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不思議VRMMOの電子アリス  作者: 摂理あまね


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16/20

ボス戦リプレイ 暴走の訓練用ゴーレム 1

 馬に跨ったピンク髪の少女が、ボス部屋への入り口を塞ぐように立ちはだかる。彼女は軽やかに馬から飛び降りると、こちらのパーティへの加入を求めてきた。


『NoNo_Channelからパーティ参加申請が届きました』


 振袖を思わせる和服風の衣装。淡い紅を基調とし、鮮やかな花柄が散りばめられている。足元は厚底の下駄。

 しかし、伝統的な着物とは異なる。裾の隙間からは太腿の付け根が覗き、激しい運動にも耐えうるよう大胆に改良されていた。


 髪は複雑に編み込まれたアップスタイルで、珊瑚色の(かんざし)によって優雅にまとめられている。うなじのラインが強調され、和の艶やかさを感じさせる髪型。


 可愛いものには寛容な私です。内心では既に許可を出していますが、最低限の面接は必要でしょう。


「何ができるの?」


「あたしの特性スキルは『踊り子』だわ! ダンスのアクションで、仲間にバフをかけられるもの!」


「採用」


『NoNo_Channelがパーティに加入しました。現在のリーダーはアリスです』


「それじゃあ、挑戦を始めましょうか」


「え、えっ、こんな簡単でいいの?」


「他に何が必要? 早くこっちに来て、踊り子のノノさん」


「あ、あぁ、うん! 今行くわ! お馬さん、ここで少し待っててくださいね」


 私、ゼータ、くもちゃん、そしてノノさんの四人は入り口を抜け、岩の緩斜面を進む。歩を進めるにつれ、どこからか太鼓の音が響いてきた。まるで戦歌のように、こちらの高揚感を煽る旋律へと変わっていく。


 頂に辿り着くと、そこは四方を山に囲まれた円形闘技場のような場所だった。腰を落とせば身を隠せそうな巨石が不規則に点在しており、遮蔽物として利用できそうです。


 円形広場の中央で、金属光沢を放つ巨躯が緩慢に動き出す。それと同時に、地響きが足元を激しく揺らした。完全に立ち上がった金属巨人の頭部中央、眼球を模した部位が赤く発光し、私たちを射貫く。


 重厚なドラムの音が打ち鳴らされ、曲調はいっそう激しさを増す。視界の上部には黄色いHPバーと、ボスの名が表示された。


【暴走の訓練用ゴーレム】

HP:100000


『それは今も、失われた記憶を追い求めている』


 淡々としたシステム音声が耳に届くと同時に、ゴーレムはその無骨な脚を動かし、こちらへ歩み寄ってきます。


「近接タイプのようですね。弱点は発光している眼部、あるいは関節でしょうか。くもちゃんはあちらの巨石の影へ。私の弓を使い、システム補助を頼りに弱点を狙い撃ちなさい。深追いは禁物です。ボスが近づいたら、即座に距離を取りなさい」


[了解]


「ゼータは正面。ヘイトを稼ぎつつ、一緒に攻撃パターンを観察しましょう。必要ならスキルで加速して」


「わかった」


「ノノさん、あなたのバフの効果と範囲を教えていただけますか?」


「攻撃力を上げるバフよ! 二十メートル以内の味方のダメージを、1.3倍に引き上げるわ!」


「では、私と一緒に敵の背後へ。安全を確保しつつ、私にバフを。余裕があれば他の二人も範囲に巻き込んでください」


「任せて!」


 ゼータが鉄剣を構え、ゴーレムへと駆け寄る。接近を感知したゴーレムは歩みを止め、右肩を大きく吊り上げた。右拳を叩きつけるための予備動作。


「回避に専念して!」


 私はポジションにつきながら右手を掲げ、ゴーレムの肩へ向けて五発の小火球を放つ。全弾命中。

 ダメージ数値は三十から三十四の間で変動している。やはり関節部分は弱点のようです。そしてこの個体、私と同じく二十パーセントのダメージカット特性を持っているようですね。


 巨大な拳が振り下ろされ、衝撃と共に地面に亀裂が走る。

 ゼータは鮮やかなバックステップでこれを回避すると、すぐさま踏み込み、ゴーレムの右肘関節を斬りつけた。


 私はゴーレムの側背面へと回り込む。ゲームが提供する一人称視点だけでは戦場を把握しきれない。データの読み取りで情報を補完しつつ、各部位を試射してダメージを検証する。結果、関節以外への攻撃はすべて「ゼロ」だった。


