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第一話

初投稿です。転生とか書いてみたくて始めました。

どうぞよろしくお願いします。

 「初めまして。私はキーディアと申します。国立ルフェダオス学園にかようことになりました。どうぞよろしくお願いいたします」


 なんでいきなり自己紹介をして居るかと言うと、私の複雑な事情のせいだ。表向きの事情は、私が戦災孤児だと言うことだ。院長先生の話では、私は戦場となった村で母親に抱かれていたのを拾われたのだそうだ。まあ、私はあの頃2歳程度だったらしく、何もおぼえちゃいないんだけど。


 「ああ。勉学に秀でていると聞いておるが、学科はなんだね?」


 聞いてくるのは私の後見人...あしながおじさん的なお貴族様のミレス伯爵閣下。

 

 「魔術学科です」


 この世界、貴族が優秀な子供の後見人になることは一種のステータス、らしい。

 私は貴族じゃないからさっぱりわかんないけど、実際恩寵を受けている身としては何も言えない。ここまで、なんだか私が優秀だって自慢したみたいだけど。

 読み書きは気付いたら覚えてたから、どのくらいの成長速度だったのかわからないけど、少なくとも算術に関しては本気を出せば、この世界では学者にも勝てるレベルだしね。優秀だって自慢したっていい、と思う。


 「ふむ。儂が後見人を勤めるのだから、我が伯爵家の名に泥を塗るではないぞ」


 閣下の言葉に短く返事をして、頭を下げる。

 見えてないけど、多分満足げに頷いたんだろう。首飾りの揺れる音がした。閣下はそのまま立ち上がって部屋を出ていき、顔合わせは終わった。

 

 ダンディなオジサマだったなあ。ミレス伯爵閣下。

 あ、今は孤児院に帰ってる途中。

 入学式までには寮に入るが、ギリギリまでは孤児院のみんなといたいのだ。出来れば院長先生と働きたかったんだけど、身分差もそうだし金銭的理由とかもあって、ミレス伯の後見人の申し出を断るわけにはいかなかった。

 かつては円満家族だったし、兄弟に憧れてたから、たくさんいる仲間を私は家族だと思ってる。


 ああ、もう。

 厨二病っぽくて憤死しそうだけど、つまりは私は、異世界に転生したらしいのだ。

 10歳の頃、突然思い出した記憶は、キーディア自身が経験したと断言できるくらい生々しい感覚をもってよみがえった。あのせかいの《私》は、鈴木彩音という20歳の女で、日本という国で大学に通っていた。大学の帰りに通り魔に刺され、死んだのだ。

 この体が刺されたわけでもないのに、痛みさえも思い出したんだよね。


 閑話休題。


 そもそも現代人の知識を覚えているんだから、この歳の知識レベルなら楽勝である。10歳時の脳はスポンジみたいに、いろんな知識を吸収してくれたし。

 そういえば、この世界には魔術なんて要素があるんだ。

 国立ルフェダオス学園には私が行く魔術学科のほかに、騎士学科、医学科、普通科がある。

 私が魔術学科を選んだのは、体を鍛えてない女の私が自衛するには、魔術が一番都合がいいし、職種によっては稼ぎが見込めるからだ。せっかく貴族の後見で金をかけず最高学府に通えるんだから、なるべく将来性のあることを学んで孤児院に恩返ししたい。

 

 まあ、前に魔術師が、腕を一振りしただけで生み出した炎で魔獣を撃退したのを見たときから、憧れがあるんだよね。

 いやあ、あの術はかっこよかった。




 あれから6ヵ月、送別会をしてくれたり、寮に入って先輩方に歓迎会してもらったり、入学式があったり、授業が開始されたりしたけど、特に面白いことはなかった。

 いや、送別会は嬉しかったし、歓迎会は楽しかったけど、入学式は眠かっ...寝てただけだし、授業も論理とか一般教養ばっかりだった。

 実際、私としては今からが楽しみなのだ。

 魔術の論理を6ヵ月間みっちり覚え、月末テストでは毎回満点をとり、テキストのほぼすべてを授業に先駆けて予習し、放課後には座学の教師と討論をし続け...いや、頑張ったな、私。

 6ヵ月という前例のないスピードで特例的に2学年上の魔術の実技に参加出来ることになった。

 そもそも、1・2年次での実技は1ヵ月経つ前に習得し終えてたしな。

 

 最近では10年に一人の天才とか、ルフェダオス………あ、この学園の名前は学問の神様からとってる.........の寵児とか呼ばれてるらしい。私に向かって言う人なんて居ないけど、友達がふざけて教えてくれた。


 「ディア、今日からだったんだね 」

 「ルーセル先輩...はい、よろしくお願いします」


 ルーセル先輩は魔術科3年の王子様とか呼ばれてる人だ。

 確かに流れる銀色の髪も、蕩けるような紫の瞳も、神様の采配であると言わんばかりに麗しい。

 ついでに性格も穏やかで紳士的、何て言ったらそりゃそう呼ばれるだろうなあ。私からしてみたら、単なる外面がいろんな意味で良いだけの男の子なんだけど。え、私はほら、普通だよ。ふつう。美形といたら存在感が霞む程度にはね。

 

 「今日からなのは幸運だったなあ、実技教師が変更になったから」

 「変更?老師ではなくなったんですか?」

 

 そうならちょっと残念だ。あのカイゼル髭の紳士に会うのも楽しみだったのに。


 「老師はお孫さんが生まれたから世話をするために隠居するんだって。それでね、新しく来る教師って言うのが」


 先輩がいいかけたとき、前に集まってる先輩たちの集団から黄色い悲鳴やら野太い雄叫びやらが聞こえてきた。微かに見える黒髪のひとが新しい先生なのかな。

 実技の授業だから闘技場に集まってるんだけど、フラットな場所だからあんなにひとが集まってると肝心の本人を認識すらできない。


 「あの人だと何で幸運なんです?」

 「ふふ、あの人はね、僕の兄弟子なんだ」


 ああ、なるほど?

