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掲載日:2010/06/13

色シリーズです。

陽の下を歩けるようまっとうな人間ならまず知らないような、暗くてじめじめとした路地にその女はいた。

乱雑に伸びて日光も月の光さえも届かないと思わせるような細い道の壁は、妖しげな店の入り口で埋まっている。

汚らしくて厭らしくて腐臭と汚臭と、ある時は死臭すら漂うような非人道な世界であの女は目が覚めるような鮮やかな紫のドレスを着て立っていた。

病弱なものとは少し違うような青白い肌をしていた。紫の服を着た彼女は、青い肌が引きたって毒の華のような色香を醸し出していた。

別に類をみないほどの美人だったというわけでも、逆に二目と見れないほどのブスでもなかった。凡人よりは整ったような顔立ちであったが、誰もが好き好んで誘うようないい女ではなかったはずだった。

しかし、紫の服を着させたら彼女は店の頂点に君臨する美しい女帝よりも多くの客を呼ぶのだった。

濁った風がひょう、と路地を通り抜けると女の着た紫の布がひらりと翻り癖の強い黒髪が舞った。その拍子に見えた青白い肌を見ただけで男はダメになった。

紫のよく似合う女は店の娼婦だった。路地に佇んでいたのは客寄せのため。今まで書かなかったがもちろんこの路地に蜂の巣の穴のようにあるのは危ない店ばかりだし、紫の女の隣にも並んで客を待っている女はたくさんいた。安物の香水を鼻が曲がるほどにふりまいて、手と顔の色の違いが別れるほどに厚い化粧をして甘い声を出していた。

そんな娼婦の中に埋まるように混じって、女はなにもせずに道を眺めていた。

口は半開き、癖毛も枝毛も目立つ黒髪、青白い肌、ほっそい身体、痩せた胸、少しばかり整った顔、それと特上の色香。

それが紫を着る女のすべてだった。

俺もあの女を買ったことがあった。あの日はあの女の他にも紫の服で着飾った女はいたと思う。しかしあの女の姿を見た瞬間に女の肩に手を伸ばしていた。

肩に触れた手に感じられたのは華奢な骨の形。少しうつむいていた顔をあげたときに絡まった瞳の奥に見えた混沌。

その日、激しく鳴く紫の女を眺めながら確信した。

路地で客を引く女よりも店の頂点に君臨する女帝よりも、この女はうまい。

こいつは天性の娼婦であると確信したのだ。

紫の女を買った日を過ぎた後も女はいつもと変わらないように少しだけうつむいてなにもしないで立っている。

しかし、一度女を買えばわかる。あの女の着ている服から、身体から、絡みつくような紫色をした色香が染み出していることが。

あの女は、きっと紫に憑かれたんだ。男にも憑かれている。いい死に方はしないだろう。


仕事でしばらく路地を離れた。

久しぶりに訪れた路地には湧くようにいた男の姿が減っていた。

適当な女に聞くと紫の女が死んでからなのだそうだ。

あの女は陽のあたる広い往来に出て行った日に死んだ。若い男連中に凌辱されて首を絞められて沼に沈められていたらしい。

その日は、往来には絶対に着ていかなかった紫の服を着ていたそうだ。

沼には毒の華が咲いたように紫の服が広がっていたという。

紫の女は特に美しいというわけではなかった。病的とは違う青白い肌をしていた。今思えば一番紫が映える肌の色だったのだろう。そして癖っ毛。生臭い濁った風が吹くと見えるほそい首筋。骨ばった身体。痩せた胸。呆けたように少しだけ開いた口。暗い混沌を沈めた瞳。

女は恐ろしい紫に憑かれた女だった。

まず、ごめんなさい。

スランプ? なのかわかりませんが絶賛不調真っ只中です。

支離死滅、意味不明だったと思います。

ほんとにごめんなさい!

この不調を抜けるべく足掻いて見せようと思います。愛想尽かさないで見守っていただけると嬉しいです。

ここまで読んでくれてありがとうございました。

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