ヒーロー 王太子の場合
あのハイルがいきなり婚約したらしい。母上から聞いて驚きのあまり、ウソだ! と叫んでしまった。
だって、あのハイルだぞ?
魔法は凄いのに、世界の罪の全ては自分の所為だみたいに、いつもなんか暗くて、口も悪くて、前髪で顔見えないし。
なんか、お見合いが大失敗したらしくて、女嫌いになったみたいだったし。
そんなハイルが一目惚れで婚約?!
信じられな過ぎて、侍従に婚約が本当か相手は誰なのか調べるように、つい命じてしまった。だって、気になるじゃないか。
そしたら、母上が直接教えにきてくれた。
なんでも、国一番の魔術師の配偶者だから、母上達もキチンと調べてたらしい。(パーティ時は、簡単な調査だけだったが、後から詳しく調べたとのこと)
母上は、悲しそうな顔をしながら、ハイルの婚約者になった令嬢の事を教えてくれた。
え? 病弱な妹が生まれた2歳の頃から、姉は殆ど世話をされずに放置されてた? 両親は、妹ばかりにかまい、姉とは家でも顔すら合わせない?
妹には専属が6人も居たのに、姉には1人しか居なかった?
妹にはドレスもお菓子もアクセサリーも、沢山プレゼントして、毎年誕生日も盛大に祝ってたのに、姉には最低限の衣服だけで、アクセサリーの一つもプレゼントした事がないばかりか、誕生日すら祝った事がない??
そんな環境なのに、その家の当主も実の母親も、一部を除いた使用人達も、それが当たり前だと考えていた?
妹も、成長と共に身体が良くなっているのに、変わらずその境遇を享受しつづけて、姉との格差を気にしてもいない? 当たり前と認識してる? そもそも姉の存在をいつもは居ないものとして、扱ってる??
そんな馬鹿な事があるんですか母上?!
ほ、本当なんですね。そんな可哀想な境遇のご令嬢を見ていられなくて、ハイルは婚約したんですね。
流石は、我が国一番の魔術師です!
ノブレスオブリージュですね!
はい、分かってますとも母上。国民は、国の宝。
国を治める上で、貴族も平民もみな、安寧に暮らせる様、舵を取るのが王!
ハイルの婚約者みたいな人をこれ以上出さないように、私も努力いたします!
ちなみに、その妹のお名前は……?
アンジェラと言うのですね、しかも私と同い年。はい、もし会ったら気をつけます!
こうして、アンジェラは王太子の要注意リスト入りしました。
案の定パーティでやらかしましたし。
あの後、賢く大局を見る目を持つ公爵令嬢と無事婚約し、後々明君として名を馳せます。
え? 物語通りだったらどうなったかって? まあ、アンジェラでは教育不足で王妃の仕事は出来ないでしょうから、仕事を押し付けられる、可哀想な側妃が誕生していたでしょう。
むしろ、こうなってよかったかもしれませんね。