オフィシャル・ゾンビ 11
最後の最後で挿し絵がグタグタで終わってしまいましたが、この後も続く予定なのでご勘弁をw
おなじくこちらで公開しているSFロボものでもタレントさんをモデルにしたキャラが出始めているのですが、まったく似ていないのはどちらも一緒ですね(^_^;)
オフィシャル・ゾンビ
‐Official Zombie‐
11
ビュウウッ……!
大きな風切り音を発してそれは高くから舞い降りて、もとい、舞い落ちて来る。
四階ぶち抜きの高い天井から一気に急降下してくる黒いカゲに、これを地上から迎撃するスカンクのバケモノおやじが狙い澄まして構えを取る……!
狙うは必殺必中のカウンター、ただそれひとつ!!
「――はっ、そもそもが相手の繰り出す攻撃をギリでよけながら、こちらの攻撃を倍にしてぶち返したるっちゅうんがこのカウンターの基本やろうが! 仮に食らったとこで、おまえのぐだくだパンチじゃはなからろくな打撃にはならへんっ、ん、なんや、例のびらびらのマントが両手に、二刀流か?」
あのタヌキの得意技らしい、その自由自在にカタチを変える白いマントが左右の手からたなびく状態でこちらめがけて落下してくる……!
これをはじめの内だけいぶかしく見つめるスカンクだが、さして気にするでもなくなおのことどっしりとその場で体を正面に構えた。
「ほんま器用なのは認めたるが、しょせんはバカの一つ覚えやろ! ぐだぐだの風船パンチが今さら二つになったところでなんも変わらへんわっ、おまけになんやっ、この根性無しが!!」
落下の勢いをまんま利用して強襲かけてくるのかと思ったら、これがあっさりと目の前に着地したのに肩すかしを食らうコバヤカワだ。
対するタヌキの鬼沢は、むすっとした表情でがなり返す。
「見てから言ってよね! 俺なりちゃんと考えて最善のやり方を組み立てたんだから!! こっからだよっ、そら、行くよ!!」
右手で翻した白マントを上手投げでたたきつけるようにぶちかます。白マントはただちに巨大なグーのパンチと化してスカンクの身体を狙い撃つが、あいにくそれが届くよりもスカンクの反撃のほうがより早かった。
「あたらへんでもガスはお見舞いできるで! この太鼓っ腹におのれでリズムを刻めばそれが合図よ!! おおらっ……!!」
大きく息を吸い込んでから頭上に振り上げた利き手の拳。
これをただちにみずからの突き出た太鼓腹に打ち付けると、それをきっかけにその身に付けた装束に複数ある通気口のような凹みや穴ぼこから、幾筋もの真っ白い煙が噴射される!
まさしく必中のタイミングだった。
ならばもはやよけようがないのがわかって一度は勝ちを確信するコバヤカワの表情が、だがそこで一変する。
その場で泣きわめいて無様にはいつくばるはずのタヌキは、そのタイミングでここぞとばかりに今度は左手に掴んでいたもう一方の白マントをバサリ!と目の前に翻す!!
するとこちらはパンチではなくて真っ白い壁のような一枚のスクリーンがその場に生み出され、スカンクから放射された白い煙幕をまとめてはじき返す。
それは見事なシールド、まさしく盾の役目を果たしていた。
とは言えニオイそのものを殺したわけではないが、次の攻撃に移るだけの時間は楽に稼げただろう。白一色に染まった視界の向こうで、決死の覚悟のタヌキが息を荒げる。これが最後とばかりに渾身の力を込めてぶち放つのだった。
「いくぞおっ! そおら、まとめてぶった切れぇええっ!!!」
それが一度は引っ込めたはじめの右手のグーパンチであることを推測するコバヤカワは、だったらこれをむしろ真っ向から受け止めて、かつ腕力でねじ伏せてくれると恐い形相でこちらも高くうなりを上げる。
「ほんまにバカの一つ覚えやな!! ええ加減に学習せいよっ、そないな貧弱パンチはこけおどしにもならへんちゅうことをっ……んんっ!?」
目隠しの白い壁をぶちのけてくると思われた巨大な握り拳はいっかなにこの姿を見せず――。
その代わり、不意に壁からこの上半身をさらしたタヌキが起死回生の思いを込めて繰り出したのは、上段から全身のバネを動員してまっすぐに振り下ろされた力一杯のマントの一閃だ!
その鋭さに目を疑うスカンクだった。
目隠しにしていたマントごと空を引き裂く一太刀は、それぞまさしく日本刀の切れ味でコバヤカワの眼前を一直線にかけ抜ける!
グーパンチの平たい横の面ではなくて、これを縦の線で一振りのカタナのような形状にして繰り出した攻撃――。
この意味と威力は思いの外の驚きをもって、スカンクの亜人を沈黙させた。
…………ゴトンッ!!
