カレン・ワトソン *入学式*
カーテンの隙間から洩れている光で目が覚めた。寝ぼけた目をこすって時計を見ると、7:00ちょうど。あと一時間ぐらいで学校に着く予定だ。隣のベットを見るとマリアはもう起きだしていて、朝食をとっていた。
「おはようマリア。」
「おはよう。朝食、カレンの分も取ってあるよ。」
「ありがとう。」
銀色のプレートの上に乗せられていたのはサンドウィッチとコーンスープ。手早く食べてしまうと、寝巻から私服に着替える。カストレア学園は基本私服の学校だ。ただ、チームに所属すると指定された制服を着ることになるらしい。一通りの身支度を済ませると、電車のアナウンスが鳴った。
「このたびは寝台特急カランコエをご利用いただき誠にありがとうございました。間もなく、終点カストレア学園高等部。お降りの際は忘れものに注意してください。」
しばらくすると、速度が下がってきた。軽快な警笛と一緒にカストレア駅と書かれた看板と、赤と白の横断幕が見えて来た。
ホームは沢山の新入生であふれていた。皆近くにあったカートに荷物を乗せて出口を目指している。最初の生徒が出口を通過したあたりで、きき馴染みのない弦楽器のような音と、笛の音が聞こえて来た。さらに、テンテンと太鼓のような音や、シャンシャンと鈴の音のような音も重なって、華やかな音楽になった。
「ねぇ、マリア。この曲は何だと思う?あんまり聞いたことない音楽だけど…。」
「たぶん、日本の民謡だね。それを現代風にしてある。ギターとか日本国外の楽器も使ってるんじゃない?」
ようやく出口にたどり着くと目の前には見たことない異国の風景が広がっていた。
「な、なんじゃこりゃ。」
両脇には一面のコスモス畑、その間に等間隔に並べられた赤い柱の上には仮装した人たちが立って、手に何かを持って踊っている。赤と白の紙吹雪が宙に舞って、
「ここはドイツじゃない…。」
と、言ってしまうほど異国情緒にあふれていた。表現するなら私のイメージの中国と日本とタイとインドをごちゃまぜにした感じ。
「すっげー。天狗だの、キョンシーだの仮装手ぇ凝ってんなぁ。」
隣でマリアが感嘆しているけどなんのことかさっぱり分からない。とりあえず流れに身を任せて前に進んでいくと、場違いな洋風の立派な入り口が現れた。中に入ると馬鹿でかいホールに通じていた。壇上には教職員と、それぞれ違う制服を着ている生徒が右往左往している。全員ががホールに入ったのが確認されると、外の演奏がやみ、入学式が始まった。