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私と店長の他愛もない話。  作者: 仮『どん』
クラスメートの人生相談。
9/41

#9 二日酔いの彼と単純な私。

はいまた更新遅れましたー。


すいません…ほんとにほんとにすいません。




朝。7時半。


私はいつも通り裏口からバイト先の喫茶店に入る。


身体中が痛い。余程昨日の重労働が堪えたようだ。


(最近全く運動してなかったからなあ。去年の今頃は健全な部活少女だったのに)


不健全な現在帰宅部の私は筋肉痛に顔をしかめ、身体中をバキバキと言わせながら店長の部屋に向かった。



〜ガラガラガラ


ドアを開ける。


〜グウウゥゥー、グゥウウゥー


そこには盛大なる(いびき)をかきながら眠る酔っぱらいの姿があった。


起きる気配は全く無い。


こいつはアテにならないな。

今日は自分で朝ご飯を作ろう。

店長に早々に見切りを着け、決意した私は店のキッチンに向かうと、食パンと冷蔵庫に残っていた食材で調理を始めた。



〜10分後。


それはそれは美味しそうなサンドイッチが完成。


食パンにスクランブルエッグとハム、レタスを挟んだだけの簡単なものだが、舐めてもらっては困る。


シンプルイズ・ベストだ。


無理に工夫するよりは、基本に忠実な方が良い。


「いただきます!」


静寂に包まれた朝の無人の喫茶店で1人朝ご飯。


自作のサンドイッチを咀嚼する。


〜パクっ、モグモグ……


……。


普通。


美味しくない訳じゃないのだ。

至ってシンプルなサンドイッチ。


ただ、いつものモーニングAと比べるとやはり数段落ちるのは確かだ。


あれもシンプルなメニューなのだが、謎に美味しい。


あのホットサンドのほんのりとした塩味を思い浮かべる。


だけども、目の前にあるのは至って普通のサンドイッチ。


うーん。寂しい。


そろそろモーニングAが恋しくなって堪らなくなってきたところで、自作のサンドイッチを一気に頬張りインスタントのカフェオレと共に喉の奥に流し込んだ。


午前8時。


朝食の後片付けも済ませ、私は学校へと出発した。


因みに出発前にもう一度見た店長は、やはり鼾をかいて絶賛爆睡中であった。



筋肉痛で苦しみながらも、学校の近くまでやって来た私は校庭のフェンスにへばりついている莉那ちゃんを発見した。


「おーい、莉那ちゃーん?」


莉那ちゃんはその声で私に気づくと、来い来いと手招きをしてきた。


どうやら野球部の朝練風景を覗いているようだ。



〜カキーン、カキーン


乾いた金属音が校庭に鳴り響く。


(ああ、皆健全な汗を流してるなあ)


私も運動不足を解消しないと。

疼く筋肉痛が余計に決意を固めさせる。


「あ!慧はっけん!頑張れー!」


そんな私の横で、莉那ちゃんが叫ぶ。


莉那ちゃんと志村君は同じ中学出身だったな。


「どこどこ?」


大人数の部員の中では、特定の人物を容易には見分けられない。


「ほら、あそこ!なんか投げてるでしょ?」


莉那ちゃんの指さす方向にはピッチングをする志村君の姿があった。


そう言えばピッチャーをしていると言っていた気がする。



〜ザッ、シュルルル、ズバァン!!


速いなあ。当たり前だが田舎のソフトボールチームとはレベルが違う。


「おーい、慧ー!」


私の隣で莉那ちゃんは叫ぶ。


志村君は少し恥ずかしそうにこっちを見て手を振っていた。


仲良いんだなあ。


中学時代の同級生が皆別の学校に行ってしまった私としては羨ましい限りである。

こうして、いつもとはちょっと違う朝を過ごした私は莉那ちゃんと教室に向かった。



とくに特筆することもない午前中の授業を終え、瞬く間に昼休みを迎える。


今日は菓子パンでも頂こうかしら。と、私は売店へ向かった。


結構色んな種類があるんだな。

目の前に並べられたパン達を見て何にするか迷う。


後ろにはどんどん人が増えており、早く決めないと怒られそうなので直感に任せて手を伸ばす。


選ばれたのは、あんパンでした。


やっぱりシンプルイズ・ベストですよね。


値段も安いし。


自販機でカフェオレでも買おう。と、今度は自販機に行こうとした時、後ろからふいに呼び止められた。


「鷲宮さん!ちょっと話したいんだけど」


振り向くと、志村君だ。


「話、って?」


「話って言うよりは相談なんだけどさ。実は俺――」



「おーい志村ー。監督が呼んでんぞー!」


志村君が何か言いかけた時、今度は横から声が飛んできた。


「分かった、今行く。ゴメン鷲宮さん。俺から話しといて悪いんだけど、良かったら明日また話聞いてくれない?」


「う、うん。別にいいよ?」


「ありがとじゃあね!」


それだけ言うと、彼は颯爽と私の視界から消えてしまった。


一体話とはなんだったのだろうか?



