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第三話


 「俺はマッグケーン・タキィ・ロッティリア・モスバーグ!ケーンって呼んでな、キーディアちゃん、ルーセルくん、キュリーちゃん」


 ファーストフード店がすべて合併したら彼になるのかな。

 なんてことを考えた私は悪くないと思う。日本の知識を持つ私としてはこの人のフルネームを聞いて思うことはただ一つ。なんて美味しそうなんだろう。

 あー。こっちにはあんなに種類が豊富なハンバーガーなんて無いし、こんな名前聞いたらめっちゃ食べたくなってきた。似た素材で出来るかなあ…。


 「っていうか、この間はひとの事ガン無視してどっか行っちゃうとかひどくね!?俺、あんなに綺麗に存在無視されたことなんかないんだけど!」

 「この間?マッグケーン殿、わたくしには貴殿と会った覚えがございませなんだが...」

 「うん。僕も覚えてないですねえ。どっかでお会いしてましたっけ?」


 うわ。本気でORZの体勢になったひと初めて見たよ。

 まあ、ルーセル先輩はともかく、キュリーは本気で言ってるからなあ。彼女は徹底してるので、あのときにきっと本気で認識しなかったんだろう。ルーセル先輩は分かってて便乗してる似非王子様だけど。


 っていうか、この人、モスバーグの王子様だったんだ。

 この世界、確認されてる大陸は3つあって、一つはここ、ルフェダオス学園のあるクーペ大陸。3つの内最大の大きさで、8つの国がある。モスバーグは、この国の隣国の隣国の隣国で、まあ知ってるけど遠い国だ。地球と違って大陸をわたるなら魔術補助のついた帆船のみ。大陸を旅するなら馬が必要なここでは、そんな遠い国には行かない。魔獣の危険もあるし、一般人じゃまず無理。

 ちなみに名前で階級がわかるんだよね。王族は、名前・父または母の名字・王族としての名・国名って4つの名前で構成されてる。貴族は3つ。キュリーなら、キュリー・ベルセルクル・レオナルド。先輩ならルーセル・ミュゼ・クエイーン。例えばキュリーなら、ベルセルクル侯爵レオナルド家のキュリーってことになる。先輩はミュゼ子爵クエイーン家のルーセルね。

 

 「今のほんとひどい。俺あんたらになんかしたっけ?なんもしてねえよ...声かけただけじゃねーかよー」

 「ああ!思い出しましたよ!行きなり声をかけてきてディアに無視されたにも関わらず食事まで一緒にしようとしてたんでしたね!モスバーグの王子殿下とは露知らず失礼しました」


 ORZ から___になってる。こんなに薄っぺらくなるなんて、ルーセル先輩はやっぱり外面が良いだけのお腹真っ黒だ。ちょっと前にキュリーになれそめ聞いたら、全く覚えてなかった。最初の頃のルーセル先輩はどんだけ認識してもらえなかったんだろ。 

 それはおいといても、そんな遠い国から何でこんなとこにいるんだ。


 「貴殿は服装からして騎士科なのでございましょうが、わたくしは騎士科に殿下がいらっしゃるとは存じ上げませなんだが?」

 「あー.........知らねえと思...いマス。俺、3年に転入したばっかだ...デスシ」

 「へえ。そうなんですねえ。僕はてっきり、ディアにちょっかいかけるバカな男かと」

 

 あ、だから、先輩もキュリーもそんなにその人に圧力かけてたんだね。一国の王子にそんなことしていいのかなとも思うけど、ま、いいよね。こっちも魔術科の王子様と騎士科の女王様だし。本物敬語になってるし。


 「マッグケーン先輩、私のペアになりたい理由は何ですか」 

 「そりゃもちろんキーディアちゃんが可愛っ.........の実力が教師に評価されてる通りなら俺も騎士として背中を預けられると思ったからです!」


 可愛いって最後までいってもらえなくて残念だったなあ。この二人といるようになって、可愛いなんて二人しか言ってくれないからさあ。ちょっとしゅんとなっちゃうね。まあ、あんなに殺気出されればそりゃ止めちゃうよ。私も怖かったもん。


 「私、孤児ですけど大丈夫ですか?嫌がらせとかあるかもですけど」

 「キーディアちゃんの為ならいくらで.........俺の身分知ってて嫌がらせしてくるやつはいねえと思います」


 懲りないひとだなあ。

 まあ、本人が大丈夫なら、あとは女王と王子の見定めだけ。

 ルーセル先輩に視線を向けると、そりゃいい笑顔で笑ってらっしゃった。キュリーもキュリーで、バックに薔薇が見えるよ。


 「身分的なものは仕方ないから、嫌がらせとしては王子に取り入ったとかそこらだね。それくらいなら僕とキュリーがいればなんとかなるだろうし、うん。あとはキュリー、よろしくね」

 「どのレベルで試そうかの、ルーセル、君はどう思うか?」

 「もちろん、対人戦最大レベルだよ。ディアに足手まといなんて付ける気ないからね」

 「ふむ、そうであるな。マッグケーン殿、今日の放課後闘技場にて見定めさせて頂こう。命が惜しいのであったら、しかと御覚悟を」


 怖.........!