顔の前にかざしていたみずからの左手が、たちまちの内にスッパリと肘の付け根のあたりから見事に切り落とされ、この手首ごと地面に落ちるのをおよそ他人事みたいに見つめてしまう。
思わず漏らした呼吸に感嘆の色がにじんだ。
「…………フッ! コイツ…………やりおったわ…………!!」
少なからぬ驚きと興奮で顔つきが硬直していたが、この後の予定が決まったことをしっかりと頭では理解していたベテラン芸人だ。
高級店の焼き肉パーティか、あるいはたっかいカウンターの寿司ざんまい……!
今ならうまいタバコが吸えそうやわと口もとに笑みがこぼれかけるのに、だがあいにくで目の前のタヌキが顔面蒼白、ただちに仰天して魂消た悲鳴を上げる。
「ぎゃあああああああっ!? なにこれええええっ、えっ、えっ、え、え、えええ!! こ、コバヤさんの腕がっ、腕が、丸ごと落ちちゃった? うそでしょ、おれ、俺、なにもそこまでやるつもりはっ、そんなつもりじゃっ、いいやあああああああああああああっっっ!!!」
ごめんなさいごめんなさい!とその場に土下座する勢いで膝から崩れ落ちるのに、覚めた表情のスカンクはなにほどでもないとどこか浮かない冷めた返事だ。
「ん? ……ああ、かまへん。ちゅうても今はゾンビやから、そないに騒がんでもすぐに応急処置しとけばきっちりと元に収まるやろ。ほんまきれいにスパッと切り取ってくれたからの。血も出てへんやろ? 今は頭の中にアドレナリンが出とるからそんなに痛いこともあらへんし、ほれ、そんならその腕拾うて、ここに貼り付けてみい!」
「…………え、ううっ、そんなで元通りになるの、ちゃんと? わわ、触るのちょっと気持ち悪いんだけど、わっわ…………あの、怒ってない? 怒ってくっさいおならとか、しない??」
「せえへん! とっととほれ、ここにひっつけいよ」
「わ、わわっ、なんかコワイな! うわあ、これでほんとにくっつけられるの?? うう、はいっ……!」
平気な顔でみずからのちょん切られた片腕の赤黒い断面、ほれと見せつけてくるスカンクに、完全に腰が引けてるタヌキがあわわと困惑しながら両手にした相手の肘から先の腕を差し出す。
心なしちょっとブレブレだったが、どうにかぴたっと断面と断面を張り合わせたところに背後からクマの気配が駆けつける。
そうして皮肉屋のクマにしては珍しく興奮したさまでかけられる言葉には、ギョッとして声をうわずらせるタヌキだ。
「コバヤさん! 大丈夫ですか? 鬼沢さん、まさかほんとに一泡吹かせるだなんて、ビックリです! おれ、ちょっと感動しちゃいましたよ。気配を消して後ろからずっと見てましたけど!」
「は? ストーカーじゃん! おまえ、まさかずっとそばにいたの? ストーカーだよ!! 公式アンバサダーとは名ばかりの、ただの能力悪用した犯罪者じゃんっ、俺、そんなのとこの先やっていける自信がないっ……」
「ええから、腕、ちゃんと固定せんとうまいこと神経がつながらへんやろう? せやからおまえのそのびらびらの神具羅で包帯みたいに巻かれへんのか、この首から三角巾みたいに腕を吊る感じでよ??」
「ああ、鬼沢さんの能力はいろいろと用途が広いみたいですね? およそ布状のやわらかいものならなんでも自由自在に変形変化させることができるみたいな? てことは紙でもいいんですかね? あ、鬼沢さん、コバヤさんの身体には極力触れないように、腕だけを処置してくださいね。でないとまたアレが大量に出ちゃうから……!」
「アレとはなんや? 出物、腫れ物、所嫌わずとはいうても時と場合はちゃんとわきまえるぞ、紳士としてな! おお、おおきに、これでええわ、ほんまに器用やな、オニザワ、そんなに心配せんでもすぐに直るわ」
「わわわわわっ、あ、ほ、ほんとに? ちゃんとした外科手術もしないでただくっつけただけなのに……! あ、指先、もうちゃんと動いてる?」
ひたらすきょとんとした鬼沢に、日下部が冷静な口調でぶっちゃけた発言する。さらに目がまん丸になるタヌキだった。
「見ての通りで、おれたちゾンビは人間よりもはるかに身体が頑丈で回復力が高いんですよ。多少の個体差はあれ、おれも鬼沢さんもこの首をはねられたくらいでは、きっと即死はしませんよ?」
「は? それは死ぬだろ、さすがに! てかどこでも拾ってくっつければ、今みたいに元通りにおさまるの? いやいや、もはやゾンビどころの騒ぎじゃないよな、それ……」
「まあええやろ。おまえは見事に壁を乗り越えたんや。それだけは確かやからの! 先輩の芸人としてもゾンビとしても、ほんまに鼻が高いわ。オニザワ、ようやった、マジでほめたるで!!」
「あっ、コバヤさん! んんっ、て、あれっ?? ……あっ!」
「あ、コバヤさん、そんなことしたら、うわっ……くさ!!」
反射的にバックステップでその場から退避する日下部が、思わずこの鼻を押さえて嗚咽を漏らす。
言えばその場のノリで、がっちりと男と男の固いハグを交わしたコバヤカワと鬼沢だが、それによってスカンクの身体中から真っ白い噴煙が盛大にあたりに噴き上がるのだ。
つまりはお互いに突き出た中年の太鼓腹同士が衝突しあって、まんまとスカンクのおならを誘発したのだった……!
