第54話「探さねば」
ローディエルに秘密あり……
やがてローディエルは、アルタコに誘われる形で銀河同盟へと参加した。
そして出席した銀河同盟懇親会の場で、さらに頭を抱える事となる。
ヤウーシュという種族は祝福がないのに、自分達よりも屈強。
同じく祝福がないのに、自分達よりも器用なシャルカーズ。
祝福など宿さずともガショメズは優しい――いっぱいプレゼントをくれた――し、アルタコはこれ以上ない程に理知的で深い教養を持っている。
対し、自分たちはどうか。
祝福がある。
祝福しか無かった。
他種族から見れば、『霊術』を有するローディエルは決して劣ってはいない。
時にその効力はアルタコの科学力すら凌駕しており、本来は誇れる筈のものだった。
しかし『祝福』という唯一絶対の評価軸を見失い、根本から崩れかけてしまっているローディエルの、その自尊心を満たすには至らなかった。
有史以来、脈々と受け継ぎ続けてきた信仰と、その外側に広がっていた光景。相反するそれらと、どう折り合いをつければいいのか。
当時、シュンネペイア教の最大勢力は『ファウロス宗派』だった。
同宗派出身である教主は、頭を抱えながらこう言いました。
『どうしたらいいの』
問題はそれだけでは無かった。
多額の予算と、多くの犠牲を出している宇宙開発。
その成果はどうなっているのかと、ファウロス宗派は民衆から突き上げを受けている最中だった。
報告が必要だった。
成果を、事実を、公表しなくてはならない――
――ウィイイイイイッス! どうも〜教主で〜す。
えぇ~今日は、宇宙開発の成果発表の日ですけども、え〜とですねぇ……まぁ……。
目標地点の、え〜、星系外、に行ってきたんですけども……スゥゥゥゥゥゥ……創造主は、誰一人……いませんでした……。
出会う事は出来なかったです。残念ながら……はい。一人ぐらい居るやろなぁと思ってたんですけども、スゥゥゥ結局ぅぅ誰一人居ませんでしたねぇ……。
とりあえずー今回の宇宙オフ会は、残念ながら創造主0人! という形で終わりました……はい。
あぁ……でも実はぁ、えーっとですねぇ。他の星で生まれた新たな友人たちと出会ってぇ、え~今日は、その友人たちをレビューしたいと思いまスゥゥゥゥ……。
銀河同盟――『五大種族』入場ッッッ!!
異形なる戦士ッッ!!
闘争に必要なのは『祝福』じゃねぇ、『拳』だッッ!! 銀河の特攻番長……ヤウーシュの登場だァ――――!!
私たちは『創る』為に生まれてきたッ!!
生まれながらの天才エンジニア……『祝福』よりも『スパナ』をくれッッ!! シャルカーズが来てくれたァ――――!!
知り合い次第、贈りまくってやる!!
『祝福』よりも大事なものがある……築き上げたプレゼントの山は信頼の証だッッ! ガショメズ――――!!
まさに智こそ力なり!!
その教養は空よりも高く、海よりも深い……探求心に『祝福』は要らねぇッッ! 平和の使者、アルタコだァ――――!!
そしてェ~~……。
祝福しかねぇッ!!
どこに居るンだッ創造主ッッ!! 誰かオレ達に"強み"をくれッッッ!! 我々の登場だ――――――――ッ!!
――等と、公表出来る筈が無かった。
創造主は見つけられませんでした。
新たな友人は見つかりましたが、どうやら祝福がなくても立派になれるみたいです。
聖者も、殉教者も、父祖らも、『祝福』の為に色々頑張りましたが、別の道があったみたいです。
――等と、どうして発表出来るだろうか。
ファウロス宗派の教主は悩んだ。
悩んで、そして言いました。
『うっし、隠ぺいすっか』
ファウロス宗派は事実を隠ぺいする事にしました。
臭いものにはフタをするしかないからね。仕方ないね。
『『『 ザ ッ ケ ン ナ コ ラ ー ! 』』』
おや、何事でしょう?
『『『無駄に終わったコラー!? 予算の無駄遣いオラーーー!!』』』
暴動です!
不満を爆発させた信徒たちが暴れています!!
