2013年12月8日 森の民
こんな夢を見た。
私は深い森の一軒家に家族と住んでいる。
森で白いタヌキを3匹拾った。多分、拾ったのだと思う。家には既に猫が2匹いて、拾ってきたタヌキは処分するように家族に言われた。多分、言われたのだと思う。
タヌキを拾った事も、家族に処分を言い渡された事も認識はしているが、実際に体験した実感はない。そして、今家には誰もいない。もう夜中だと言うのに、私一人きり。
タヌキだと認識していた拾ってきた動物は、見た目はかつて飼っていた猫にそっくりだった。
家にいる2匹の猫も、かつて飼っていた猫にそっくり。大きさやしっぽの形、目の色が違ったけど、それでも本当に似ている。
誰もいない家で、タヌキと猫が走り回るのを途方に暮れて見ていた。家族が帰ってくるまでに、タヌキを処分しなくてはいけない。
1番小さなタヌキは既に処分した。自分でしたのか、家族がしたのかはわからない。これもまた、認識のみ。
まるで突然今の自分に成り代わったかのようだ。
なんとも言えない嫌な気分になりながら、のろのろとタヌキを捕らえようと動く。
タヌキは素早く逃げる。
私に追いかける気力はない。
どうしよう、とまた途方に暮れた。
夜の森と我が家を月の光が白く照らし、樹の陰が黒々と浮かび上がる。
ふと、誰かに呼ばれた気がして扉を少し開けた。外には誰もいない。昼さえ静かな森がなお静かに私に相対するだけだ。
扉を閉めて、唐突に閃く。
ああ、逃がせば良いのか。
タヌキを逃がせば畑を荒らされるかもしれない。でも、それがどうした。そうだ。逃がせば良いんだ。
再び扉を開ける。意気揚々と、今度は全開で。
しばらくすると、タヌキが2匹扉から外へと駆けて行った。
白いタヌキが、森の黒に溶けてるように吸い込まれて行く。私はその白が見えなくなるまで見届けていた。
白が消えたど同時に、森の中にいくつもの人影が浮かんだ。
森の民だ。
何人かが扉の前までやって来ると、タヌキを逃がした礼を言われた。1匹は殺したと告げるとそれも仕方ないと言う。
またしても認識しかないが、森の民と私は初対面ではない。
ふと思い出して、森の民に、私を呼んだだろうかと尋ねる。森の民は呼んでいないと答えた。
呼ばれた気がして扉を開け、タヌキを逃がす事を思い付いたと告げると、森が呼んだのだろうと言われた。
せっかくなので、「気」について質問をしてみた。血の流れに気も流れているのか、と。
間違ってはいないけど、正しくもないとの答え。
気の流れは、頭で理解するのではなく感じるものだと言われた。でも、感じられない時に、理論を知っていればいくらか違うはずだと言えば、なるほど確かにと納得された。
そこで目が覚めた。
タヌキを逃がすまでは陰鬱な空気を感じる夢だったが、森の民と向き合ったあたりから静謐な空気に変わった。
月の光と森の陰影、森の民の佇まいがが美しい、静かな静かな夢だった。