 ってわけで、マッグケーン先輩、ギリギリ合格しました。

 いや、私もルーセル先輩も見てたんだけどね。魔術戦ならともかく、剣と剣の戦いなんて追える目は持ってないよ!私の目にはリアルドラゴン○ールの世界だった。音は聞こえるのに、何してるのか分かんないんだもん。キュリーってスーパーサイ○人とかに、いや、キュリーの家の人たちならなれそうかも。

 今、マッグケーン先輩は闘技場の真ん中で不満を叫んでる。


 「.........の、一番強かったやつより強いって、それって人間って言えんのかー!?ってかそもそも、このレベルのやつが学生ってありかよ...!」


 うん、初めてあったとき同じこと思ったよ、私も。

 知り合ったのが、小遣い稼ぎ(アルバイト)のときだったからなあ。化けも、規格外な二人にルフェダオス学園の子だよねって声かけられたときの、あれは.........思い出すのやめよう。

 私、孤児院にあった本とか、記憶が戻ってからがっつり読んでたからなあ。私がミレス伯の後見を受けるようになって、本とか教材はやたら寄付されてたし、小遣い稼ぎ(アルバイト)は実は学園入学前からやってたんだよね。もともと二人は私の事知ってて、学校で見つけてびっくりして声かけたんだって。


 「キュリーには及ばないみたいだけど、どう?使えそう? 」

 「ここの騎士科の者共よりはよほど使えような。国から国へ移動するに相応しき実力はある。むしろ、対魔獣戦の方が強いであろうよ」

 「そうなんですか?私には何にもわからなかったんですけど」

 「人と戦うとき、相手の動きを予想して人は動く。意識無意識に関係なくな。これは理解できよう?しかし、魔獣はどうか」


 こっからキュリーの講義が始まった。

 魔獣って言うのは、もともと植物だったり動物だったり、もちろん人間だったりする。それが魔に当てられた状態になると魔獣化する。どうして魔に当てられた状態になるのか、とかは、お偉い学者さんたちの最大の研究テーマであるので、今のところ不明。魔素があるから、魔力があるからそういう現象が起こり得るって言うのが通説だけど、その辺は勇者でも聖女でもない私には全く興味がない。

 それで、魔獣化すると、今までの全てがなくなって、地球で言う薬物中毒者みたいにただ魔を求めるようになる。この世界の全てに魔力は宿っているんだけど、そのなかでも行使できるほど強いのが人間だ。魔獣は本能でかぎ分け、ことさら人間を襲おうとする。

 初めて見た魔獣は、狼みたいな、だけど違う異形で。あの魔術師に助けてもらったから無事だったけど、あれから.........ああ、あのときに前世の記憶を思い出したんだった。

 ただの10歳ならトラウマになったのかもだけど、妙に冷静にこの世界で生き残るにはどうするべきかって考えられたのは記憶のお陰なんだろう。

 そう、魔獣は本能で襲って来るから、動きに予想がたてられない。野生の動物の方が賢く動き回るのに、わざわざ訓練された討伐隊が出るのは、その運動能力がけた違いに高いから。だから、彼らは対魔獣戦を意識した訓練をこなしてる。極端な話、人間相手には誰にも勝てないが、魔獣相手なら勝てるひとやその逆もあり得る。ってことらしい。


 「じゃあマッグケーン先輩は魔獣戦の訓練をずっとしてたってことですか?」

 「極端な話ゆえ、一概にそうとも言えぬ。わたくしのようにどちらの訓練もうける人間もいることもあろうし、な。さて、わたくしはキーディアへの害にならず、足手まといにもならぬであろうこの男ならキーディアのペアになることに異存はないが、ルーセル。どうか?」

 「うん。僕もいいと思うよ。あとはディア次第。.........相変わらず、戦っているときの君は綺麗だった」

 「ふふ、ルーセル、当たり前であろう?わたくしはルーセルのためにこそ戦いに在るのだから。美しさも戦いの要素の一つ.........愛しておるぞ、ルーセル」

 「ふふふ、僕も愛してるよ、キュリー」


 ひとのペア騒動にかこつけていちゃつくんじゃねえよ。

 あーあ。ルーセル先輩の師匠さんが結婚してなかったら本気で狙うんだけどなあ。略奪婚は嫌だしね。

 背後で発生したピンク色の気配をスルーして、未だにぶつぶつ言ってるマッグケーン先輩に、近寄る。私の気配に呟くのはやめたけど、視線は私通り越して背後に止まったまま動かない。


 「気にしたら負けです」

 「や、でもあの二人の」

 「目にしたら毒です」

 「見ようとしてなくても聞こえ」

 「耳にいれたら駄目です」

 「それは無」

 「出来なければ死にます。これから先もちょくちょくこうですよ。邪魔したらお二人とも、あー.........怖いですから」

 「.........死ぬ気で頑張ります」

 「はい。よろしくお願いします、マッグケーン先輩」


 とりあえず、ペアゲットだぜ!


 後日、ルーセル先輩に誘われて、セルマ先生にペアの報告しに行ったんだけど、セルマ先生動揺→マッグケーン先輩を睨む→先輩たちを物陰に連れ込む→私にはまた吃りながらペアが出来た祝いの言葉をくれるという動きをした。

 戻ってきたマッグケーン先輩はボロボロで、ルーセル先輩はまたぶふぉって笑いだしてて、キュリーは修行が足らぬと嘆いていた。

 何があったんだろう?





 

 

 

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