どうやら彼らには、『公開されない』事が『成果が無かった』ものと映ってしまったようです。
街のあちこちから火の手があがり、守衛隊と武装したデモ隊の衝突が繰り返されています。
しかし社会不安が増大していく中、逆に支持を伸ばしていく宗派がありました。『情報公開』を掲げたナルテクス率いるオルトドクス宗派でした。
最初にアルタコとの接触に成功した『英雄』でもある宇宙船の船長がオルトドクス宗派だった事も手伝い、ファウロス宗派を追い落として最大派閥へ躍進する事に成功します。果たして新教主へと就任したナルテクスでしたが、最初の仕事は信徒たちの求める『情報の開示』でした。
――とは言え、問題が解決している訳ではない。
そこでナルテクスらオルトドクス宗派首脳部は、事実に『フィルター』を掛け、かつ開示範囲の階層化を行う事にした。
まず民衆には『創造主は居なかった』ではなく『会えなかった』と公表。
そしてアルタコら他種族の存在を、『創造主の使徒』として紹介した。
友人となったアルタコを自分たちの上位、創造主として扱うと『嘘』になってしまうが、『創造主からの使い』だと位置づけるのはローディエルの勝手なので『嘘』ではない――という理屈だった。
また創造主の使徒に関しては仔細――四種族いる等の――を明らかにする事なく、向こうがローディエルとの出会いに『喜んでいる』とし――嘘ではない――、さらなる交流を求めている――嘘ではない――、とも発表した。
ローディエルの民は歓喜した。
創造主にこそ会えなかったものの、前進はあった。
何より創造主の使徒は更なる交流を求めているという。ならば我々はより深い『信仰と挺身』を捧げなければならない。
言外に示された新たな目標は社会不安を解消し、シュンネペイア教指導部への不満は急速に萎んでいく事となった。
その一方で主要宗派の指導者達相手には、真相の公開に踏み切る決断をする。
もはや一部宗派による独力解決は困難であるとの判断だったが、言い換えれば『責任の分散と共有』であり、『共犯への誘い』だった。
真相を知らされた側は、頭を抱え、それでも協力する以外の選択肢が無かった。外部に漏らしたところでそれは『自爆スイッチ』でしかなく、他の宗派を敵に回して孤立する結果しか招かない。
かくして秘密は守られた。
『何とかなったな!』と胸を撫でおろすナルテクスらだったが、そこへ新たな凶報が舞い込む。
――申し上げます!! カマトト港に奴らが現れました!!――
――ダニィ!?――
確かに『ローディエルが創造主の使徒と接触した』という情報は、シュンネペイア教の空中分解を防いでくれた。
しかしその情報は逆に奴らを招き寄せる事となり、ローディエルは安全保障に深刻な外憂を抱え込んでしまう結果となった。
何より問題なのは、奴らの対処が既にローディエルの解決能力を超えてしまっている事だった。
報告を聞いたらナルテクスは、頭を抱えながらこう言いました。
『どうしたらいいの』
問題はそれだけでは無い……と言うよりも、最も深刻なのが……奴らに関する問題が星外へ露呈した場合、ローディエルは銀河同盟を追放されてしまう――とローディエルは考えている――危険がある事だった。
この事を銀河同盟に知られてはならない……。さりとて、自力で解決する事も出来ない。
ナルテクスは悩んだ。
悩んで、そして言いました。
『うっし、隠ぺいすっか』
ローディエルは事実を隠ぺいする事にしました。
臭いものにはフタをするしかないからね。仕方ないね。
とは言え、何とかしなくてはなりません。
そこでナルテクスは言いました。
『うっし、遠征すっか』
他の種族からは『母星に引き籠っている』と思われているローディエルだったが、それは正しくなかった。
正確には宇宙船――宇宙怪獣を使役した――の性能が圧倒的に不足しているだけであり、自由気ままに星外へ出られないだけだった。
現在のシュンネペイア教には、あらゆる情報が不足している。
問題を隠し続けた方が良いのか、それとも真相を公開した方が良いのか。同盟に手伝ってもらうべきなのか、そうでないのか。相談するとしたら、どの種族が適しているのか。
