薺 なずな100年の恋
「何年たってもきっと姿形は変わっても必ず出会えるはず。」
彼はそう言い残し、私の前から去った。私の大好きな薺を一本残して
薺は別名ペンペン草。花言葉は 全てを捧げます 私は生まれた時からこの花で遊んでいた。
友達がいない訳ではなかった。ただ、つまらなかったのだ。退屈な日常がこのまま死ぬまで続くなら、いっそ死んだほうがましだと思っていた。そう、あなたに出会うまでは、
彼は、大学の講師だった。そんな彼に一目ぼれしてしまった。
図書館で資料を探す姿、学生と楽しそうに話している姿、一生懸命授業している姿。
その全てが私にとってすべてだった。彼は私の世界であって全て。そう思っていた。
愛しい。
ただただ愛しい。
そんな言葉がしっくりくる。
そんなある日、私が芝生に生えた薺で遊んでいた時彼がやってきた。とても悲しそうな顔をして。
「俺は間違っていたのか?彼女を愛したくても俺は出来ない。なぜこんなにももどかしいんだ」
そう言って泣いていた。私は、彼を抱きしめて慰めたかった。でも出来ない。
「彼女の笑顔を失う事が怖い、彼女は俺にとって太陽みたいなもので大切な人なんだ。」
私は、何も言えない自分にもどかしさを感じつつ彼に寄り添っていた。
そして彼は最後に
「彼女のいない明日を生きる事が出来ない。でも何年たってもきっと姿形は変わっても必ず出会えるはず。今度は、別の人間で愛し合って苦しまないように、一人の人間になろう」
そう言い残し、彼は去った。
私は、自分が許せなかった。何故何も言えないのか?ただ彼を見ているだけなんて、、、
私も生まれ変わったら人間になろう。
彼を見ているだけの蜜蜂ではなく、人間になって彼に会いにいく。
今度は私が彼を愛し抱きしめ、慰めてあげるんだ。
そうだな、彼に出会うまでは果てしなく時間がかかりそうだけど100年位かかるって神様が言っていたような気がする。
全てはあなたと出会うために。
愛してる。100年後に会いましょう。