 結局何が幸運なんだかわからないけど、ルーセル先輩は兄弟子が大好きなんだろう。つい生返事してしまったが、ルーセル先輩は気を悪くした風もなく前に向き直った。

 教師の名前はセルマというらしい。自己紹介中も声援が止まなかったのから、それしか聞き取れなかったが、まあ問題ないだろう。

 

 「......で、あるから、中級魔術の演習にはいる」


 たんたんと説明を終え、まず実力を図るために、順番に中級魔術を見せることになった。

 先を競うように並んでる人たちを遠巻きに、私たちは時間を潰すことにした。繰り出される魔術を眺めながら、先輩と恋ばなをする。訂正。先輩ののろけ話を聞き流す。

 この世界の魔術は詠唱によってではなく、魔力によって陣を描くことで構成される。陣はひとそれぞれ異なるが、なんの魔術かによって色が違う。水だったら陣は青、火だったら赤というように、隠さなければ何で攻撃してくるかまるわかりだ。私の陣はとっても描きやすくて、@だから、前までの実習訓練でも相手の魔術を判断してから反対属性ぶつけて相殺してたっけ。知識と早さなら、学生には負けないよ。多分。


 「キーディアです」

 

 孤児は姓を持たない。

 私たちが名字を手に入れるのは、結婚して相手の家に入るか、養子に入るかの2択だ。国立と言うだけあって平民も一杯いるが、孤児院に所属するような姓無しがここに入るのは色々と厳しい。やっと私の存在に気づいたのか、うるさかった集団がビックリしたように静まった。

 うん、聞こえてるから。何で1年がここに、孤児がとかそういうのはいいとして、存在感ないとかいうな。地味に傷付く。

 すでに演習を終えたルーセル先輩が後ろで笑ってる。私の内心を読んで笑ってるなんて、と非難の視線を向けたら、目に涙を浮かべて私の前方を指差した。

 

 「セルマせんせい?」


 振り向いたら、黒髪の美形がぽっかんとくちをあけて固まっていた。

 ......くっそう。あの弟弟子にしてこの兄弟子ありというくらいの顔の整いようだ。しかし、おそらく30近いのか、ルーセル先輩より色気が出ていて、セルマ先生の方が私好みである。いや、一番は彼らの美形な師匠(48)なんだけども。


 「あ、う、いや、き、キーディアだった、な。この、クラスなのか?」

 「いえ、私はまだ1年ですので同じ学年でもないです」

 「そ、うか。大丈夫、なのか。ていうか、じゃ、じゃあ何でここに」

 「3学年で習う予定の魔術はすでに習得し終えておりまして、こちらの方が勉強になるだろうと学園が参加を認めてくださいました。魔術論理の方は4年次の授業をルーセル先輩と受けておりますので、知識面ではご心配におよびません」


 先生、なにを動揺してるんだ。

 先生が一言しゃべるたびに後ろからぶふっとかぼふぉとかごふゅっとか聞こえてくるんだけど、ルーセル先輩、笑い死にしたりしないよね。危なそうだけど。

 とりあえず、私が最後みたいだし、これで今日は終わりだし、さっさと終わらせて小遣い稼ぎでもしよう。

 私は、あのとき見たあの炎を思い出しながら、陣を描く。

 作り出した炎はきっちり的だけを舐め、存在を焼失させた。


 「ふふ、僕と君はきっと、すぐにでも討伐演習に出られるねえ」

 「キュリーも、でしょう?」

 「当たり前だよ。僕のペアだもの。まあ行くなら、君のペアも見つけなきゃいけないけど」


 ルーセル先輩のところに戻ったら、行きなりそんなことを言われた。

 すでに討伐隊に紛れ込んで二人して小遣い稼ぎしてるから、実践経験も他と比べるよりあるんだけど。この学園のルールとして、実技演習に行くには二人一組のペアを2組以上集める必要がある。ペア相手は実際学園の生徒でなくても構わない。私はまだ実技演習に行ける3年ではないのでペアなんて探してもいないが、許可が降りるなら探さなければ。

 ちなみにキュリーとは、騎士科の女王様と呼ばれる女傑で、ルーセル先輩のペアで彼女。

 先輩と呼んだら、にっこり笑いながら呼び捨てするまで無視された。怖かった...。


 「先輩、今日この後用事がなければ、キュリーも誘って小遣い稼ぎ(アルバイト)でもしませんか?」


 授業が終わり、未だに囲まれるセルマ先生を置いてきぼりに、私たちは闘技場を後にした。





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