タヌキからしてみればいい迷惑の大災害である。
「あっ、あ、くさ、くさいっ、ああ、だめだっ、臭すぎて目が回るっ、世界がぐにゃぐにゃしちゃってるっ、ああ、もうひと思いに、殺してっ、はあああああっ、くっさいい~~~っ!!」
「おお、すまん! オニザワ、起きろ! まだこれからめでたいめでたい祝勝会が、あかん、コイツ、くたばってもうたぞ?」
みずからの腕の中でくたくたと力なく崩れ落ちていくタヌキのゾンビ。
これをなすすべもなくしたスカンクが、今しも地面にくたばる後輩をただ呆然と見つめる。
悪気はないのらしい。
これにちょっとげんなりした顔つきのクマなのだが、やがてしかたもなさげに口を開く。どこか疲れた感じで、ため息が混じった。
「……コバヤさんのおならが臭すぎるんですよ! はあ、もういいです。ならここはもう解散として、鬼沢さんはこのおれが連れていきますから、コバヤさんはその身体をちゃんと癒やしてください。とりあえずアイテムを置いていきますよ。腕を一刀両断にされたのはダメージとしてはやっぱりでかいですから、ちゃんとそれなりの療養をしてください」
「ふん、例のこのわいの地元の関西で、噂になっとった〝グリーンストーン〟ちゅうやつか? あるいはクリスタルやったか? 気のせいかぶさいくヅラの後輩の芸人コンビがこぞって東京に進出してから、こっちでもやけに出回るようになってきたのう?」
「知りません。守秘義務がありますので。でもその話しぶりだとおおかたの見当が付いてるみたいだから、ご自分で確かめてみたらいいんじゃないですか? 同じ事務所の後輩お笑いコンビさんだったらなおさらです」
「しっかり言うとるやんけ? なんやあいつら、ちゃっかりとオフィシャル入りを申告してからこっちへ来よったんやったな? 世間的にはまだバレてはせえへんものの、ほんまに難儀なこっちゃで! ええわ、それじゃオニザワは任せたで、クサカベ、将来性のある相棒ができて内心でさぞかしニンマリしとるんやろが、そうそう簡単にはいかへん。せやからやるなら最後までしっかりと面倒見てやれよ……」
ずいぶんと含むところがあるよな口ぶりだ。
おまけ意味ありげな目つきを差し向けるスカンクのベテラン芸人に、まだ若手の芸人はクマの真顔でしっかりと頷いた。
「…………はい。そのつもりです。コバヤさんこそ、おひとりであまり無理はしないでくださいね? それにいつだって、おれたちはあなたのこと…………」
「知らんわ」
戦いが終わって自然とあたりの照明が消えていく――。
その暗い闇の中に、みずからきびすを返すコバヤカワだ。
それきり何も言わずに廃墟の中へと、フッと消えていく……。
ぷっつりとその気配が途切れたのを見届けて、いまだ地面にくたばるタヌキへと注意を向けるクマ、ならぬ日下部だった。
「さてと、今日はもうここまでですよね。鬼沢さん、とにかく家の前までは送りますから、後はじぶんでうまいことやってくださいよ? 間違ってもシッポとか家族の前で見せたりしないように。たぶん、見えないとは思うんですけど……よいしょっと!」
気を失って自然と身体のサイズがもとの人間のそれへと戻っていく鬼沢に、おなじく人間の姿に立ち戻る日下部――。
先輩の芸人を背負ってとぼとぼと廃屋の出口へと歩き出す。
夕方の夕日をバックにだったらさぞかし絵になるのだろうが、あいにく今はまだ明るいお昼過ぎだ。
日差しがまぶしかった。
おかげでこのおかしな状態が人目につくことを嫌気した後輩芸人は、大股でたったの三歩進んだところで懐から自身のスマホを取り出すこととあいなる。
帰りは無難にタクシーで送ることに決めた。
かくしてお笑い芸人の、およそお笑い芸人らしかずしたそれはドタバタした日々が始まるのだった。
その前途は多難だ。
タクシーの運転士から、おたくら異様なニオイがしていないか?と乗車拒否されかけるのを懸命になだめながら、大きなため息が出るオフィシャル・ゾンビの公式アンバサダー、日下部であった。
※次回に続く……!
どれかひとつにノベルをしぼればもうちょっとまともな挿し絵描けそうなのだけど、ひとりだとこんなもんかなと言うのが正直なところw とりあえずここで一区切りとして、この後もちゃっかり続いていきますので、よろしければご愛顧のほどを(^o^) 需要ないとそれっきりですからねwww




