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お父さんは『勇者』さま  作者: 鴉野 兄貴
『黄金の鷹』と『真銀の隼』
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牢獄の戦い

「いい加減に寝てください。ファルコ様」「ええ~」

「子供は寝る時間です。こっそり毛布差し入れてあげますから」「ありがとう!」


 兵士たちはファルコに同情的だった。

最初はかなり思うところがあったのだがファルコの人柄に触れて感化されたらしい。

籠絡されるのが早すぎる。もっと気張るべきだ。


「あ。そうそう」「なんでしょうか。後でお菓子もこっそり持ち込みますから今日は寝てください」


「次の見張りは、ちょっとだけ待って」「許可できません。逃げる気ですよね」


 両手を合わせて『お願い』と頭を下げるファルコに一応職務を思い出す兵士たち。

足元は糞便がこびりついた不潔な床だがファルコは気にしていない模様だ。

チーアことユースティティアと違ってかなり待遇が悪い。

『人死にが出るのはちょっとこまるんだけど』

あの空の彼方の戦いの決着。『サワタリ』には多大な打撃を与えたが倒していない。

つまり、残った下位魔神がいたら真っ先に自分を消しに来る。

面倒だなぁと彼はぼやきそうになりながら被害をもっとも減らす方法を考えていた。

ここは狭い。サワタリが全力を出すには難しく、小柄な自分には有利だ。

ここは防衛の要だが牢獄の例にもれず道は狭い。兵士たちは各個撃破されてしまうだろう。

「大変だ! 侵入者が!」「……」

ファルコは心の中で仲間たちの顔に墨で『×』を入れたくなったが自制した。

ここまで自分の仲間たちは考えなしではない。

それより一緒に牢屋に入れられたチーアのほうが重要だが彼女の場合『手を出されそうになったら勝手に外に出れる』ので心配する必要はない。

せいぜいこの国の『姫君』に気を付ける程度だ。


「応援頼む! 無茶苦茶強い小娘だ!」


 ファルコの頭の中にある『ものすごく強い小娘』と言えばロー・アースの妹であるエフィー=ネイ。

しかし彼女もまたそこまで考えなしではない。容姿的に王城に入るのはいろいろ拙い。

あと該当する人物と言えば。

「あの子だね」軽くため息。ぴょんぴょんと錠のあるところをめがけて飛ぶ。

手足を縛る鎖と錠前はすでに外れている。兵士たちも二五回目であきらめた。

「フィリアスじゃないだろうね?」

少し不安になる。父親として娘が王城侵入犯になるのは辞めてほしい。

しかし、彼の知るフィリアスは『無茶苦茶強い小娘』ではない。

同世代の女性からすればものすごく強い部類かもしれないが、彼から見ればまだ未熟だ。


「ねね。サワタリ。どうしよう」


 彼は自らの影に潜む『サワタリ』の分身に問いかける。

「悟っていたか」「影がくれはぼくらや魔族ダークエルフの得意技」

「できたら、ここで暴れるのは辞めてほしいんだけど。このお城は壊したくないんだ」「ふふふ」

「お菓子あげるから」「ダメだ」


 舌戦は兄のほうに分があるらしい。

「仕方ない。やるか」兵士たちも離れているし、被害は抑えられるだろう。

ファルコは嫌そうに告げると短剣を召喚する。

薄暗く狭く、死臭あふれる地下の中で異形と異質が刃を交える。

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