何でもいいから判断材料が、手掛かりが、解決の糸口が必要だった。
とは言え、いきなり大規模な視察を企画すれば『すわ何事か』と銀河同盟を警戒させてしまう。
相応の口実が必要だった。
そして、それに適したものがあった。
それが今年開催される『銀河同盟懇親会』だった。
ナルテクスはアルタコに提案した。
『同胞を同道させ、見聞を広めさせたい』と。
アルタコは『とても合意!』と快諾。こうしてローディエル初の、教主主導による大規模星外視察が実施される運びとなる。
それが現在行われている『星渡り』の背景だった。
まさにローディエルの命運を賭した宇宙の旅。
そんな大事な旅の最中に、自分から行方不明になったり、誘拐されそうになったおバカちんが居たらしい。
一体何ーフェなんだ……。
◇
ホテルの部屋の中。
「まぁいい……今日はこの辺にしておこう」
「はい」
ナルテクスが娘への追及を取りやめる。
ほっと胸を撫でおろしたニューフェ。
「とは言え、報告はしっかりとしてもらうぞ。明日な」
「ぐっ」
「時間も遅い。今日はもう休みなさい」
「……そうします」
椅子から立ち上がり、部屋の出口へと向かうナルテクス。
今居るのはニューフェに割り当てられている個室であり、教主の居室はまた別に用意されていた。
ナルテクスが部屋を出ようとした、その時――
「……あぁそうだ、父上」
――ふとニューフェが父を呼び止める。
「うん?」
「今度の銀河同盟懇親会ですが……ヤウーシュ種族に『シフードの戦士』は出席しますか?」
「うむ。シフード氏族の戦士なら数名出席する筈だが……」
「その中に、『サトゥー』という戦士は?」
「うーむ、どうだったか……。
出席者の一覧を見れば分かると思うが……そのヤウーシュがどうかしたのか?」
「いえ、ちょっと……。ちなみにその一覧、私も見れますか?」
「ふむ……」
ドアノブに手を掛けたまま、ナルテクスは逆の手で顎髭を弄りつつ思案する。
そして部屋の中のテーブル、その上に置かれている書類に視線を送りながら続けた。
「枢機卿のひとりとして、お前が父の渡した資料に目を通していたのなら、求めるものがテーブルの上にあるのを知っている筈なのだが……」
「う゛っ」
「まぁいいだろう。おやすみ。ほどほどで寝る様に」
「あ、はい、おやすみなさい」
ニューフェの返事を聞きながら、ナルテクスは廊下に出るとドアを閉める。
そして自分の部屋に向かって廊下を歩きながら、考えるのは娘の事。
ニューちゃんが、銀河同盟懇親会に備えて資料を見ておきたいらしい。
(……えらい!!)
父は心の中で娘を褒めた。
責任感が出てきたのは、非常に喜ばしい事である。
(えらいぞ~、ニューちゃん!!)
今日は娘の失踪騒ぎで、他の種族を振り回してしまった。
しかしその経験を経て、あの子も何か思うところがあったのかも知れない。
それが愛娘の成長につながったのなら、アルタコだろうが、ガショメズだろうが、振り回して何の問題があるだろうか? いや、無い。(反語)
(……よし、俺も頑張るぞい!!)
ナルテクスは決意を新たに、心の中でガッツポーズ。
教主として、探さねばならない。
今回の視察で、ローディエルの問題を解決してくれる何かを。或いは、誰かを。
そう、例えば――
(嗚呼、何処かに居ないものか……問題解決を手伝ってくれる、親切な宇宙人とか……)
――上司に無茶振りされたら断れない、どっかのヤウーシュだとか。
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◆◆問題◆◆
Q:ローディエルの霊術
「第三幕『星屑の旅路』、終わりなき階段」の効果は?
A: はぁ?作中で使用してねぇだろ分かるかブっころすぞ
ヒ、ヒントですぅ……ニューフェが使用した霊術まとめ
「第三幕『星屑の旅路』、灼熱の前腕」 効果:熱を生み出して操る
「第五幕 『黄金の角』、黒い安息日」 効果:影の中に潜って無敵化する
「第四幕『隠された栄螺』、手を洗え」 効果:対象の治癒能力向上
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