走れ
私の名前はフィリアス・ミスリルと申します。
ローラ王国出身の15歳。淑女見習いでした。
今は宿敵と戦うために血のつながらない伯父とともに旅に出た国外逃亡者でございます。
「おじさん」「なに?」
「敵」「あいよ」
どうせ気づいているでしょうけど、念のためです。
私は東方片刃剣に手を伸ばさないように注意しつつ、光霊を旋回させます。
俯瞰視点での戦闘にはすでに慣れました。叔父との連携を今は磨いています。
「お父さん。無事に国外に出たみたい」「選考する形になっちゃったな~」
「先行?」「そーともいう」「しっかりしてよ。おじさん」
旅慣れた伯父のお蔭でずいぶん助かっていますが、このしゃべり方はいつものことのようで。
「次はどこに行くの」「この先に封印遺跡がある。弟が昔倒しそびれた魔物の封印があるからそれを回収する」
七つの封印と一つの『封印人格』なるもので相手の転生を妨げる術の肝、七匹の魔物を封じるための『印』を求めて私と伯父は旅をしています。
父たちも活動を開始しているはずなのですが。
「ね。空が暗くない? おじさん」「走ろうか」
雨が降ることもあれば寒い地方では雪も降ります。
私たちは夜露や雨をさけ、旅を続けます。
「ファルコがやばい」「え」
「てか、あいつらがやばい」「えっ?」
「いそげふぃりあす」「うん!」
私たちは再会の喜びを感じるより、救援のために走るのです。




