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VELLFIRE  作者: 和菓子
2/4


 ロアノヴァはその頃、ターゲットの場所に向かうため、階段で三階まで上っていた。

 螺旋階段。

 手摺りから身を乗り出し、階下から迫る追手を撃ちながら上る。

 四階の踊り場に着いた。

 続けて走る。上る。

 手摺りから火花が散った。

 反応したロアノヴァが下に向けて撃つ。

 人間が階段坂を転がる音がその方から響いてきた。

 五階に着いた。踊り場を抜け、廊下へ進む。

 今まで通りの赤いカーペットの回廊を折れて折れて、三階折れたところに兵が二人待ち構えていた。

 二人の兵は巨大な扉を挟んで立っていた。あの扉がターゲット、ジョージ・ハイントンのいる部屋らしい。

 一人を撃って即座に銃弾で薙ぎ倒した。

 もう一人。AKを撃ってきた。

 撃とうとしたが、トリガーを引くと銃身から情け無い、乾いた音が鳴った。

 弾切れした。弾切れしたので腰のベルトに装着したバタフライナイフを投げた。

 兵の腹に突き刺さった。悲鳴を上げている隙に走り寄り、突き刺さったナイフを抜き、それでこめかみを貫いた。

 白目をひん剥いて倒れる兵を興味なさ気に一瞥した後、ベレッタのリロードを行った。

 とても慣れた手つきで、完了まで二秒と掛からなかった。

 リロードが終わり、銃のグリップを握り締めると、扉を蹴り破った。

 白の壁に赤の床。暖炉の火が揺らめき、パチパチと小切れの良い音を立てる。

 誰もが羨望する程の大きなベッドの横のアンティークテーブルで、館主、ジョージ・ハイントンが顔を赤く染めて、ワインをチーズと共に嗜んでいた。

 ジョージ・ハイントンはロアノヴァが来たのを見ると豪快に笑った。

 笑いの意味が判らず、一瞬当惑した次の瞬間、後ろから何者かの太い腕で首を閉められた。

 チョークスリーパー。

 ロアノヴァは構わず、後ろの者に銃口を向けた。

 すると、突き飛ばされた。床を転がってから体勢を立て直す。

 顔を上げて、相手を見る。

 アジア人らしい顔立ち。

 世界の荒事を知り尽くしたような、野蛮で鋭い目つき。


 グルカ兵だ。


 ジョージ・ハイントンが言ってまた笑った。


 グルカ兵。

 ロアノヴァは思い出した。

 インドで四十人のバスジャック犯を相手にしたという、世界屈指の強さを誇るネパール山岳兵……。

 立ち上がり、改めて相手と対峙する。

 自分の体の動きを見られている。じっくりと。

 筋肉。呼吸による肩の上下。獲物を観察する豹のようだ。


 動いたら殺す。


 猛禽の如き眼光が言う。

 金縛り。硬直して動けない。

 だが、構うかと自分を叱咤して後ろに退がった。

 ベレッタを放つ間合いを取る為だ。奴に近づかれたら銃も糞も無くやられてしまうだろう。

 ロアノヴァとグルカ兵との距離、六メートル。

 しかし、その六メートルの距離がグルカ兵によって一瞬にしてゼロにされた。

 目の前で無表情に笑うグルカ兵。何という凄まじい脚力だろうか。

 ロアノヴァが驚愕してる間に彼女に強力な一打が打ち込まれた。

 リバーブロー。

 これを間一髪で身を捩って避けた。

 再び後方に退がるが、グルカ兵がこれについてきた。


 次の瞬間、唐突に銃声が室内に轟いた。

 沈黙がわずかに場を支配した後、グルカ兵が地に伏した。

 硝煙がロアノヴァの足元……ヒールの爪先に立てられたベレッタの銃口から立ち昇る。

 ロアノヴァはリバーブローをもらう刹那、手にしていたベレッタを縦に立てて床に落とし、ヒールで受け止めた。

 そして退き様、爪先で……引き金を引いた。

 練磨された殺し屋のみが成せる業……。

 だが、彼女が振り返るとすぐそこにルガーを構えて冷笑するジョージ・ハイントンの姿があった。


 死ね。


 再び銃声が鳴り響いた。

 

 


 

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