ま、いいか。


少し気になるけどこうしていても仕方ないので教室に戻ることにした。


午後は現国と現社の二科目だけ。


現国=現代国語、現社=現代社会。なんでそんなに現代を付けたがるんだろうか。


私には分かりません。



授業は六時限目の現社が退屈の余り睡魔が襲ってきてウトウトしてしまったが、とにかく今日も学校での一日が終わった。


午後四時。


バイト先の喫茶店の入口のドアを開ける。


〜カランカラン


目の前にいたのは、今にも倒れそうな表情でカウンターに突っ伏している店長だった。


「二日酔い、ですか?」


恐らくそうだろう、確認をとってみる。


「うん」


やっぱり。にしても、


「あの程度で二日酔いって弱すぎじゃないです?」


「……」


上手く反論出来ないのか、無言のまま。


「いくらなんでも店長ってアルコールに弱すぎなんじゃないですかー?」


面白いのでちょっと馬鹿にしてみる。


「い、いや違うぞ。あ、あれはギャラクシーウォーズと言ってだな。あれ一口で普通のビールの数倍のアルコールの強さが――」


「ただの生ビールですが?」


「!!」


店長はビクッと肩を震わせ、下を向いてしまった。


さすがに可哀想なのでフォローを入れておく。


「店長。良いじゃないですか。お酒に弱くたって。人それぞれじゃないですか」


「……」


依然彼は俯いたまま。


「店長!お酒に弱い男子って格好良いですよ!そう、今流行りの草食系男子です!」


「……」


それでも彼は顔を上げない。


ちょっと言い過ぎたかな。


なだめても、おだてても反応してくれない。


いい加減面倒くさくなってきたので、最終手段を使う。



「マスター!マスターは喫茶店のマスターなんでしょ?お酒なんか気にしなくて良いじゃないですか。マスターはマスターらしくマスターでいればもうそれでマスターなんですよ!」



マスター計七発。


文がおかしいとか、そんなことは気にしない。


要は店長が機嫌を取り戻してくれたら、それで解決なのだから。


「………!」


依然彼は無言のまま。


それでも俯いていた顔を上げ、キラキラとした瞳でこちらを見ている。


「マスター。一つ質問していいですか?」


「なんだね。彩音くん」


何だその喋り方。まあそんなことを気にしていたらこの人とはやっていけないのでここはスルーして、


「店長って本名なんて言うんですか?」


前から聞きたかった基本的なことを一つ。聞いてみる。店長は少し困った顔をした後、こちらを見てきた。


何時になく真剣な彼の眼差しに私は少し戸惑ってしまう。


何か聞いてはいけない理由があったのだろうか。


どうして良いか分からず私は無言で下を向くと。



「俺は、記憶喪失なんだ。大学一年からの記憶がない。だから名前は分からないんだ」


絞り出すようにして彼は言った。


え……?


信じられない。


そんな、そんなこととも知らずに私は――!



「あー、嘘嘘。そんな訳ないでしょー。もうすぐ騙されるんだから。彩音ちゃんは」



嘘……?


私が事態を飲み込めず、固まっていると。


「ハハハ、さっき僕を馬鹿にしたお返しだよー」


じゃあ僕は寝てくるから店を頼んだよ、と付け加えて。


彼は店の奥へと消えてしまった。


午後6時。


閉店の時間。


目を覚ました店長は店の前の札を"準備中"に変えるため、外に出てきた。



「店長!結局名前は何なんですかっ!?」


「だから僕は記憶喪失だと――」


「嘘は良いですから!」


「嘘じゃ、ないかもよ?」



再び真剣な眼差し。


私は固まってしまう。すると、


「アハハハハ!やっぱり騙されやすいな〜。名前はまた今度な!」


「もう、からかわないで下さい!心配したんですから」


「お休み〜!また明日ね」



店長は札を変えると、店のドアを閉める。


何だかんだ単純で騙されやすい私と、掴み所のない店長。



今日もまた、こうして一日が終わるのだった。

更新を待ってくださっていた方。ここまで読んでくださった方。


ありがとうございます!



皆様のお陰で頑張れます。



後、今回文がおかしいところがいくつかあるかもしれません。

見直しする時間が取れなかったので、次回までに少し修正するかもです。



ではでは!

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