四話
私が見つめる中、ニヤリと笑ったハイル様。
「ハッ、そこまで言うなら契約してやろう。だが、後悔するなよ?」
「後悔なんてしませんわ。私が選んだ事ですもの。あらためて、私はハーレイル伯爵家が長女。ミランダ・ハーレイルですわ。どうぞ宜しくお願い致します」
そう言って、私はハイル様にあらためて自己紹介をして、出来うる限り最高の仕草でカーテシーをした。
あー!! 無事、了承頂けてホッとした! これで、あのクソな家を出られる! しかも、契約結婚とはいえ、推しと一緒にいられる! よっしゃぁああ!
内心荒ぶっていると、ハイル様が私に手を出してきた。何のためなのかわからないでいると、ハイル様が悪い顔をして言った。
「どうせなら、周囲にもド派手に宣伝した方いいだろう? 私は、これ以上縁談を押し付けられないように。お前は、何故伯爵家の娘がいきなり婚約者になったのか問い詰められないように」
「なるほど? ちなみに設定は、どうされます?」
「俺がデビュタントのお前に一目惚れした設定で行こう。お前も俺に一目惚れで」
「承知しました。では、2人で盛大にやりましょう」
その後の事は、何回思い出しても笑える結果になった。
ちなみに、その様子を見ていた他の人視点だとこんな感じだったようだ。
* * *
突然、かの魔法伯が1人のデビュタントの娘を連れて颯爽とダンスホールに現れ、見事なダンスを披露したかと思えば、陛下に向けてその娘に一目惚れしたから婚約したいと、宣言したのだ! しかも、娘の方も満更では無さそうな様子。あの恐ろしい魔法伯相手だぞ?!
陛下は、これを殊の外お喜びとなり、直ぐに娘の父親を呼び出した! 呼び出されたハーレイル伯爵は顔面蒼白の中、別室に連れて行かれた。
そして後日、アランケル魔法伯閣下とハーレイル伯爵令嬢ミランダ嬢との婚約が発表された。まさかの電撃的なニュースに当時の話題は、この事一色になった程だ。
* * *
ちなみに、別室に連れて行かれた後、逃がさないとばかりに陛下と王妃様が急いで婚約書類を用意して、私の父親にサインさせた。
父は多少渋っていたが、ハイル様がアンジェラの為に医師や治癒師を呼ぶ約束をしたら、簡単にサインしたよ。ちなみに、私の持参金もいらないとさ。ハイル様太っ腹ー!
その後は、ハイル様と一緒に家に帰り、荷物をまとめて、ハイル様の屋敷に連れて行かれた。あ、専属メイドのララも私についていきたいって言ったから、連れて来たよ!
何が何だか分かってない母親や、まだ状況が飲み込めてない父親、騒ぎを聞きつけてやって来たけど、やっぱり何が起こってるか理解できなくてポカンとするアンジェラ、右往左往する使用人たち。
そんなカオスな中、涙目で私に手を振ってくれた執事さんと料理長が嬉しかった。ありがとう! 貴方達のおかげでここまでこれたわ!!




