理由はラフィエルが驢馬やイタチやネズミ、若鹿に変身できるからですけど。
今日は『車輪の王国』のお祭り見物に行くのにロー・アースさんとアキさん。あともう一人……私としてはオトモダチと思っているのですが苦手な子が。その。護衛に来てくれたのです。
というより、アキさんって戦えるのですね。みなから指摘されていることですけど。
「ファルちゃんを思いっきり抱っこできると思ってきたのに」落ち込む彼女をみると父が何故遠征に出かけたのか理解できる気がします。
うちのお父さんは妖精の一族で、幼児の姿のまま歳をとりません。
私の名前はフィリアス・ミスリル。
お父さんの名前はファルコ・ミスリル。
私たち親子の関係は結構いいと思う。