 時折、くもちゃんが放つ矢が飛んでくる。システム補助による命中率は高くないものの、当たるたびに二百二十から二百六十ほどのダメージを刻んでいる。


「お姫様、なんだか楽しそうね」


 背後からノノさんの声。お姫様、というのは私のことでしょうか。


「そうですか?」


「ええ。だって、すごく嬉しそうに見えるもの」


 そうかもしれません。人間性や思考パターンのテストを繰り返す日々とは違い、こうした戦闘ゲームは、私に新鮮な興奮を与えてくれます。


「敵に動きがあります。集中してください」


 私が真後ろに到達した瞬間、ゴーレムは正面のゼータを両腕で抱え込もうとする。一つ一つの動作が大きく、回避は容易です。

 ゼータもそう判断したのだろう。彼女は危なげなくクリンチをかわしたが、直後、ゴーレムの眼部が輝きを増した。まるでゼータの回避先を予読していたかのように、バックステップ後の彼女を狙ってレーザーが放たれる。


「しまっ――」


[くもちゃん、スキル『もしもやり直せたら』を解放。今すぐにゼータへ使用しなさい!]


 ゼータは瞬時に反応して身を捩ったが、レーザーは彼女の右腕と胴体の一部を焼き飛ばした。凄まじい威力。計三十パーセントのダメージカットがあっても、彼女のHPは半分以下まで脱落した。二度目の直撃は耐えられない。


 ですが、この結果は予測の範疇です。だからこそ、事前に指示を出しておきました。

 左側のステータス欄に視線を走らせれば、ゼタのHPは一瞬で半分を割ったものの、間髪入れずに全快しています。


[ナイス]


「えっ!? 今、何が起きたの?」


「戦場で呆けていてはいけませんよ、ノノさん。攻勢に出ます。バフをお願いします」


「あ、うん、わかった!」


 照射を終えたゴーレムの背中から、蛇腹状の排熱ユニットが展開された。十数箇所の開口部から、勢いよく蒸気が噴き出す。


「冷却フェーズでしょうか」


 私はすかさず鞭をゴーレムの上腕に巻き付け、力任せに引き寄せた。その反動を利用して高く跳躍し、空中で逆さまになりながら、剥き出しになった排熱管へ向けて指先から弾丸を連射する。


 視界の左上、バッテリーゲージの下に青いアイコンが表示された。扇のマークに上向きの矢印。ノノさんによる三十パーセントの増幅バフです。

 ダメージは七十八から八十八の間。バフと敵の耐性を計算に含めると、排熱口への攻撃は四倍のダメージ倍率がかかっている。非常に効率的ですね。


 私のDPSが高すぎたせいか、ヘイトがこちらへ向く。機工族(マキナ)の体と同様、このゴーレムも頭部や腕部を三百六十度自由に回転させられるようです。ゼータとの模擬戦で学んでいた仕様ゆえ、驚きはない。

 ゴーレムは滑らかに旋回し、顔とその巨体ごと私の方へと向き直った。


 ですが、私に視線を向けて正解だったのでしょうか? 落下エネルギーを乗せた一撃は、威力が跳ね上がりますよ。


 スキル〈オーバーヒート〉を発動。基礎筋力を二十パーセント底上げし、赤く光るレンズへ向けて拳を叩き込む。


「オラオラオラオラッ!」


 重力加速度を乗せた初撃が五百七十二のダメージを叩き出した。高速連打の反動を利用して滞空時間を稼ぐ。過熱値が八十を超え、私のDPSは四百を突破した。行動不能に陥らないよう、慎重に熱量を管理する。


 ゴーレムが防戦一方になっている隙を突き、ノノさんが舞うような動作で扇から衝撃波を放ち、ゼータとくもちゃんも剣と弓で追撃を加える。ボスのHPバーが目に見える速さで削れていった。


「お姉様、レーザーが来ます!」


「言われずとも分かっています」


 背後の排熱器が収納され、眼部には既に光が収束している。タイミングからして、次の一撃が放たれる直前。


 私は最後の一撃を拳ではなく掌で行い、その反動で宙返りをしてゴーレムの後頭部へと着地した。そのまま巨大な頭部を両手で掴み、落下の重みを乗せて強引に上空へと反らせる。


 直後、放たれたレーザーが虚空を貫き、空中で爆発散乱した。


「ふふ。綺麗な花火ですね。ですが次は、また冷却が必要になるのではないですか?」


 〈オーバーヒート〉を解除し、片手でゴーレムの肩を掴んでぶら下がりながら、再び露出した排熱器へ指先弾を叩き込む。


 戦闘開始から一分余り。ゴーレムのHPが五万を切った瞬間、奴は全身の関節を縮め、眼を閉じた。どの部位を攻撃してもダメージが通らない。


 これが、Tank_T34さんたちが言っていた「手も足も出ない第二段階」というわけですね。

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