#17 決戦当日。(1)
話はあまり進んでいません、申し訳ありません。
区切りが良くなったので出しました。
短いですが、是非読んでみて下さい。
喫茶店、朝の風景です。
――ピリリ、ピリリリ
朝、6時半。
携帯電話にセットしておいたアラームの音が、冷たい風と明るい光の射し込む部屋に、大げさに鳴り響いた。
「ん〜〜」
私は携帯のクリアーボタンを押し、やけにうるさいアラームを止めると、上半身だけを起こし、ベッドの上で1つ伸びをする。
今日は志村くんと莉那ちゃんが、喫茶店にやって来る日。
2人が来る8時までには、店長を起こして、店を開けておかなくてはならない。
私はむくりとベッドから起き上がると、早速朝のランニングを開始すべく、上下共にまだ新品のジャージに着替えた。
タッタッタッ……
まだ少し冷たさが残る初夏の早朝。
周りのひんやりとした空気を切り裂いて、私は町内を駆け抜ける。
さあ、どうです。
この健康的な姿は。
火曜日から始めて、今日で5日目。
毎朝10分のランニングは、最早私の習慣になりつつあるのです。
ランニングを終えると、汗を流すべく冷たい水でシャワーを。
流石に毎日毎日こんなことをしていると、水道代ももたないので、これは学校が休みの日だけの特権ということで。
だから、ちょっとばかしの優越感を味わえる。
5分間の冷たいシャワー。
以上、爽やかな朝を終え、手短に身支度を済ませると、テレビの右上には"6:58"の時刻が表示されていた。
そう。
ちょうど、占いカウントダウンの時間です。
私の星座は乙女座で。
今日の運勢は6位だった。
まあ、普通の順位。
運気を上げるポイントは、身近な人の発言に耳を傾けることらしいけど、身近な人=店長の発言なんか、耳を傾けても何も得られないと思う。
「ま、いいか」
私はテレビを消すと、恐らく絶賛爆睡中の店長を起こしに行くべく、自分の部屋を後にした。
◆◇◆◇◆◇
コーヒー豆が微かに香る、静かな朝の喫茶店。
そのカウンターの奥からは、今日も美味しそうな匂いが漂ってきます。
店長を起こした後、窓際のカーテンをいくつか開けて、僅かな光を浴びながら店の掃除に勤しんでいた私は、一旦手を止めるといつものカウンター席へと向かった。
「はい、いつものね」
「あ、今日もありがとうございます。……先生」
「え?今さらっと先生って言わなかった?」
「いってないへふよー」
目の前にはいつものモーニングA。
ほんのり塩味の効いたホットサンドを食べながら、私は適当に返事をする。
「やっぱり先生の作るホットサンドはおいしいです」
「ね?いま絶対に先生って言ったよね? やめてよ。僕史ワースト5に入る黒歴史を掘り起こすのは」
「むむ。次の金曜はもうテストですかー。早いですね。赤点を取ったら夏休みに"特別な授業"を受けなくちゃいけないらしいです。頑張らないと」
「無視した上にさりげなくワード混ぜてくるのやめて、お願いだから」
どうやら今日1日は、店長より優位に過ごせそうである。
◇◆◇◆◇◆
「なかなか来ないねぇ」
「そうですねー。ヒマだからしりとりでもしますか?」
現在、8時20分。
約束の時刻を過ぎても未だに姿を現さない2人だが、どうせ寝坊とかそんなところだろう。
まあ、気長に待つとしましょう。
「じゃあいきますよー。 “しりとり”」
「“鳥人間コンテスト”」
「……、ストレッチ」
「ツチノコ大発見」
「…………、え?いま何て!? ていうかこのしりとり何か変ですよね?」
「よね……ヨネ……? ん、米○涼子」
「」
「どうしたの?彩音ちゃん」
「降参です」
その言葉を聞いて、得意げにコーヒーを啜る店長。
まさか勝ったとか思ってるんじゃああるまいな。
ルール改造に加え名詞以外の語句の使用まで許可されたら、埒があかない。
大人な私は、あえて自ら身を引いただけ。
私はふうっと息を吐き、ふと目を閉じる。
瞼の裏には、アンティークな時計の秒針が時を刻む音と、欠伸を噛み殺す店長がスポーツ新聞をパラパラと捲る音だけ。
――静かな音が、共に程よく調和する喫茶店。
〜カランカラン♪
そこに突然、軽やかな鈴の音が響いて、私と店長の束の間のひとときは一時の終わりを告げる。
「「お邪魔しまーす!」」
そして今度は、志村くんと莉那ちゃんの2人が店に入ってきた。
この瞬間から、私と店長は恋人同士(仮)。
決戦(?)の火蓋が、いよいよ切って落とされるのです。
→続きます。→→
ここまで読んで下さった方。
更新を待って下さった方。
皆様のお陰で頑張れます。
今回はあまり話が進んでいませんね、スイマセン。
喫茶店の朝の風景を書いてみたら、区切りが良くなったので1話として更新したのです。
次はしっかりと話が動くはずですので、長い目で待っていて頂けると幸いです。
ではまた!