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私と店長の他愛もない話。  作者: 仮『どん』
私と店長の他愛もない話。
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#2 私は一人で自己紹介。

喫茶店のある人通りの少ない路地から出ると、車の行き交う大通りが見える。


大通りに沿って続いている並木道をいつもより少し早いペースで歩く。


右を見れば行き交う車。左を見ればまだ開店前の居酒屋やスーパー。そして、ウチとは違い、どこか明るい雰囲気の喫茶店。


少し前まではこんな喫茶店を羨ましがっていた。ウチだって、もっと明るい雰囲気にして場所を選んで出店したら、客も増えるのに。


そんなことを思っていた。


でも、さっきの店長との会話でそんな考えは消えていた。



『もし、この店がもっと繁盛しちゃったら、君はこんな風に毎朝モーニングを食べることは出来なくなるんだよ?』


その通りだね。店長。あんなに美味しいモーニングAを食べることができるのは、私だけなんだ。


店長と二人の、あの静かで、心が暖まる場所を知っているのは、私だけなんだ。


そう考えると心が明るくなってきた。


店長に言いたい文句はいっぱいある。すぐに散らかすし、寝坊はするし、面倒なことは全部私に押し付けるし。


でも、店長のおかげで、こんな明るい気持ちになれてるんだ。


そこは感謝しないと。


5月、まだ初夏とは言えないけど暖かい日差しの下、澄んだ空気を思い切り吸って、珍しく走って学校へと向かった。



教室の時計は8時23分を指している。走ったからか、意外に速く着いた。窓側の一番後ろ。出席番号が一番最後の者にだけ許されている特等席に座る。


「やあ!お隣さんの、彩音ちゃん!」


横から聞き覚えのある声が飛んできた。


「莉那ちゃんか。おはよう」


「今日も1日仲良くしてねー!お隣さん!」


私らは町内会のおばちゃん的な付き合いか!と心の中でツッコミを入れる。


この子の名前は高橋莉那(たかはしりな)


常に明るい性格で顔も可愛いのだが、前述の言動のように、どこか町内会のおばちゃん的なところがある。(現に彼女は隣の席の私をお隣さん、自分の周りの席の人をご近所さんと呼んでいる)



〜1時間目


「出席とるぞー、はい、安藤!」

「はい」


「伊東!」

「はーい」

…………(中略)………「鷲宮!」

「はい」


「よし、全員出席してるな、じゃあ始めるぞー。起立!」


―ガラガラガラ――


「礼!」


(始めましょー)




授業。特に特筆すべきことはない。普通に平凡な学校生活。


……。


外を眺める。


(店長。今頃あくびでもしながらコーヒーのんでるんだろうな)


〜喫茶店



「ふぁぁあ〜〜、んん、眠気覚ましにコーヒーいっとくかぁー」


「……。ブェックション!!」


(今頃誰かが僕の噂を……してる訳はないよなぁー)



〜学校(2時間目)


「えー、ここはテストには出ないんだけどね。うん。そうそう、源義経にまつわる話で面白い話があってね……」


良く話が脱線することで有名な日本史の先生がその評判通りに話を脱線させている。


了解。テストには出ないのね。じゃあ常に合理性を追求する私はノートとるのやめて、ぼーっとしときます。



〜10分後


「えー、ここもテストには出ないんですが、そうそう、実は聖徳太子は……」


授業は未だに脱線中。


私は相変わらず退屈。


あまりにも退屈だから、この辺りで自己紹介でもしようと思う。(誰にだろう?)


私は、鷲宮彩音(わしのみやあやね)、高1。


中学までかなり田舎の故郷で過ごして、この春から都市部にあるこの高校へと進学した。

そして、山奥にある家からの通学はさすがに厳しいため、私は下宿をすることになった。

その下宿先が、そう、あの喫茶店の目の前にあるアパートだったのだ。



はい、軽く自己紹介終了。


出来れば店長のことも紹介したいんだけど、店長は私から見てもまだ謎ばかりで。


これから、その謎を暴いていきたいと思います。



〜喫茶店


「ブ、ブェックション!!」


(僕、風邪引いたのか……?)





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