天使の翼
私が父を抱きしめ一歩も動かない姿勢を見せているのに対してロー・アースさんたちはあきれた顔をしながらも理解してくれた模様で、甘い飲み物をくださいました。
フィリアス・ミスリルと申します。
ローラ王国出身の冒険者見習い。15歳でございます。
「助かっただろう。おおいにかんしゃするといいぞロー・アース」「ああ。すまんな」
伯父は素直に感謝するロー・アースさんに涙目になっていました。
どういう扱いを受けていたのですか。まったく。
大量にあった『サワタリ』の死骸は毒の沼となって岩を穿ち、今では姿すらなく。
「弔うこともできないなんてな」
チーアさんはそうおっしゃいますが、複写魔神は弔うべき存在なのでしょうか。
「それより、翼」
ロンさんが肝心なことがあるじゃないのと続けて皆の視線が私の背に。
今はあの透明の翼は消え去っていますが、あの時間違いなく私の背には大きな翼がありました。
「有翼人の翼は魔力の具現化だからな。もぎ取られても己の意思で一時的に回復することはあるかもしれない」
そうです。私は父の一族ではないのです。
ロー・アースさんに指摘されるまでもないのですが、本当は飛べたのかもしれません。
父とは同じ妖精さんではありますけど、別の種族。
でも、どうでもよくなってきました! 今抱いている彼は私の父です!
たぶん、別の一族だとかそういうのを内心怖がっていたから、翼を出すことができなかったのだと思うのです。
私は父の小さな身体を抱きしめ、再会の喜びをかみしめるのです。
私の名前はフィリアス・ミスリルと申します。
ローラ王国出身の冒険者見習い。15歳です。
父の名前はファルコ・ミスリルと申します。
私たちの親子仲は、きっといいです。




