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VELLFIRE  作者: 和菓子
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何でこんなん書いたんだろ?



 ラスベガスの午前一時。

 夜闇が都会の喧騒で照らされる。

 星のように散りばめられた、淡く、鋭い光が四車線の国道に降り注ぐ。

 歩道で飲んだくれの若者、派手なファッションに身を包んだ娼婦、目を血走らせたギャング、様々な人間が交差する。

 歩道の直ぐ横の車線で、タクシーの群れが列を成し、一車線を占拠する。

他の三車線で無数の多種多様の車が我先にと横行し、闊歩する。

 その中を、一台のVELLFIREが疾走する。

 都会の光を艶やかに反射する漆黒のボディが野蛮なスポーツカーを抜き去る。ギャングを乗せて暴れる下品なバンの群れを抜け出る。

 雑多な車がおびただしく蠢く中で、そのVELLFIREはあたかも四車線を独走しているかのようだった。

 運転席に二枚目の白人男性ニコルが、助手席にブロンドの女ロアノヴァが座る。

 ロアノヴァがドアガラスの移り行く摩天楼の景色を眺める。

 ニコルはそれを一瞥した後、口元を僅かに緩ませ、微笑んだ。

 二人は殺し屋。

 仕事へ向かう最中だった。

 とある密輸業者からの依頼でラスベガスの少し外れにある、豪邸の家主を殺しに行くのだ。

 ターゲットの名はジョージ・ハイントン。

 私兵を使ってクライアントの業務の商品を強奪し、売り捌いたのだという。

 ロアノヴァが前に向き直り、ベレッタを腰から抜いて、その銃身をハンカチーフで念入りに磨きだした。



 ラスベガスを出て、少し走ったところの山間にコロラド川が見えた。

 石橋を渡る途中で巨大な門が立ちはだかった。中世ヨーロッパ風の無愛想な鉄門だった。門は開いていたが、その前にAK軽機関銃を持った二人の門番がいた。

 その二人が車の前に出たので、それに従って止まる。

 しかし、ロアノヴァがドアガラスを開け、その隙間から腕を出し、先程手入れしたベレッタで撃った。

 二発撃ち、門番二人それぞれの額に一発ずつ命中した。幸いにも、噴き上がった血飛沫がVELLFIREの車体を汚す事は無かった。

 ロアノヴァが冷徹に澄んだ眼差しを死体からニコルに移す。

 門を抜け、更に進むと、石造りの巨大な城が見えてきた。

 あれがターゲットの住む豪邸だ。

 噴水が建った無人の前庭の木陰に車を置き、外に出る。

 夏が過ぎ去った初秋の夜は涼しくとても心地良かった。

 先程門番を撃ったのがばれたのだろうか、冷涼な闇をサーチライトが照らし出していた。

 二人はそのサーチライトを縫って進み、城の東に回りこんで外階段を上がった。

 が、踊り場に一人、男がいた。

 男は二人を見つけるなり、無線を使おうとしたが、ニコルに顎をダガーナイフで突き刺された。

 一瞬痙攣した後、聞くに堪えない低い呻き声を喉元で鳴らしながら倒れた。




 その頃、二人にターゲットにされている家主ジョージ・ハイントンは寝室で独り赤ワインを飲みながら、高笑いを上げていた。

 金だ、金だ、とチーズを貪る。

 脂肪を満載した腹でスーツが張り裂ける寸前だった。

 サファイアの指輪がチーズで汚れていた。

 私兵の一人が侵入者の報告に来てもまだ高笑いを上げていた。

 その様子はまさしく金に溺れた一匹の醜い豚だった。




 ニコルとロアノヴァは館内に入っていた。

 赤いカーペットを敷かれた幅の広い回廊を廊下伝いに颯爽と駆ける。

 現在午前二時。

 ターゲットの寝室は五階の最奥地と聞いた。

 今居る二階からはエレベーターか階段かで行けるようだ。

 曲がり角に差しかかった時、先行するニコルが急に止まったのでロアノヴァもそれに従った。

 ニコルがロアノヴァにピースした。

 『敵が二人』のサインだ。

 ロアノヴァが頷くと、ニコルが廊下からそろりと顔を出し、チャンスを伺い出した。

 ロアノヴァはその背後を確認する。

 敵の二人はウージーを持った私兵らしき男達だった。男達はしばらく話をして、ニコル達に背を向けて歩きだした。

 ニコルがロアノヴァの肩を叩くと、彼女は振り返った。

 合図をすると、二人は飛びだし、ニコルはグロック、ロアノヴァはベレッタを構えた。

 気配を感じた敵の二人が振り返ると同時に、銃撃戦が幕を上げた。

 ニコルの弾丸が一人の男のどてっ腹を貫いて倒すと、もう一人の男がウージーで応戦した。ニコルとロアノヴァが出た曲がり角へ転がると、壁が蜂の巣になった。

 そのウージーの弾切れと共に、再び出て撃つと、男の右太腿が吹っ飛んだ。

 よろめいた所をヘッドショットでとどめを刺すと、最初に腹を撃たれて倒れた男が起き上がろうとしていた。防弾チョッキを装着していたようだ。

 男は床に落ちたウージーを拾おうとしたが、叶わなかった。ロアノヴァが男のこめかみを打ち抜いた。

 大きい血溜まりが二つ出来上がった。

 一つ間を置いて、ニコルがサインをした。


お前がターゲットを仕留めろ

 

 手で拳銃の形を作り、その銃口を斜め上に上げる。

 それを見たロアノヴァは頷き、ニコルを離れた。 

ロアノヴァが見えなくなって暫くすると、ニコルが銃を上に向け、乱射した。

 空砲だ。発砲音が回廊に轟く。

 ニコルが敵を寄せている間に、ロアノヴァがターゲットを殺る。

 まもなくして、敵が現れた。

 三人の兵。先程ニコル達が出てきた廊下の曲がり角でAKを構えていた。

 咄嗟に横に飛びながら、撃った。

 

 グロックの弾が兵の一人の脳天を貫いた。

 AKの弾がニコルの残像を切り裂いた。

 着地と同時に転がり、さらに撃つ。

 五発撃ったが、その内の四発が残りの二人に命中した。

 だが、ニコルの背後から一人の男が迫っていた。

 その気配に気付いたニコルは即座に振り返り、発砲したが、銃を払い飛ばされた。

 直後繰り出された膝蹴りを、身を捩って避け、男の顔面を殴る。

 しかし、その拳を掴まれた。

 掴んだ男が嘲笑し、言った。


 よう、殺し屋。

 俺は傭兵のビル。死ぬ前に刻んどけ。


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