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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』
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八つの封印

『七つの封印を司る魔物とその封は手に入った。あとは封印人格なのだが』


 ロー・アースさんの詳しいお話は魔導に関わるもので、私には少々複雑に過ぎました。

ある程度は魔導も手ほどきを受けたのですが。不勉強ですね。


 もっとも基本的な理論はリンスさんの構築したものらしく、リンスさんからあとで詳しい解説を頂きましたが。


「『サワタリ』はもう分身の下位魔神を作る能力はないはずだ」

「あとは倒すのみ。なの。みんな」


 ロー・アースさんの言葉にリンスさんの言葉が加わります。


「抜けたい奴、リンス責めない。いや、抜けていい」


 リンスさん。リンス先生が泣きそうにしている姿はひょっとしたら初めてかもしれません。

変わり果てた昔の友達の現身を何度も何度も倒す日々には私以上に思うことがあったに違いないのですから。

 私。ですか。

実は幼いころ、文句を言いながら優しくしてくれた女の人がいたような気がします。

アキさんでも宿屋のおかみのアーリィさんでもない方。おそらくそのかたこそ。


「却下よ。私は行くわ」

「リンス。貴女こそ抜けなさい。私は行きます」

「あのさ。おれがダチ見捨てると思ってるのかよ」

「決着はつけるさ。リンス。頼む」


 ロンさんが立ち上がり、ミック先生がリンスさんを気遣い、チーアさんが憤慨してリンスさんに詰め寄り、ロー・アースさんが頭を下げます。

私は、行くべきですよね。


 私の足をお父さんが掴みました。


「かえれ」


 またそんなことを。

抗議しようとする私にロー・アースさんが首を振りながら告げました。


「『サワタリ』はお前を可愛がっていたからな」


 そうなのですか。

やっぱり。といえばそれまでですが先日まで戦っていた宿敵です。

実感があまり湧きません。幼いころの記憶は『翼の忘却』が消えて取戻しはしましたが、あまりにも当時の私は幼すぎて今の私の記憶のほうが容量が多いのです。


「決着は僕らがつける。おねがい」


 お父さんはそういうと私に頭を下げました。


「最後の戦いは、『封印の村』で行う」


 お父さんたちが倒しそびれた魔物、その中でも気性が穏やかな方たちはその村で暮らしているらしいのです。

緩やかな結界を張っているため侵入者はそれと気づくことなく立ち寄ることはないと。


「『サワタリ』は傷つき、疲れている。今なら倒せる」


 でも、それでいいのですか。みなさん。

だってお友達だった方でしょう。私にとっては宿敵ですが。


『さーたに』『もう! おもらしする前に言えっていったじゃない!? というか、やってから自慢げにッ?! ファルちゃん助けて!』


 私の名前はフィリアス・ミスリルと申します。

幼いころ、優しくしてくれた女性の顔が思い出せないのです。

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